テーマ:暮らしを楽しむ(388363)
カテゴリ:イタリアンなお話
それは、ディズニーランドのオープン日を思わせる状態の長いひとの列だったのである!
炎天下の舗装されてない空間にオープンして1年しか経ってない、というのにすでに色あせた、まるで公衆トイレを改造したような小さな切符売り場に向かって列は果てしなく続いている。 我々はきちんと並んだ。 しかしここは野獣の国、イタリアなのである! 外人専門のクエストウーラの列に並ぶ第3諸国の田舎もんの外人たちの横入りなどにため息をつく日本人の日記を見かけるが、わたしは世界で一番イタリア人が田舎もんだと太鼓判を押してもいい!! 列なんて、ふつう1列、カップルなんかで横並びするときは2列になるものだが、ひとつの列に5人ぐらい横に並び、隙あらば平気に割り込んでいくのである。特に列の曲がり角が追い越しポイントだ。 誰もが先を越されないよう、デイフェンスを張るのだが。。 自分が割り込んで行っているのに、誰かに先を越されようものならブーブー野次が飛ぶ。しかし、横入りした奴はそれはそれで「え?そうなの??」と平気に答え、更に前へと突き進んでいくのである! 太陽はじりじりと容赦なくわたしたちを照りつける。 人々はどんどん衣服を脱いで水着姿になった。まあ、これからプールに入るから一緒だろうけど日本人のわたしとしては恥ずかしくて出来ない。汗をしたたらせながら待つ。 やがてわたしたちのちょっと前に並んでいたお兄ちゃんが叫んだ。「こんな列、待ってられるかっ!俺は団体入り口から入るぞ!!だれか俺と団体を組む人~!!」 周囲の人々が次々に手を挙げた。 わたし「わたしたちも手を挙げようよ。」 おっとはうざそうに「駄目だよ、ほっとけ。」 。。。おっとよ、ど~してこんなときに頑なになるかなっ!!?? このお兄ちゃんは手を挙げた人の数を数え、お金を集めて人々を率いて団体入り口からさっそうと入っていったのであった。きっと彼は将来、大物になるであろう。 これを見て、わたしたちの後ろにいたひとたちも次々真似をはじめて、どんどん団体で先を越していく。 わたしは堪りかねて口をへの字に曲げて汗をたらりたらりと流しながら、黙って列に並んでいるおっとに言った。「あんた、あほや。」 結局真面目に13ユーロもする切符を買い、さびれた動物園のような入り口をくぐれたのは列を並んでからちょうど1時間後である。 入り口を入ると、これもまた色あせて片腕の折れた「シュレーク」の像がわたしたちを迎える。 目の前にはただ芝生の公園が広がり、BBQをするひと、テントを張って寝そべっている人でごった返してプールなんて見えない。 その芝生もさんざん踏み荒らされて、半分赤茶けていて、こんな上にバスタオルを引いてごろごろしている人たちの気が知れない。 マリエッタに電話をしてとりあえず、入場した人たちが取り付かれた様にぞろぞろと向かう先にわたしたちも歩いていくと、やっとプールの入り口に着いたのだった。 家庭内離婚以来、ひさびさにあうマリエッタは真っ黒に日焼けして前から美人だったのだが、更に美しくなり「遅かったね!」と楽しそうに笑った。 わたし「切符買うのに1時間も並んじゃって。。。」 マリエッタ「だからエルトンに9時って言ったのよ。わたしが来たときはまだ空いていたわ。」 OK。エルトンよ、土曜日に9時に決めた理由を言って欲しかったぞ。 マリエッタは友人が待っているところに案内した。2つ寝椅子が拡げてあって、そのひとつにこれも可愛いイタリア人の女の子が寝そべっていた。 わたしたちも寝椅子を借りようと思ったが、もうビーチサイドは人でいっぱいで、拡げられない。しかたがないのでバスタオルを彼らの横に小さく拡げて服を脱ぎ、日焼け止めを塗る。 廻りを見渡せばひとひとひと。。。頭上ではラテンミュージックがボリューム最大にがんがんかかっている。 マリエッタ「ねえ、浮き輪に乗って流れる川のプールに行く?」 見れば、ここもすごい列である。「もうちょっと後にしようか?」とわたしは言った。 わたし「ねえ、泳ごうよ!」と目の前のプールを指した。 マリエッタ「ここは深いからイヤ。」 あ、そう。 おっと「まだ寒いからイヤ。」 そうかよっ。 わたしは独りで飛び込んだ。ゴチン!と飛び込んだ拍子におっさんと激突した。わたしは慌ててがぼがぼ水を飲みながら「すみません。。」とそれて、ひとかきすると、また突進してきたお姉ちゃんにぶつかった。 頭をぷっかり出して見れば、プールの中も芋の子なんて状態じゃない。ボウルの中であずきをといでいるようだ。うかうかしていると若者たちがまるでわたしが見えないかのように、飛び込んできて激突しそうになる。 もうイヤだ!わたしは鉄はしごでプールから上がろうとしたが、ここも列を作ってぷかぷか待っている。 「カモ~ン!!わたしを引き上げて!!」とプールサイドにいるおっとに叫んで引き上げてもらった。 しかたがないのでバスタオルの上に寝そべっているとどんどん人が増えてくる。例えて言うなら週末のバーゲン期間中の心斎橋筋のような人口である。川のプールの列は更に長くなって、端がプールの入り口まで続いている。 列に並ぶのが我慢できなくなったひとが次々垣根の割れ目から横入りして大勢でぞろぞろと川の流れに沿って歩いている。 何が楽しいんだ!?まるでなんかおかしな宗教の巡礼の列のようだ。。。 そう思いつつ、寝返りを打って目を丸くした。 