最近観た邦画3題「八日目の蝉」「阪急電車」「プリンセス トヨトミ」/6月18日(土)
最近立て続けに観た3作の邦画について、取り急ぎ感想と独断での評価(★5つで満点)を--(それにしても、映画も結構観ているんだけど、この日記で映画評を書くのはほんとに久しぶりだなぁ…さぼっていて、すみません)。※「あらすじ」部分のデータは公式HP等から引用しました。多謝です! ◆八日目の蝉 <あらすじ>不倫相手の子を堕胎し、その後捨てられた野々宮希和子は、その不倫相手である秋山丈博と妻の間に生まれた生後6カ月の恵理菜を誘拐する。そして、姿を隠しながら恵理菜を育てるが、4年間の逃亡の末、ついに小豆島で逮捕される。映画はこの希和子の判決の場面から始まり、現在の恵理菜と、過去の事件(回想)が平行して描かれる。 法廷で求刑が告げられた後、希和子は静かにこう述べた。「4年間、子育ての喜びを味わわせてもらったことを感謝します」と。一方、21歳の大学生となった恵理菜は、解放後、初めて実の両親に会ったが、「私たちこそが正真正銘の家族だ」と言われても実感が持てなかった。誰にもあまり心を開くことなく、恵理菜は家を出て一人暮らしを始める。 そんな中、岸田という妻子のある男に出会い、好きになったが、ある日、自分が妊娠していることに気づいた恵理菜の心は揺れる。そんな頃、恵理菜のバイト先に安藤千草という女性ルポライターがたびたび訪ねてくる。千草はあの誘拐事件を本にしたいという。恵理菜は放っておいて欲しいと思いながらも、なぜか千草を拒絶することが出来なかった。千草に励まされながら、恵理菜は今までの人生を確認するように、希和子との逃亡生活をたどる旅に出る。 直木賞作家・角田光代の原作小説を、井上真央、永作博美の主演で映画化したヒューマンサスペンス。監督は「孤高のメス」の成島出。 <評> ★3つ 結末にはあえて触れないが、映画の結末は原作とほぼ同じだという。そして、タイトルの意味も含め、いろんな解釈がネット上で飛び交っている映画でもある。そして映画を観た僕も、原作者や監督は結局何が訴えたかったのか、何を描きたかったのかがよく分からなかった(それくらい、観る人によって解釈が分かれる、難解な映画である)。 4歳まで愛情を持って大事に育てられれば、たとえそれが容疑者であっても、完全な憎しみなんて持ち得ないだろう。それが一つのテーマであれば、なぜ出所後の希和子と恵理菜を再会させなかったのか、疑問が残る(原作では、少しだけ再会する場面が描かれているというが)。 子どもをさらったのは、いくら「捨てた相手への復讐だ」「赤ちゃんを見て愛情が沸いた」とか言い訳しても、犯罪には変わりない。だが、希和子だけに罰を与え、元々の原因をつくった勝手な男どもに何ら教訓(罰)を与えていないことにも、説得力を欠く。 原作はどうなんだろう? 僕には、尻切れトンボのようなシーンで終わったことも含め、欲求不満が残る映画と言うしかない。映画は、やはりエンターテイメントである。小説としてはそれなりによくできた作品だったのかもしれないが、結局は、映画化するには無理があったのだろう。まぁ、ヒマならレンタルで借りて一度ご覧ください(永作博美の演技だけは絶品です)。 ◆阪急電車~片道15分の奇跡~ <あらすじ>ある日、結婚式に出席したOLの翔子は、花嫁と見間違えるような純白のドレスで現れ、新郎新婦を唖然とさせる。それは、彼女の復讐だった。会社の同僚でもある婚約者を後輩に寝取られた翔子。別れ話を切り出してきた婚約者に出した条件が、結婚式への出席だった。 披露宴会場を後にした翔子は、帰宅途中の電車で1人の老婦人が声をかけてくる。