大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第25回~武家の棟梁たらんと神仏にすがりながら無理と非情を重ねてきた源頼朝、悟りを開いて穏やかに笑えたのは最後の一歩手前でした
2022年NHK大河ドラマ 『鎌倉殿の13人』 の感想です。この回は、建久9年(1198)12月27日という一日を朝からずっと追って、不安で神仏にすがっていた源 頼朝(大泉 洋さん)が、最後には自分なりに悟りを開いて心穏やかになり、ごく身近な存在だった政子(小池栄子さん)と北条義時(小栗 旬さん)と安達盛長(野添義弘さん)に心からの優しい顔を見せて、それが最後となった回でした。体が不調で心が弱って八方塞がりのとき、何かに救いを求めてすがるということは、多くの人にあると思います。そしてすがって心の拠り所にしたために、そうでなければいけないのだとそれに振り回され、自分の本来の思いではないおかしな言動をしてしまうことも。ドラマでは頼朝は、阿野全成(新納慎也さん)がやむなく適当に言ったでまかせを、易ができる者の言葉だからと信じこんで、あちこちで振り回されていました。そんな自分に早い段階で気づいてより望ましい方向に修正できればいいのですが、頼朝の場合は遅すぎました。最後に、深く関わってきた人たちに笑顔を見せられたのはまだ救いでしたが。初めてこの回を見たとき、頼朝のあれは睡眠不足と精神が不安定で苛立っているのかと思ったのですが、ラストで脳梗塞だったのではと、やっと想像できました。だから2回目に見直したとき、脳梗塞の前兆と言われる「記憶があいまい、身体のふらつき、指先が動かない、口が動かせなくて嚥下障害を起こす、言葉が出なくなる」といった症状が、頼朝の言動に出ていたのだとわかりました。気が付けば6月の末で、ちょうど半年たちました。大泉さんの頼朝は、視聴者にすごい印象を残してくれました。思えばドラマの出演者発表があったとき。源頼朝を、脚本家の三谷幸喜さんが「大泉洋」と満を持して発表した感じがありました。三谷さんが描きたかった頼朝像を大泉さんなら、みたいな信頼感を改めて感じました。こちらではいろいろな感想で盛り上がっています。 ⇒ ⇒ #鎌倉殿の13人 大河ドラマ館、伊豆の国市でオープンしました。 ⇒ ⇒ こちら 大河ドラマ館、鎌倉市にオープンしました。 ⇒ ⇒ こちら 各地のNHK放送局で順次開催する 全国巡回展 が開催されています。 ⇒ ⇒ こちら 建久9年(1198)も終わりに近づく頃、源 頼朝(大泉 洋さん)は毎晩のように自分が死んでいる夢を見てうなされ、十分に眠れない日々が続いていました。そこで頼朝は義弟であり僧である阿野全成(新納慎也さん)に占ってもらい、全成から「相性の悪い色の赤を避ける、久方ぶりに訪ねてくる者には会わない、自分に恨みを持つ者の縁者には会わない」など助言を受け、近頃は誰も信じることができなくて疑心暗鬼になっている頼朝は全成の言葉にすがっていました。そして12月27日、御台所の政子の実家の北条家で追善供養があり、頼朝は行きたくなかったのですが、「仏事神事を疎かにしないこと」と全成の言ったことを思い出し、自分も法要に出ることにしました。北条家の所領の伊豆からほおずきがたくさん送られてきて、政子は弟の北条時連(瀬戸康史さん)に頼朝の部屋を飾ってくるように頼みました。全成から赤は良くないと言われていた頼朝はそれを見て驚き、「赤はいかん!」と半ば取り乱してすぐに飾りを外すよう時連に命じました。そしてそのとき頼朝の耳にはどこからか鈴の音が聞こえてきたけど他の者には聞こえず、耳鳴りか幻聴のようでした。