大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第12回~従来のドラマにはない新解釈の「亀の前事件」でした
2022年NHK大河ドラマ 『鎌倉殿の13人』 の感想です。今回の中心は、歴史的には余談程度の話だけど、源頼朝が出るドラマではよくネタになる「亀の前事件」です。とはいえ、重要な出来事ではなく、余談のレベルでしょう。でもそれを、単なる政子(小池栄子さん)の嫉妬、政子の恐妻ぶりという形ではなく、いろいろな人物を次から次へと絡めて、この回の約半分を占めるドラマにできるのですね。事件の前半は、りく(宮沢りえさん)がちょっと意地悪な気持ちから政子に告げ口して、りくは兄の牧宗親(山崎 一さん)と大ごとになるのを陰で面白がり、一方で北条義時(小栗 旬さん)は大ごとにならないよう奔走していました。でも火消で源 義経(菅田将暉さん)を絡めたことでそれがかえって大ごとになり、誰もが互いに胸に秘めていた誰かへの「いい気味だ」という問題ではなくなってきました。そして後半は、りくが政子をかばい、頼朝(大泉 洋さん)は弟・義経をかばいます。また舅であってもふだんは御家人の一人としか考えていない北条時政(坂東彌十郎さん)が自分に怒ったときに、頼朝は急に舅・婿の関係であることを思い出したのか狼狽します。それぞれの人が持つ立場の強弱や気持ちの問題が、次々と誰かを絡めて「渦」ができていき、でもそれがあるときから「渦」が反転して戻っていくようなものを感じました。そして意外な描写でしたがドラマのラストで、老齢の上総広常(佐藤浩市さん)が密かに手習いをしているシーン。若い頃にちゃんとやってなかったけど、今少しでもできるようにしようと、老いた身で学ぼうとする姿勢に感動した視聴者は多かったと想像しています。こちらではいろいろな感想で盛り上がっています。 ⇒ ⇒ #鎌倉殿の13人 大河ドラマ館、伊豆の国市でオープンしました。 ⇒ ⇒ こちら 大河ドラマ館、鎌倉市にオープンしました。 ⇒ ⇒ こちら 各地のNHK放送局で順次開催する 全国巡回展 が開催されています。 ⇒ ⇒ こちら 寿永元年(1182)、源 頼朝(大泉 洋さん)の異母弟・阿野全成(新納慎也さん)と政子(小池栄子さん)の妹・実衣(宮澤エマさん)が夫婦となり、北条の皆が集っての報告会を兼ねたささやかな食事会をしていました。また北条義時(小栗 旬さん)は江間の領主となり八重を迎えることとなったのですが、ならば北条の家は誰が継ぐのかという話題になりました。父・北条時政(坂東彌十郎さん)は義時しか考えていないのですが、時政の妻のりく(宮沢りえさん)は自分が男子を産んだらその子が北条家をという野心がありました。結局は頼朝が、北条家は鎌倉の要石で伊豆の小物ではない、家督は一大事だから軽々に話さないようにと釘をさして場を収めました。三善康信の推挙で大江広元(栗原英雄さん)、中原親能(川島潤哉さん)、藤原行政(野仲イサオさん)の3名が文官として都より下ってきました。頼朝から間もなく生まれる我が子のための産養の義の、三夜・五夜・七夜・九夜で担当する御家人の発表があり、そして実の親に勝るとも劣らないという大きな権限を持つ乳母は比企家が受け持つこととなったと発表がありました。これは坂東で一大勢力を誇る上総広常にとっては面白くないことでした。さらに安産祈願のために鶴岡八幡宮に神馬一匹が奉納されることになり、馬曳きの役目を頼朝の弟の源 義経(菅田将暉さん)と畠山重忠(中川大志さん)にと言われ、重忠は名誉な役目と喜んで引き受けました。しかし義経には気の進まない役目で、その態度は頼朝には不服と取られていました。平家討伐のために兄・頼朝の元に馳せ参じた義経なので、儀式よりも早く戦に出たい気持ちがはやっている故の言動だったのですが、頼朝を怒らせただけでした。千葉常胤(岡本信人さん)が馬曳きの役目を自分がと名乗り出ましたが、苛立つ頼朝から「見栄えが大事だ!」と強く拒否され古参の坂東武者としての誇りに傷が、結局この役目は義時に命じられ、頼朝は苛立ったまま退出していきました。自分の思い通りに動かない弟や御家人たちに強い腹立ちを覚える頼朝は大江広元に、この鎌倉に足りぬものはなにかを見極めるよう観察を命じました。一方、義経は思うように戦が始まらないし兄には怒られるしで気分が沈んだままで、唯一甘えられる義姉の政子のところにいって愚痴をこぼしていました。