その老婦人とは、曲がったことの嫌いな時江だった。孫の亜美と電車に乗っていたところ、純白のドレスに引き出物というチグハグないでたちの翔子が気になって、声をかけたのだった。 女子大生ミサの悩みは、恋人カツヤのDV。2人で同棲するための物件を見に行く途中、電車に乗り合わせたドレス姿の翔子のことを話しているうちに口論となり、カツヤはミサを突き飛ばして降りてしまう。それを見ていた時江が吐き捨てた「くだらない男ね」という言葉で、ミサは別れを決意するが…。 また、セレブ気取りの奥様グループに嫌々付き合っている庶民派主婦の康江は、今日も高級レストランでのランチに誘われ、胃痛を我慢して出かける。電車内で傍若無人に振舞う奥様グループに肩身の狭い思いをしていたのだが。 一方、地方出身で都会の雰囲気に馴染めない大学生の権田原美帆と圭一。ある日、電車の中で出会った2人だったが、その距離は近づくのだろうか。また、大学受験を控えた女子高生の悦子は、人はいいがアホな社会人の竜太と付き合っている。プラトニックな関係は保ち続けていたが、ある日、高校の担任から第一志望の大学は難しいと言われ、自暴自棄になって竜太とラブホテルに向かう。 「フリーター、家を買う。」「図書館戦争」などで知られる人気作家・有川浩の原作小説を映画化。兵庫・宝塚市の宝塚駅から西宮市の今津駅までを結ぶ阪急今津線を舞台に、婚約中の恋人を後輩社員に奪われたアラサーOL、恋人のDVに悩む女子大生、息子夫婦との関係がぎくしゃくしている老婦人らの人生が交錯する。片道15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々を描くヒューマンドラマ(監督は関西テレビ出身のドラマ演出家で、この作品が映画監督デビュー作となる三宅喜重)。 <評> ★4つ半 映画の舞台である阪急・今津線は、兵庫県の阪神地域に住む僕にとっても身近な路線である。映画に登場するシーンも馴染みのところがほとんど。これは観に行くしかないと思って出かけた。 映画自体は、どうってことないいくつかの話をつなぎ合わせたオムニバス映画なのだが、それがみんな、微妙に絡み合っていて結末につながっていく。テンポがよくて、構成(演出)が上手いので、原作の映画化としてはとても成功しているだろう。一言で言えば、観た後、あったかい気持ちになれる、後味のとてもいい映画だ。こういう結末のオムニバス映画は、以前に観た「大停電の夜に」にも似ているが、それ以上の出来だと思う。 出演者について言えば、一番輝いていたのは、他でもない老婦人(宮本信子)の孫役をしていた芦田愛菜ちゃん。この子は本当に凄い! 戸田恵理香、南果歩、玉山鉄二、谷村美月は関西出身なので、関西弁が自然で聞いていても気持ちがよかったが、宮本信子の関西弁は違和感がいっぱい(主演の中谷美紀は「関西以外の出身で、関西でOLしている」という設定らしいのでまぁ許そう)。 関西在住・関西出身者の方は必見の映画だと思うが、関西以外の方でも十分楽しめる上質のエンターテイメントだ。ぜひおすすめでーす(ちなみに僕は、この映画、出張先の東京・有楽町マリオン内の映画館で観ましたが、結構お客さん入っていましたぞ)。 ◆プリンセス トヨトミ <あらすじ>7月8日金曜日、午後4時――大阪が全停止した。遡ること4日前の月曜日。東京から大阪に3人の会計検査院調査官がやって来た。税金の無駄遣いを許さず、調査対象を徹底的に追い詰め“鬼の松平”として怖れられている松平元。その部下で、天性の勘で大きな仕事をやってのけ“ミラクル鳥居”と呼ばれている鳥居忠子、日仏のハーフでクールな新人エリート調査官、旭ゲーンズブール。 