(現代では、ほおずきは「鬼灯」の字があてられ死者の霊を導く提灯とされるのですが、この時代にそういった考えがあったかどうかはわかりません)北条義時(小栗 旬さん)の父・時政は、謀反の疑いで頼朝に暗殺された源範頼をたきつけたのは比企能員という噂をさりげなく流していたこともあり、頼朝は比企にも疑いを持って警戒していました。なので頼朝は比企一族のせつを嫡男の源 頼家(金子大地さん)の正式な妻にはしたくなくて、そこへ頼家が「他に妻に迎えたい女子がいる」と義時に相談してきました。その女子はつつじと言う三河武士の賀茂重長の娘で、つつじの母は源為朝の娘であり、為朝は頼朝の叔父にあたりつつじは為朝の孫で源氏の一門で、重長亡き後は三浦義村(山本耕史さん)が預かっていました。後でこの話を聞いた頼朝は頼家を叱るどころか逆に喜び、もしそうならせつは頼家の側室にしてつつじを正式な妻にする、つつじは源氏の血筋だから比企に文句を言わせない、とまで言いました。またこの日、頼家が妻のせつ(山谷花純さん)と我が子の一幡を連れて頼朝に会いに来ていて、一幡を是非抱いて欲しいと皆から言われたのですが、「赤子を抱くと命が吸い取られる」と全成から言われていた頼朝は内心嫌がっていました。ただその時、一緒にいる比企尼(草笛光子さん)が身じろぎもせず何も言わずに頼朝のことをじっと見ていて、頼朝が話しかけても何も答えずそのままでした。頼朝は乳母だった比企尼が範頼の件で怒っているのだと思い、さらに尼の表情がまるで永遠の別れを言いたいように感じてしまい、退出していきました。ところが実は尼は目を開けたまま眠っていただけで、他意はなかったのでした。(比企能員(佐藤二朗さん)が、近頃は尼がどこにいてもすぐに眠ってしまうと言うので、尼もかなり老衰しているように思えます。)北条時政(坂東彌十郎さん)の娘のあきが若くしてなくなり、その追善供養にあきの夫の稲毛重成が相模川橋に橋を架け、あきの法要で北条家の皆が集まりました。その時政は義時の後妻の比奈(堀田真由さん)のことを八重と前妻の名で呼んでしまい、一瞬あたりに気まずい空気が流れました。(父・時政の老いも心配です)一方、頼朝は安達盛長と共に御所を出て、方違えをして追善供養の相模川に行くことにして、和田義盛の別邸がある六国見山に立ち寄ることにしました。和田義盛(横田栄司さん)の別邸には、約15年前に頼朝が滅ぼした木曽義仲の愛妾だった巴御前(秋元才加さん)が、今は義盛の側室として住んでいました。巴は義仲のことで頼朝にはわだかまりがあり、最初は頼朝に会うことを拒否しました。巴が出てこないことで察した頼朝は一旦は和田邸を出て相模川に向かいましたが、途中八田知家が土木工事をしていて通ることができず、また和田邸に戻ってきました。今度こそ頼朝に挨拶して欲しいと義盛に懇願され、巴は頼朝に会うことにしました。(あれほど慕った義仲のことを忘れるくらい自分を大事にしてくれる男からここまでされたら、嫌でも動きますよね)頼朝は巴に義仲のことを心から詫び、巴もそれを受け入れたのですが、その時に頼朝にまた鈴の音が聞こえてきて、頼朝は何かに怯えたように慌てて和田邸を出ていきました。北条家では法要が始まり、読経の途中で頼朝は到着しました。法要の後で北条家の習わしである丸餅作りが始まり、皆は楽しそうに作業しています。義叔父の畠山重忠(中川大志さん)を「武力・知恵・人脈すべてにおいて優れている」と尊敬している義時の嫡男・北条頼時(坂口健太郎さん)は重忠の作った綺麗な餅にも感激しています。比奈は気遣ってりく(宮沢りえさん)にも声をかけますが、比奈のことが気に入らないりくはその場を離れてどこかへ行ってしまいました。