以前、頼朝から「いずれ跡を継がせてもよい」と言われた義経は、政子のおなかの子の性別や政子の跡継ぎへの考えが気になるので尋ねました。すると政子はあっさりと「丈夫なら男女どちらでもいい」と。義経は気持ちが和らぎ、政子のおなかの子に「いい子が生まれますように」と願をかけ、その姿に政子も義時も安堵していました。寿永元年(1182)8月12日、政子は男子を出産し、万寿と名付けられました。ただ頼朝が権力を持った今は、万寿を手元に置いて自分で世話することができなくて、すぐ乳母の道(堀内敬子さん)に万寿を連れていかれてしまうので、政子にとっては寂しい子育てとなりました。大姫のときは頼朝に力がなくて不安定だったけど姫を自分で育てることができました。今の政子は御台所としての地位を持ったけど、跡継ぎとなる我が子に自分の乳をやり手元で育てることができません。女人としての地位と母としての幸福と、両方は手に入らないのですね。夫の全成から頼朝の愛妾のことを聞いた実衣はいよいよ黙っていられなくなりました。そこで範頼(頼朝の異母弟)に相談、なんとかすると言った範頼は頼朝の舅にあたる時政に相談、時政は妻のりくには政子には言わないよう念を押しましたが、ちょっと意地悪な気持ちが芽生えたりくは愛妾の亀のことを政子に伝えてしまいました。当然ながら政子は怒り心頭、姉の政子に詰め寄られて頼朝の別宅(亀の家)を教えてしまった義時は。政子の性格からしてこの後何か起こりそうだと心配になりました。そこで義時は理由を伏せて義経に、ある場所を一晩見張って欲しいと頼みました。政子はりくから聞いた「後妻打ち」を決意し、父の時政は巻き込みたくないので、りくの兄の牧宗親(山崎 一さん)に実行を頼みました。宗親が従者を連れて亀の家に来たとき、義経は兄・頼朝に愛妾がいてここがその家であることを知り、驚愕しつつも最初は黙って見ていました。しかし宗親から手伝ってくれと言われたときに、政子を裏切る頼朝が許せないと思ったのか、弁慶(佳久 創さん)に「派手に行け。」と命じました。大好きな御曹司・義経の命とあらばと、弁慶は宗親の従者から木槌を奪って門を壊し、「威勢よくやれ!」という義経の掛け声で仲間の郎党たちも家の破壊に加わりました。(弁慶役の佳久創さんのお父さんは元・中日ドラゴンズの郭源治さん。この木槌の振り方は野球のバットのスイングのようですね。)脅しで家をちょっと壊すだけのはずが、義経の一行に全壊のうえ火までつけられてしまい、梶原景時(中村獅童さん)の調べで全てが露見しました。宗親は詮議の場で義経とその仲間たちが好き放題に暴れたと弁明し、他の御家人たちへの示しもあるので頼朝は義経に謹慎を命じました。そして頼朝は宗親に「お前のせいで可愛い弟を罰することになった。断じて許さん!」と言い、景時に宗親の髻を切るよう命じました。髻を切られた宗親の恥辱は激しいもので、兄のあまりの結末にりくは御所に行って頼朝に抗議をし、さらに「懸命に御台所だろうと励んでいる政子が哀れでならない」と兄のことだけでなく政子のこともかばいました。そこに政子も入ってきて、りくと政子の二人で頼朝の不誠実さを責めました。それでも開き直った頼朝、自分を愚弄するとたとえお前たちであっても容赦はしない!、下がれ!と強い態度にでたのですが、その時・・・!今まで黙って様子を見ていた時政が怒って立ち上がりました。「源頼朝が何だってんだ!わしの大事な身内(妻と娘)にようもそんな口をたたいてくれたな。たとえ鎌倉殿でも許さない!」ふだんは自分に怒った顔を向けることのない舅・時政の激しい怒りに頼朝は驚きます。政子や義時は父の怒りをなだめ、安達盛長は時政が酔っているのだとかばいましたが、時政は御所で頼朝に仕えるのはここまでだと思い、後のことは義時に任せたと言って伊豆に帰る決意をしました。頼朝の愛妾問題がこじれにこじれて父の隠居というわけのわからない事態になってしまった義時は、その夜遅くに上総広常(佐藤浩市さん)を訪ねました。部屋に散らばる手習いの字を見て義時が「お孫さんのですか?」と訊ねると、広常はそれは自分の字だと言います。「若い頃から戦ばかりでまともな文筆は学ばなかった。京へ行って公家どもに馬鹿にされたくないだろ。だから今のうちに稽古しているんだ。」とのことでした。単に一大勢力を誇るだけでなく、たとえ老齢であっても自分に足りないものを補おうと努力する広常の姿に、義時は深い感銘を受けました。ところで亀はどこに逃げたのかというと、ここで広常に預かってもらっていました。広常は自分にまで色目を使ってくる亀が苦手で、早く出ていって欲しいのでした。