北京への旅(6): 多彩な中華料理、その奥深さを知る/10月29日(火)
2日目の食事については、昼、夜2軒の店のことを書きたい。まず昼食。長城に向かう前、軽く腹ごしらえをしようとお邪魔したのは、故宮から北へ約3kmほどの場所にあるレストラン。 レストランと言っても街中の繁華街ではない。その店は古い胡同(ふーとん)が建ち並ぶエリアの中、中国風の豪華な邸宅を使ったホテルの中にあった。 聞けば、ここはもと清朝末期の女帝、西太后の側近だった(「愛人だった」という説も)郵政大臣・盛宣環の邸宅だったという。それが今は、そのままホテルになり、異彩を放っている。 その名は「北京竹園賓館」(英語名では「バンブー・ガーデン・ホテル」)=写真左。その名の通り、竹を数多く配した庭園が自慢のホテルで、中国の伝統的な、中庭を囲む「四合院」という建築様式だ。 友人の勧めで、我々はこのホテルの1Fにあるレストランに入った。お昼時なのに、なぜか客は誰もいない。店員もめちゃヒマそうである。 店内は、富豪の邸宅のダイニングルームといった落ち着いた雰囲気。街の喧騒もここまではほとんど聞こえてこない。 壁には、西太后と一緒に写った盛宣環らしき人物も写真も。建物は、盛亡き後も大事に守られてきたようで、手入れもよく行き届いている。 我々は名物というジャージャー麺(写真左)、それに盛り沢山な野菜炒め(写真右上)、水餃子、シュウマイ、汁そばの五品を頼み、もちろんビール(燕京)も! 旅先で昼間から飲む酒の、なんと旨いこと! どの料理もレベルは高く、旨かった。ジャージャー麺のゴマダレはやや辛かったが、北京の人たちにとっては、これくらい味付けが普通なのだろう。 ホテルの各部屋は、中国の伝統的な邸宅をイメージした内装になっており、海外からの観光客にも人気だとか。次回、北京に来るときはここに泊るのも悪くないなと思う。 ただしこのホテル、幹線道路から正面玄関へ通じる道がおそろしく狭いのに舗装されておらず、しかも相互通行! 運転手さんもすれ違うのにひと苦労だった。 さて、夜の食事の話に移る。長城見学を終えた僕らは、2日目の夜は、伝統的かつ庶民的な北京料理の店を選んだ。 場所は、我々のホテルのある建国門エリアからも近い日壇公園の中。店が公園の中にあるのがなんとも不思議である。その名は「北京小王府」という=写真右(市内には他に系列店が3軒あるとか)。 店は北京人の家庭料理をウリにしており、肉や魚、野菜などの素材を生かした一皿が自慢というが、実際、味わってみてその通りだと思った。 我々が頼んだのは、蒸し鶏の香味ソース(写真左)、クラゲの酢のもの、エビとナッツ類の炒め物、青菜炒め2種(空心菜、ケール)、香味ビーフンの6品。 とくに野菜の種類、メニューが豊富で、20種類もの野菜をお勧めの様々な調理法(炒める、茹でる、煮る、蒸す、焼く等々)で食べさせてくれるサービスが嬉しい。 香辛料がやや強めなので、日本人にも食べやすい味かどうかは好みが分かれるところだろうが、僕には十分合格点の味わだった。 改めて思うのは、素材をうまく生かす中華料理の奥深さ。多彩な香辛料と調理法など、現地に来て初めて実感、経験できることがある(写真右=クラゲの酢のもの。クラゲは日本のものとは違って、大ぶりで歯ごたえがある)。 さて、青島ビールをひとしきり飲んだ後は、この店は紹興酒を置いているというので、ボトルで頼んだ(初日の店にはなかったので、ぜひ飲みたかった)。 友人が「ロックで飲みたいので、グラスと氷を」と伝えたが、従業員が持ってきたのは、普通のビールグラスとお椀に入った小さな数個の氷だけ。 元々、北京ではあまり飲まれていないという紹興酒だが、聞けば、普通はそのまま飲むか燗して味わうのが一般的で、ロックではまず飲まないという(写真左=空心菜の炒め物。ニンニク風味が効いて旨い)。 しかし、我々はくじけず「グラスは低めの口の広いグラスで、氷をもっとたくさん」と重ねて頼む。従業員はようやく理解したのか、その通り用意してくれた。 しかし従業員は、紹興酒に氷を入れて飲む日本人の所作を、興味深げに、不思議そうに見ている。おそらくは初めて見る光景なのだろう。 ちなみに、北京で飲食の店で働く若者は、ほとんどが広い中国各地からやって来た人たちである。従って、言葉もいちおう標準語(普通話)を話すのだが、その地方、地方の方言、なまりを色濃く反映する(写真右=エビとナッツ類の炒め物)。 中国で1年以上暮らす友人は、かなり中国語も話せるのだが、友人のきれいな標準語は地方出身者には時として通じないうえに、「(地方出身者の)なまりのきつい標準語は聞きとれない」とも言う。 まぁ北京語と広東語、上海語、福建語、四川語などを比べると、日本の標準語と東北や九州の方言の違いをはるかに超え、ほとんど外国語同士のようなものという。 だからこそ、中国政府はこの半世紀、北京で話される言葉を標準語(共通語)として全国民に普及させることに必死で努力してきたのだろう(写真左=香味ビーフン)。 その成果は確かに出て、公教育は普及し、経済は発展した。次なる国家的な目標は、言うまでもなく、貧富の格差是正、公共マナーの浸透だろう。中国がより魅力的な国となり、世界中から観光客を集めるには、それは避けては通れない大事な課題と思う。 <次回へ続く>こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】