ソニー・ロリンズ: ジャズ・テナーの帝王/5月18日(日)
先週の金曜(16日)の夜、まもなく建て替えのために閉館となる大阪フェスティバル・ホールでのコンサートに行ってきた。ジャズの歴史そのものとも言える、ソニー・ロリンズを聴くために…(写真左=今回の日本ツアーのポスター)。 ソニー・ロリンズと言えば、ジョン・コルトレーンと並ぶジャズ・サキソフォンの代表的な奏者。1930年9月生まれだから、御歳77歳。1950年にデビューし、マイルス・デイビスら名だたるミュージシャンと共演しつつ、半世紀以上過ぎた今なお、第一線で活躍する稀有な存在である。 ロリンズは、3年前の2005年の来日公演が「最後のワールド・ツアー」と言われていたので、もう一度来日するとは予想外だった。今回のツアーのタイトルは、それを意識したのか「I’m Back」。もうツアーからは引退すると言っていたので、「復活」をアピールしたかったのかもしれない。 しかし年齢が年齢(77歳)である。僕は、「おそらくはもう最後の来日で、今回を逃すと二度と生ロリンズは見られない」と思って、万難を排してコンサートへ足を運んだ。 約2700人が入る会場はほぼ満席。今回のツアーでロリンズは5人(トロンボーン、ギター、ベース、ドラムス、パーカッション)のバックバンドを従えていた。ベースはやはり50年来の友であるという、ボブ・クランショー。 ロリンズはしばしばピアノレス・バンドが好きと言われているが、今回もピアノレス。音の厚みに若干問題があるというピアノレス・バンドだが、コンサートではギターがしっかりピアノの代わりを果たし、トロンボーンは時には弦楽器(ストリングス)のようにしっかりとロリンズのサックスをサポートしていた。 正直言って、ロリンズのアルバムはそんなに聴いた訳じゃない。全発売アルバムの10分の1くらいかもしれない。しかし、それでも彼のテナーは僕の心を十分につかんで離さない。御多分にもれず、僕も「サキソフォン・コロッサス」(写真右上)という彼の最も有名なアルバムから聴き始めた。 それから、「テナー・マッドネス」「ビレッジ・ヴァンガードの夜」(写真左)「アルフィー」(写真右下)などと聴きつないだ。とくに、「アルフィー」の中のタイトル曲「アルフィーのテーマ」は僕の大好きな曲の一つ。 ロリンズの素晴らしさはジャズだけにとどまらず、ラテンやボサノバ、ロックとのコラボレーションを積極的に展開し、彼自身の演奏にもジャズだけにとらわれないスタイルを確立したこと。スティービー・ワンダーの曲「Isn't She Lovely?」を取り上げたり、ローリング・ストーンズのアルバム「刺青の男」に参加したこともある。 ステージのロリンズは、歩き方こそ年相応によろよろしていたが、ひとたびサックスを吹き始めると、それこそ「テナーの帝王」に変身した。音には往年の力強さはないが、一言で言えば「円熟」。心から歌い上げるような表現力の豊かさは、決して衰えを感じさせなかった。 約2時間10分のコンサート。生けるジャズの伝説、ロリンズを目の前で見て、聴いて、僕はこの夜至福のひとときを満喫した。もちろん、あの「セント・トーマス」もやってくれた(写真左=ロリンズをまだ知らない方の入門編には「ベスト盤」がおすすめ)。 ソニー、本当に有難う! 貴方と貴方の音楽を知り合えて、僕は幸せです。どうか体を大事にしてこれからも元気で、テナーを歌い上げてほしい。 【2008.5.16.のセットリスト】Sonny,Please、 They Say It's Wonderful、 In The Sentimental Mood、 Someday I'll Find You、 Nice Lady、 Serenade、 St.Thomas、 Why Was I Bornこちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】