大河ドラマ『光る君へ』第8回~「招かれざる者」
2024年NHK大河ドラマ 『光る君へ』 の感想です。ドラマも8回になり、主人公まひろ(吉高由里子さん)の周りを固める方々の存在がますます面白くなってきました。今回私が興味を持ったのはこの2つです。1つは直秀(毎熊克哉さん)が海の見える土地の話をしたときに、まひろが興味津々だった場面。現代の私たちは小学校から地理を習って、日本の地形が山が海岸線の近くまできている土地がたくさんあることを知っているから、海と山で生活する者がすぐ近くに住むことも納得がいくでしょう。でもこの時代の人で、京都盆地の町から出たことがない人だと、海や山の人々の暮らしなんて全く想像できなくて、ましてやまひろのように好奇心旺盛だと、直秀からもっと話を聞きたくてたまらないだろうなと想像しました。そしてもう1つは、上流貴族の藤原道兼(玉置玲央さん)が藤原為時(岸谷五朗さん)と飲みたいからと酒を持って、わざわざ為時の屋敷まで来た場面です。これはまあおそらく、道兼が父・藤原兼家(段田安則さん)から指令を受けて為時に近づいたのだろう、と考える人が多いと思います。道兼はわざとあざを作り、幼い頃からの自分の不遇を語って為時の憐憫を誘ったと思うですが、それでも本当に兄や弟と比べたら愛されなかっただろうと思います。その道兼が、為時の家では今までのような横柄な態度はなく、「つまらぬ、不愛想、真面目な家」などと言いながらも、嫌な顔はしていなくて、ずっと優しい表情なんですよね。だからこの時の兼家は策略とか抜きに、為時の家では本当に優しい気持ちになった時間だったのかな、とも思いました。こちらでは様々な意見がでていて参考になります。 ⇒ ⇒ #光る君へ 寛和元年(985)公達たちによる打毬の見物に招かれたまひろ(吉高由里子さん)はそのときに公達たちの衝撃的な話を聞いてしまい、逃げるようにその場を立ち去り、そして密かに思う藤原道長のことはもう忘れようと決心しました。後日、左大臣・源雅信の一の姫の源倫子(黒木華さん)のところでの集まりでは、打毬を見物した姫君たちがそれぞれに心惹かれた公達の話をしていました。もちろん道長のことも話題になり、倫子も道長を気にかけていたうようでした。倫子の教育係の赤染衛門(凰稀かなめさん)は道長が連れてきた直秀を気に入り、「人妻でも心の中は己のもの。そういう自在さがあればこそ、人は生き生きと生きられる。」と語り、年頃の姫たちは衛門の考えに胸を躍らせていました。打毬のときに急に出られなくなった藤原行成の代理として藤原道長(柄本佑さん)に“弟” という形で連れてこられた直秀(毎熊克哉さん)は打毬ではなかなかの活躍ぶりで、後日、道長の屋敷に公達たちが集まったときも同席していました。直秀は道長に、このような立派な屋敷は見たことがないから屋敷の中を案内して欲しいと頼み、道長は内心は直秀を盗賊の一味ではと疑っていましたが、屋敷の中を案内していました。道長は直秀の左腕の傷のことにふれましたが直秀はとっさにごまかし、他愛ない話をしながら毬を投げ合って二人で笑っていました。道長のところから戻った直秀はいつもの芸人の姿になって仲間たちと散楽の稽古をしていて、まひろは寄り道して稽古場にお邪魔していました。二人でいろいろ話をする流れで直秀は、自分が間もなく都から去ると言います。(自分たちが盗賊であると道長に感づかれたからでしょう)直秀はこれまでに丹後や播磨や筑紫で暮らしたことがあると言い、都の外の話にまひろが興味深く尋ねると直秀は教えてくれました。海があって晴れた日には彼の国の陸地が見える、海には漁師・山には猟師がいる、彼の国と商いをする者もいる話など、まひろは目を輝かせて聞いていました。直秀はふとまひろに「一緒に行くか?」と言葉を投げかけました。でも「行こうかな。」という言葉とは裏腹に、まひろの心にはまだ道長がいるとわかっているので「行かないよな。」と笑っていました。先の帝から仕えている太政大臣の藤原頼忠と左大臣の源雅信(益岡徹さん)と、右大臣の藤原兼家(道長の父)は、今の帝(花山天皇)に重用されて位を上げていく藤原義懐の存在に危機感を持っていました。そこで3人は自分たちが結束していることが大事だと考え、兼家は息子の道長を雅信の姫の倫子に婿入りさせてほしいと伝えました。屋敷に戻った雅信は妻の藤原穆子(石野真子さん)に婿入りのことを話してはみたものの、正直、道長の官位がまだ低いことに不満だし、右大臣家の者の性格が好きではありませんでした。(先日、女御の詮子に東宮の後見を有無を言わさず承諾させられた)でも穆子は道長ならいい婿になるだろうと考えていて、ちょうどその時に倫子が来たので、倫子に道長のことを訊いてみました。道長を意識して頬を赤らめる倫子、倫子の様子に慌てる父と満足そうな母の姿がそこにありました。