テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:自分的に、こう思う
ミラノはここ数日、異様に暑い。
最近歩道に無数の穴ぼこが開けられている。形は四角、丸とさまざまで、まるでキクイムシに喰われたような穴だ。その正体はアスファルトが暑さで溶けてめり込んだヒールのかかとの痕だと、想像は簡単についた。日本は暑くても道路が溶けたりしたことはあっただろうか? おまけに昨日とおとといは会社のエアコンが効かなかった。 なんでもビルの地階にあるフィットネスクラブのエアコンから水が漏れて床が水浸しになったので、ビル全体のエアコンを止めなければならなかったそうである。はた迷惑もいい話だ。 で。昨日は短パンにタンクトップでぞうりを履いて出勤しようとするとおっとに「今からプールに出勤?」とからかわれた。誰にどういわれようと構わない。とにかく暑いのだ!! その中の自分を表現するなら「塩をかけられて縮みいくナメクジ」である。 エアコンといえば、アンナの家のエアコンもつけたら、たちまち壁から水が滲み出した。ビルを建築中にこのエアコンもオプションでとりつけたのだが、壁の中でパイプが曲がって?折れて?いたらしい。彼女の家も我が家同様、問題のつきない家である。 修理に来る業者のために2日会社を休んだ彼女。壁は壊さなければならず、修理費用は払わなければならず、とにかくなんで、無実の消費者がさらにここまで苦労をしなければならないのか、自分に重ねて腹が立ってしまうので、あまり真剣に彼女の愚痴を聞かないことにしている。 そんなエアコンの効かなかったおとといはイタリアのトッティが試合終了ぎりぎり前のゴールで勝利をもたらした日であった。 17時始まりの試合は当然見れなかったわたしは電車に乗り、田舎駅前で待っていたおっとのクルマに乗り込むなり「ゴール!」という声をラジオで聞いて試合が終わった。あとはTVのスポーツダイジェストでその瞬間だけを見た。 しかし。 なぜだか我が社の同僚たちはわたしとレセプションの女の子を残して全て試合を観ているのだ。というのは、前回のように16時始まりの提示18時終わりの試合ではなく、17時始まりの提示から1時間ずれた19時終わりだったので、あんなに苦労してアンテナを持ってくるようなことはせずに、社長がいないことをいいことに全員が終業前に逃亡したのであった。大汗 日本とエクアドルが負けた今、どこのファンでもなくなったわたしとW杯に興味の無いレセプションの女の子だけがバカみたいにエアコンの効かない社内で熱のため頭を朦朧とさせながら、18時まで待って外に出たのだ。 外の街はちょうど試合も半ばで誰も歩いておらずゴーストタウンと化していた。しかし人間が存在している証拠に何回か遠くから大勢の「うおうっ!!」という雄たけびを聞いた。そしてほとんど無人の電車に乗り込んだわたしは自分の生真面目さに腹を立てたのだった。 ところで最近わたしは本気でエクソシストにでもお払いをしてもらおうかと考えていたのだが、お隣のカルラが昨日エジプト旅行から帰ってきて、お土産にパピルスに手描きで描かれたスカラベオの絵をくれたのだ。「家の厄除けに。」 きれいなブルーと金色で描かれたスカラベオはいかにもご利益がありそうである。さっそく天井に貼るか。。? ああ、そうだ。今日は印刷屋に帰りに寄って、頼んだ名刺を取りに行かないと。。。憂鬱だ。 なぜならこの名刺、おっとのワゴン車を買いたい、というペルー人に頼まれてデザインしたのだが、結局そのペルー人はワゴン車を買うことはうやむやにしてしまって、名刺の話だけが残った。 わたしとしては、おっとのワゴン車を買ってくれるのだし、デザイン料はわずかしか取らず、印刷代だけもらってサービスで引き受けたので、なんだか納得がいかない。そんな気持ちの根底には別のこともある。 覚えておいでの方は少ないかとは思うが、このペルー人、おっとが雇うことを拒否した今もなお不法滞在者の旧東欧国出身者コスティカ を闇を承知で雇うことに決めたのだ。 彼の商魂はなかなかたくましく、イタリア国内の運送業にとどまらず、コスティカの国までビジネスの手を伸ばすことを考えた。そのビジネスをペルー人は穏やかな口調でわたしたちに打ち明けたのだが、わたしはそれがどういうことを意味するのかすぐにわかってしまった。 そのビジネスの内容は:ワゴン車を使ってのコスティカの国-イタリア間の人の運搬。まあ、言ってみれば個人経営の長距離バスのようなもの。 しかし、それならどうして彼は物品運搬用のおっとのワゴン車が欲しかったのか? それに不法滞在者のコステイカをそのために越境させるリスクを考えないわけがない。 つまり、わたしが解釈したのは「コスティカの国からの闇の難民運搬」である! この短期間でイタリア語がすっかり上達したコスティカは自信たっぷりで「絶対この商売はうまくいく!」と言う。イタリアに不法入国出来たぐらいだ。どこか抜け道を知っているのだろう。 そんな難民を運ぶにはわかりやすいバスよりも窓の無いワゴン車に荷物と一緒に忍ばせるほうがいいに違いない。 頼まれた名刺、もとい、名刺というより名刺型の「チラシ」に近い内容をコスティカの国の言葉でぎっちりと書き込まされたのだった。しかも全然関係ない小型バスの絵をつけて。 今のわたしは難民の不法移入に力を貸す、チンピラみたいな気分だ。 きっとやつらが警察に捕まっても、名刺を作ったわたしまで責任が追及されることはないだろうが、こんなヤクザな仕事を引き受けてしまった自分に自己嫌悪に陥っている。 わたしが日本に居たときなら、こんな仕事プライドが許せなかった。危険の匂いを感じ取った瞬間に上手に逃げていたはずだ。 年々、そんな「感知力」が鈍ってきていると思う。それはこんなイタリアにいるせいか?年齢のせいか? ああ、悩むことまでがうざくなってきたからもう考えるのはやめよう。名刺を受け取ってペルー人に渡す。 それでこの話はもうおしまい。 後はやつらがどう利用しようと知ったことじゃない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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