日本酒にも旨い古酒あり!/3月31日(土)
ウイスキーや焼酎は熟成の年数を重ねたものほど一般的に言って、旨いとされる。ワインも、モノによるが、ボルドーの一級シャトーなど上質のフルボディの赤ワインは、古いビンテージのものほど珍重される。 一方、醸造酒であるビールは、出来たてが命。時間が経てば経つほど味は劣化していく。せいぜい1年以内か。日本酒も同じだというのが常識だった。 ところが、いつもブログのネタをよくくれる行きつけのBar「C」のマスターが、「日本酒でも古酒ってあるの知ってます?」と来た。「えー?! ほんま? そら飲んでみなあかんなぁ…」と僕。 Bar「C」はさほど広くないキャパなのだが、ウイスキー(モルトを含め)からワイン、リキュール、日本酒、焼酎に至るまで、なぜかお酒の品揃えが普通のBARのそれではない(しかもマニアックな銘柄も多い!)。 で、マスターがしたり顔で出してきた。まずは、岐阜は白木恒助商店(「だるま正宗」という酒を造っている酒蔵だが、最近は「熟成古酒」の造り手としても有名だとか)の古酒。3種類出ていて、それぞれ「五年古酒」「十年古酒」「十五年古酒」とラベルにはある(写真左)。 見た目の色は、まるでウイスキーの琥珀色。もちろん古いものほど色は濃い。匂い(香り)は、「五年」「十年」は少し米酢のような酸味を感じる。しかし「十五年」は、ボトルの口で香りを嗅いでみて驚いた。「まるで醤油やんか…」。 しかし、味はどうか。とにかく3種類をグラスに注いでもらう。「五年」はまだ若々しい。古酒と言われても分からない。色は、木樽醸造の有名な銘柄「樽平」や「住吉」に近い。「十年」はやや赤っぽい色。芳醇な甘口で、奥行きもあって旨い。「五年」も「十年」も、香りとは違って酢のような味はまったくしない。 さて、問題の「十五年」。色はかなり濃い、ブランデーのような琥珀色。が、飲んでみると、なぜか、あの強烈な醤油の香りが消えている。まったく感じない。日本酒というより、リキュールっぽい。 「う~ん、どっかで飲んだことあるなぁ、この味わい。何やったかなぁ…」と思い出そうと悩む僕。そしてしばらくして、「そうや、これ、紹興酒に一番近いなぁ」と思いつくと、マスターも「そうですね、紹興酒に似てますね」と同意。 さて、古酒探訪と言っても、1種類で終わらないところが、このBar「C」の凄いところ。続いて、マスターが出してきたのは、高知の酒「美丈夫」の古酒「美丈夫・群田鶴」(浜川酒造、1998年醸造)=写真右上。 飲んでみると、これは上品な、ほのかな甘味が心地よい。酸味のバランスも絶妙。普通の保存状態では、9年前の日本酒なんて飲めたものではない(必ずや「米酢」になってしまっている)。 酒の品質をどうやって長期間保つ工夫をしているんだろうか。もちろん厳しい、徹底した温度管理をして保管しているのだろうが、造り方にも何か秘密があるのかなぁ? この夜の最後の古酒は、「慶(よろこび)」という愛知県の銘柄(山忠本家酒造、1999年醸造)=写真左。こちらは2つ目の「美丈夫・群田鶴」とは違って、さっぱり、すっきりの辛口系。 聞けば、3年物を中心に5年物の古酒をブレンドするという独特の造り方。だが、とても古酒とは思えないフレッシュさ。ほど良く冷やされた酒は、喉越しも良くて旨い。 「日本酒に古酒なし」という先入観が見事に覆された夜。何事にも先入観はいけないということを学んだ、嬉しい、楽しい夜でもあった。Bar「C」のマスター毎度毎度有難うございました!こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】