わたしの横にはさっきまで20CMほどの感覚を置いて女の子がバスタオルを広げて座っていたのに、もう5CMの感覚もなくすりきれたバスタオルが何枚も繋げて拡げられ、トドの群れが寝そべっているのだ!? そしてわたしの足元を見れば、ビーチバッグをわたしのつま先ぎりぎりに置いて、それを境界線として別のオスのトドがその向こう側に寝そべっている。 わたしが起き上がると、マリエッタも待っていたように起き上がってきて「ねえ、ここなんだか息苦しいわ。場所は友達が見ててくれるから、お昼を食べに行かない?」というのに一も二もなく同意をしたことは言うまでもない。 プールから食券売り場までに足を洗うための水溜りを通過しなければならないのだが、こともあろうに水の中に嘔吐したあとがあって、食欲が減退する。 食券売り場もまたもや長蛇の列だ。もううんざりしてしまった。 しかし、何も食べ物を持ってきていないので並ぶしかないのだ。 ここでも、横入りとのせめぎ合いに四苦八苦しながら、やっとひき肉以外何もはさまってないハンバーガーと冷めてふにゃふにゃのフライドポテトにありつけたのは1時間後であった。 マリエッタ「しまった!友達に『ついでに水を買ってきて。』って頼まれたのに忘れちゃった!!」 OOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHHHH,NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!????? 逃げ出したいっ!わたしはもう何もかもがイヤだ!!!なんで、お金を払ってこんな苦しみを味わはなければいけないんだっ!!?? と叫ぶことも出来ず、なんとか顔に引きつり笑いを作って「しょうがないね。。。」と2人で列に並びなおしたのであった_| ̄|○ こうして更に1時間後、水を買って戻るとやっとエルトンが到着していた。 「今日は暑いからいっぱい飲み物を持ってきたぞ!」とクーラーボックスいっぱいの凍った水や、コーラを見せる。 あんた、遅いよ。。。。_| ̄|○_| ̄|○ 昼下がりはますますじりじりと太陽が照りつける。 エルトンは滑り台をしに行ったきり、帰ってこない。列を並んでいるのだろう。 プールの中はますます隙間もないほどひとで溢れかえる。 原爆が落ちた日の広島の川って、こんなのだったのかな?と暑さで朦朧とした頭で考えた。 わたしはマリエッタの寝椅子の後ろのわずかな影の中に縮こまり、身動きが取れない。ちょっとでも身体が外に出ようものなら鉄板の上で焼かれるような暑さを感じる。 つ、つらい。。。。わたしはいったいここに何をしに来たんだろう? 5時ごろ。 やっとマリエッタ同様真っ黒に日焼けした彼女の友人が「わたし、もう帰る。」と起き上がった。 この彼女、わたしたちが到着してからというものずっと寝椅子の上で寝転んだままで身動きしていない。 隣で寝そべっていた男の子が、彼女だけシングルだと見抜いて、やたらちょっかいをかけていたので、その時は身をよじるぐらいはしていたのだが。 わたしはホッとして「じゃあ、わたしたちも帰ろうか?」と小さな影から立ち上がった。 マリエッタ「みんな帰っちゃうなんて、それはないよ!6時から砂浜で踊れるみたいだから、それにちょっと参加してから帰ろうよ!!」 げげ。 エルトン「わかったよ、ちょっとだけね。」 わたしたち「。。。」エルトンの彼女と元の鞘に収めたい気持ちがひしひしと伝わり、わたしたちは黙ってうなずくしかなかったのだった。 辛く長い1時間が過ぎた。 プールは6時で閉まる。わたしたちは人波に飲まれながら出口ではなく、「砂浜」と書かれたほうになんとか脱出した。 改めて書く必要も無いとは思うのだが、ミラノに海はない。 従って、広がる白い砂浜は完全な「人口砂浜」だった。そこだけ見れば、、結構きれいな砂浜だった。しかしそのとき砂浜の向こうに見えたのは水が干上がり、水溜りのようになった濁った池だったので、悲しくなってしまった。 マリエッタはうきうきとステージに近づく。音楽はもう始まっていてDJがレコードを廻していた。 ひとり南米人であろう、真っ黒な太った女性が腰をくねくねさせて踊るのだが。。。。。彼女だけ。_| ̄|○ 後はぱらぱらとわたしたちを含め、数人が遠巻きで見つめて、見ているだけである。 わたし「。。。。帰ろう。」 疲れた足を引きずって出口を出た。 駐車場は砂埃で何も見えない。 そう、全員がいっせいに出口に詰め掛けたのだ。ずらっと並んだクルマの列の真ん中あたりで救急車までもがサイレンを光らせながら停止している。汗 エルトン「こんなところでクルマの中で待つのはイヤだよ。芝生に戻って渋滞がなくなるのを待とう。」 ここからわたしたちは芝生の上で列にこそは並ばないものの、BBQの残骸の山にたかるハエがこっちまで寄って来るのを追い払いながらそわそわと待ち、日が暮れて暗くなり始めた頃、やっとクルマが減ったのを確認して外に出た。 よくわからないけど辛いつらい1日だった。勤めて日陰にいたにもかかわらず、体中が真っ赤に日焼けしてパンパンだ。 もうこのプールには金輪際行かないと思ふ。。。。はあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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