温もりと優しさと:ジェームス・テイラー(James Taylor)/10月31日(月)
アコースティックでギター・バンドをしていた頃、CSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)とともに、ギター伴奏のコピーによく励んだミュージシャンがいた。 ジェームス・テーラー(James Taylor)。米ボストン生まれのシンガー・ソングライター。1969年にデビューし、1970~80年代を通じて、その温もりのある優しい歌声と美しく、分かりやすいメロディーで、幅広いファンの支持を集めた。 ジェームスの69年のデビュー・アルバムは、何とビートルズがつくった英アップル・レコードからの発売だった。しかし、商業的には成功せず、アメリカに帰ったジェームスは、新たな展開を目指してワーナー・レコードに移籍する。 そして、歴史的なアルバム「スイート・ベイビー・ジェイムス」(70年=写真左)を発表。そして、続いて出した「マッド・スライド・スリム(Mud Slide Slim)」(71年=写真右)も大ヒットし、その人気を不動のものにした。 この2枚のアルバムからは、「ファイア・アンド・レイン(Fire and Rain)」(畠山美由紀さんもカバーしてます!)、「スイート・ベイビー・ジェイムス(Sweet Baby James)」、「君の友だち(You've got a friend=キャロル・キングのカバー)」、「カントリー・ロード(Country Road)」(ジョン・デンバーの曲とは違います)などのヒット曲を送り出したが、残念ながら、日本では爆発的とまでの人気を得る存在にはなれなかった。 彼の素晴らしさは、歌もさることながら、やはりそのギター・ワーク。それまでのギターを使ったシンガー・ソングライターは、コード弾きかせいぜいアルペジオかフィンガー・ピッキングだったが、ジェイムスは、革命的といえるような個性的な伴奏を編み出し、自分の曲に生かした。 だから、彼の曲はギターの音色のとても綺麗な曲が多い。簡単そうで、難しいテクニックも目立つ。でも、素人でも一生懸命練習すれば、何とか手の届く範囲だから、僕はよく彼の演奏をコピーした。 当時、もちろん国内版のギターのタブ楽譜はなかったから、ホームステイするために、初めてアメリカへ渡った1973年(当時は1$=約270円だった)、コネチカット州の楽器店で彼の楽譜(ギターのタブ譜付き!)=写真左=を見つけたときは、天にも昇る気持ちだった。僕は、その楽譜を宝物のように扱い、一生懸命練習した。 ジェームズはその頃、「うつろな愛(Love In Vain」がヒット中だった歌手のカーリー・サイモンと、電撃的に結婚。そして、結婚後間もなくカーリーを伴って来日し、大阪にもやって来た(カーリーとは82年に離婚)。 フェスティバル・ホールで開かれたコンサートには、もちろん僕は万難を排して見に行った。昼・夜2回公演という今では考えられないようなコンサート。僕は昼の部の方へ行った。誠実そうな人柄と、アルバムからのヒット曲ばかりがほとんどの、期待通りの素晴らしい内容に僕はとても満足した。 コンサートの途中、ジェームスは、カーリーが飛び入り出演するんじゃないかと期待しているファンに、「ごめん。彼女は今ちょっと買い物に出かけているんだ」とわびていた。後で聞いた話では、夜の部では、カーリーが登場して一緒に、「うつろな愛」をデュエットしたんだとか。あー残念! 夜の部を選べばよかった…。 最近のジェームスは、あまり音沙汰がない。2002年には久々に、「オクトーバー・ロード(October Road)」という新作アルバム(写真右)を発表した。今年は、最新ツアーを記録したDVDも出したりしているが、米国内でも、それほど精力的に活動している訳ではない(レイ・チャールズが死の直後リリースしたデュエット・アルバムでは1曲、共演していたけれど…)。 「もう十分稼いだし、もうステージは気が向いたらでいいや」とジェームス自身は思っているのかもしれないが、1948年生まれの57歳だから、まだ引退するには若すぎる。あの澄み切った歌声を日本でもう一度聴いてみたいのだけれど…。人気ブログランキングへGO!→【人気ブログランキング】