(この時の益岡さんと黒木華さんの演技が絶妙です)寛和2年(986)になり、帝の寵臣の藤原義懐(高橋光臣さん)はますます態度が大きくなっていて、帝からのお達しで今後は陣定(合議制)を開かない、帝への意見は書面で、帝にそれを届けるかどうかは自分が決めると言いました。義懐の発言や態度に我慢ならなくなった藤原兼家(段田安則さん)は声を荒げて立ち上がり、陣定は古来よりの習わし、帝の誤りを諫めないのは天の意に背く政となり世が乱れる、義懐が諫めないならこれから自分が諫める、と言って雅信と頼忠に声をかけ、帝のもとに向かおうとしました。しかし義懐が兼家を止めようとしたとき、兼家は急な病で倒れてしまいました。兼家の病は重く、薬師も命が危ないと言い、兼家の子たちは皆集まりました。長男の藤原道隆(井浦新さん)は、父が回復するまでこれより自分が父の代理をすると弟たちに告げ、藤原道兼(玉置玲央さん)も道長も承知しました。円融天皇の女御で東宮・懐仁親王の生母である藤原詮子(吉田羊さん)はそんな兄・道隆に対して「まだ位階が低い今、父上に死なれたら困るのでは」と言い、道隆は詮子に対して「東宮の後盾を失うから詮子も同じだ」と返しました。その時、詮子は「自分と東宮には源の人々がついているから大事はない」と言い、初めて聞く話に道隆と道兼は驚きを隠せませんでした。そして詮子は「左大臣家に道長が婿入りする話も進める」と、さらに兄の道隆と道兼に源と手を組む覚悟を持つよう言って退室していきました。道隆はまずは父・兼家の回復が最優先と考え、安倍晴明を呼びました。兼家の枕元ではたくさんの僧たちが祈祷の真言を唱え、庭先では晴明が祭文を読み上げて、兼家の回復を祈りました。僧たちが読経している時によりましに何かが降りてきて、僧が尋ねるとそれは花山天皇が寵愛した女御の忯子でした。よりましに憑りついた忯子は恨み言を述べながら怪力で大暴れし、止めに入った道長も危ういところでしたが、庭にいる晴明が何か合図をしたらよりましは急に力が抜けて気絶してしまいました。忯子の霊が父に憑りついたことを不思議に思った道長が兄たちに訊ねると、兄は忯子のおなかの子が流れる呪詛をするよう父が晴明に命じたと教えてくれました。最愛の忯子の死は右大臣・兼家のせいだと考えた帝は兼家を激しく恨みました。また兼家が重病で倒れたことに関して、嫡男の藤原惟規(高杉真宙さん)は父・藤原為時(岸谷五朗さん)が兼家から離れておいてよかったと喜んでいました。為時は兼家にはこの家が苦しいときに引き立ててもらった恩もあるし、なにより兼家の政治的手腕を高く評価しているので、単純に喜ぶ息子をたしなめました。かつては父の生き方を非難していたまひろも今では父を理解し、父は政争に巻き込まれるのは嫌で静かに学問を究めて身を立てたいのだと、弟に説明しました。父と姉からたしなめられた惟規は面白くなくて、退室していきました。右大臣家では父・兼家の容態を心配して、4人のきょうだいたちが交代で看病して兼家のそばにいました。ある夜、道兼がそばにいたときに兼家は意識が戻って目を開けました。後日、為時が書庫で整理をしていると道兼が現れて手伝いを申し出ました。為時にはその必要はなかったのですが道兼が進んで手を貸し、そのときに為時は道兼の腕にあざができているのを見てしまいました。為時がその理由を尋ねると道兼は、自分は子供の頃から父に嫌われていた、兄や弟は可愛がってもらえるのに自分は違った、いつも殴られたり蹴られたりした、昨夜も一時正気に戻ったら激しく打擲された、と語りました。さらに道兼は、自分は父だけでなく帝からも右大臣の子だからと嫌われていると悲しみの思いを吐露して去っていきました。道兼の不遇を知って心を痛めた為時が帰宅すると、なんと、道兼が為時と一緒に飲みたいと、酒を持って屋敷に来ていました。やがてまひろも帰宅し、道兼を激しく憎むまひろには会わせないよう為時が配慮しようとする間もなく、まひろは道兼と鉢合わせしてしまいました。激しく動揺するまひろでしたが、道兼にはその理由がわかりませんでした。為時が道兼の接待に苦慮しているとまひろが琵琶を持って現れ、一曲奏でました。その音楽に道兼は素直に感動し、そして琵琶を習った母は病気で亡くなったのかと尋ねると、まひろは「はい」と返事をし、その後すぐに退席しました。道兼のことは許せないけど、自分の思いを全て受け入れてくれた道長がいるから、まひろはそれが心の支えになって己を抑えられるようになりました。ある日、道兼が帝の御前に出たとき、帝は憎い右大臣の子だからと道兼をすぐに追い返しましたが、道兼の不遇を哀れに思う為時が帝に進言しました。道兼に興味を持った帝は道兼を連れてこさせ、両腕に残る道兼のあざを見て帝もまた道兼を哀れに思いました。そしてある夜、右大臣家に盗賊の集団が来て金目のものを奪おうとしました。しかしこの時は盗賊たちは警備の者たちによって全員取り押さえられて、道長の前に引きずり出されました。顔を隠していた覆いを取ったその顔は直秀で、直秀に早く京からどこかに去ってほしかった道長には、一番辛い展開となりました。