彼らは順調に大阪での実地調査を進め、次の調査団体のある空堀(からほり)商店街を訪れる。その商店街には、ちょっと変わった少年少女がいた。お好み焼き屋「太閤」を営む真田幸一と竹子夫婦の一人息子・真田大輔は、女の子になりたいという悩みを抱えていた。その幼馴染・橋場茶子は、大輔とは対照的に男勝りでいつも大輔を守っていた。 そんな商店街を訪れた調査員一行は、財団法人「OJO(大阪城跡整備機構)」に不信な点を感じる。だが、徹底的な調査を重ねるも、経理担当の長曽我部にのらりくらりとかわされ、諦め始めた鳥居も「これでOJOが嘘をついているとしたら、大阪中が口裏を合わせていることになりますよ」と不満をもらす。 そのとき、松平の脳裏にある考えが閃いた。「そうだ、大阪の全ての人間が口裏を合わせている」。意を決して再びOJOを訪れた松平の前に現れたのは、お好み焼き屋「太閤」の主人・真田幸一。そして「私は大阪国総理大臣、真田幸一です」と発せられたその言葉に松平は耳を疑った。 「鴨川ホルモー」などで知られる人気作家・万城目学の直木賞候補になったベストセラーを映画化。1615年の大阪夏の陣で断絶したはずの豊臣家の末裔(まつえい)が今も生きつづけ、大阪の男たちは400年もの間その秘密を守り続けていた。国家予算が正しく使われているかを調査する会計検査院の精鋭3人は、ふとしたことからその真実を知ってしまい、大阪の公共機関や商業活動など、あらゆる機能が停止する一大事件に巻き込まれていく(監督は木村拓哉主演の「HERO」や、テレビドラマ「古畑任三郎」シリーズで知られる鈴木雅之)。 <評> ★4つ 関西を舞台にした映画が相次いでいる。なぜか分からないが、東京の映画関係者にとっては、エンターテイメントの舞台(テーマ)としての関西に、僕らの知らない魅力を見ているのだろう。それはともかく、「全編大阪ロケ」と銘打ったこの映画は大阪の名所がてんこ盛り(唯一、鶴橋が出てこなかったのは不満だが)。とくに関西以外の方におすすめしたい。 荒唐無稽過ぎるプロットが故、原作の小説や脚本としての評価はあえて避けるが、映画に出てくるような「大阪国民」が、徳川に滅ぼされた400年後も、豊臣家(秀吉)へのシンパシーを抱いているいるという点(大阪人だけじゃなく、僕も含めた関西人に広く共通するだろう)は、おそらくは東京人には理解できないものだろうが、濃淡の違いはあれ、それは大阪人(関西人)にとっては、「阪神タイガース愛」と共通するDNAと言ってもいいものだろう。 歴史に「たら・れば」はないが、もし秀吉が家康に勝って、大阪幕府が出来て大阪が首都がなっていたことを想像すると、僕は、やはり大阪はNo.2で良かったとつくづく思う。今回の東日本大震災が教えた一つの教訓は、やはり行き過ぎた一極集中はダメだということだ。大災害が起こった時のバックアップとして、やはり政治も経済も機能は出来る限り、二眼レフ化すべきだろう。 なお、映画としてはそれなりに面白かったが、キャスティングについては大いに異論がある。お好み焼屋の店主役でかつ「大阪国内閣総理大臣」役の中井貴一は重要な役柄だったが、大阪弁がやはり変! この役をやらせるなら、他にも例えば、豊川悦司、近藤正臣、内藤剛志、佐々木蔵之介のような、まともな関西弁をしゃべれる関西出身の俳優がいただだろう。あえて中井貴一を起用したのは理解に苦しむ(これは中井の妻役だった和久井映見についても言える)。この映画が画竜点睛を欠いたとしたら、この二人のキャスティングだろう。 こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】