ハリー・マッケルホーンのカクテルブック“初版本”と念願の対面!/6月30日(日)
うらんかんろは古い時代の欧米や日本のカクテルブックの研究をライフワークの一つとしていますが、先日、神戸で懇意なバーテンダーMさん(彼も、師匠ゆずりで、昔のカクテルブックが大好きなコレクターです)が、「**さん、す、すごい本が手に入りましたよー!」と興奮気味に連絡してきました。 な、なんとそれは、僕も国内外の古書市場でもずっと探しいた伝説のバーテンダー、ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の名著「Harry's ABC Of Mixing Cocktails」の、おそらく初版本(1919年刊)と思われる本です! この「Harry's ABC…」は、世界で最初の体系的なカクテルブックと言われています。 「おそらく」と書いた理由は、本のどこを見ても「出版年」がいっさい記されていない一方で、著者名については、「Harry of Ciro's」となっているからです。「Ciro's(シローズ)」というのは、マッケルホーンが1923年、パリで「ニューヨーク・バー」を買い取って自ら経営に乗り出す直前まで働いていたロンドンの社交クラブ「The Ciro's Club」のことです。マッケルホーンはここで1918年から22年まで、約4年間勤めました。そして、この「The Ciro's Club」にいた際、まさにこの歴史的名著を書きあげたのです。 この本が次に改訂されたのは、マッケルホーンがパリで「ニューヨーク・バー」のオーナーとなり、店の名を「ハリーズ・ニューヨーク・バー」と変えた1923年で、本のタイトルも「Harry's ABC Of…」と変わっています。従って、Mさんが手に入れた「Harry's Of Ciro's」という名前がクレジットされている本は、たとえ初版本でなくても、内容はほぼ間違いなく初版本に近いものだと思われます。 しかし、現在我々が手にできる「Harry's ABC…」の本は1986年、Harryの息子アンドリューと孫のダンカンが改訂した復刻版です。この復刻改訂版には、60年代以降のカクテルも数多く追加収録されているため、どれが初版当時の収録カクテルなのかがよくわからないのです。 すなわち、現行の「Harry's ABC…」の本では、1910年代の欧州では、どういうカクテルが登場していたのか判然としないという大きな問題がありました。だから、私もずっとずっと探し続けてきたのが初版本でした。 Mさんは自分がまだ全部読んでいないのに、「先に使ってください」と快く貸してくれました。さぁこれから、これまで謎のままだったいくつかのカクテルの由来が、きっと判明すると思います。 すでにパラパラと呼んだだけでも、定説とは違う驚きの発見がいくつもありました。近いうちにその新発見のすべてをこのブログ上で紹介いたします。ご興味のある方は必見ですよ。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】