皆がいる場から離れたりくは頼朝と安達盛長がいるところに顔を出し、りくと二人になりたかった頼朝は盛長に合図して座を外させました。頼朝もりくも京育ちで公家社会を知っている者同士です。りくは頼朝に、全国の武士を束ねるようになった今こそ京に上って力を発揮するよう色香を交えてささやき、その気にさせようとしました。しかしりくは時政の妻であり、頼朝はりくよりも時政が謀反を考えているのではという事が気にかかり、りくに尋ねました。りくは、時政はそんな大それたことを考えてはいないと言って頼朝から離れ、そのときちょうど時政が酒と餅を持って二人のところにやってきました。(りくはそそのかすのが好きですね~。これで兄・牧宗親はヒドイ目に遭ったけど。)時政が来たらりくは退席したので、今度は頼朝と時政の二人になりました。時政を疑う頼朝は時政に「自分に不満があるなら申せ。」と言いましたが、当の時政は頼朝の舅となったおかげでいい思いをさせてもらっている、不満はない、政子に感謝だと笑って言い、出来立ての餅を頼朝に勧めました。ところがその餅を頼朝は喉に詰まらせてしまい、時政が慌てて人を呼ぶと皆がかけつけて義時が餅を吐き出させてくれました。頼朝は政子(小池栄子さん)と義時と共に散策に出て、「持つべきものは北条」と二人には改めて礼を言いました。義時が少し座を外したとき、頼朝は政子に、自分と一緒になって後悔はしていないかと問い、政子は退屈はしなかったと答えました。その後で少し言い合いもしたけど、それも最後には二人で笑い合っていました。義時が戻ったとき、頼朝は「我が源氏は帝をお守りし、武家の棟梁としてこの先続いていかねばならん。その足掛かりを頼家が作る。」と言い、義時には常に頼家の側にいて支えるよう、政子には鎌倉殿の母として頼家を見守るよう、二人に頼みました。全成から「昔を振り返るのは良くない、人に先を託すのは良くない。」と言われていた頼朝ですが、なぜかこの時は思いが次々と言葉に出てきました。頼朝は頼家に鎌倉殿を継がせて、その後は自分は大御所となり、船でも作って唐の国に渡って交易をしようか、などと言って笑っていました。政子が一足先に部屋に戻って二人になったとき、頼朝は義時に「ようやくわかった。人の命は定められたもの。あらがわず、甘んじて受け入れようではないか。受け入れた上で好きに生きる。神仏にすがって怯えて過ごすのは時の無駄じゃ。」と語りました。そして「神や仏には聞かせられぬ話だがのう。」と言って笑うと、義時は「鎌倉殿は昔から、私にだけ大事なことを打ち明けてくださる。」と気が付き、頼朝もそう言われたらそうかなと思ったのか優しく笑って、「今日は疲れた。先に御所に戻る。」と言い、義時には一門が久々に揃ったからゆっくりしていくよう命じました。自分が流人として伊豆にきた時からずっと付き従ってくれた安達盛長(野添義弘さん)と共に、頼朝は鎌倉へと戻っていました。盛長は伊豆にいたころの昔のことをつい振り返ってしまい頼朝に詫びましたが、神仏にすがることをやめて吹っ切れた頼朝は、もうなんとも思わなくなっていました。馬の手綱をとる盛長に頼朝が「そなたといるといつも心が落ち着く。」と言い、盛長が「何よりのお褒めの言葉にございます。」と嬉しそうに返して頼朝のほうを向いて一礼した後、「初めて北条の館に・・」と言いかけた頼朝の言葉が急におかしくなりました。頼朝の異変を察した盛長でしたが、頼朝は意識を失って馬から落ち、「佐殿ーっ!」と盛長が叫んでも意識は戻りませんでした。そしてこの瞬間、義時以外の、頼朝と共に歩んできた多くの人々の耳にどこからか鈴の音が響いていました。