テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:本当にあった怖い話
あの夜、どんな夢を見ていたかは覚えていない。ただ、外の音に気がついて目を覚ますと、誰か子供か、女性の声で「お母さん。。お母さん!」と扉の向こうのどこかで叫んでいるのだ。
わたし「誰か外で『お母さん』って叫んでる!」と隣に寝ているおっとを揺り起こす。 おっと「コモ?」(←スペイン語で「なんだって?」の意) ここでようやくわたしは今、自分はイタリアにいておっとはスペイン語系であることを理解した。 わたしは慌てて言葉を日本語からイタリア語に切り替えて、おっとに「聞いてごらんよ!」と言う。 外ではまだ「お母さん、お母さん!」とずっと叫び続けている。なんで、こんなイタリアの田舎で、しかも時計を見れば朝の4時半のまだ夜も明けていないうちから日本語で、しかも往来で叫んでいるんだ? おっと「。。。耳をちゃんと洗ってる?一番鶏が鳴いているだけじゃないか。」と寝返りを打って再び寝入ってしまった。 一番鶏? そりゃあ、この辺は地鶏を飼っているところが多くて朝早くから鶏が「コケー」とか「ケコッコ―」と鳴く。 でもでも、ずっと集中してどうやって聞いても「お母さん!」とはっきり発音しているのだ。 しばらく謎の声は叫んだ後、静かになった。 怖くて外には見に行かなかったが、それからずっと大きな不安にかられて、朝まで眠れなかった。 朝になってようやく付近の鶏が鳴き出したが、やっぱり声が違う。 あれはいったい、何だったんだろう? ******* 怖い、といえば。 先週土曜の朝、早くから野暮用で出かけたおっとの帰りを待って、一緒にショッピングセンターへ1週間分の買出しをしに行くためにわたしはベランダのベンチに腰をかけて、外を見ながら買い物リストを作っていた。 しばらくすると、おっとではなく、長い間、年老いたお母さんの世話をするためにモデナの実家に帰っていたお隣の我が納屋では一番の変わり者のカリモリさんがやってきてクルマを前の道に停めたので「ああ、ようやく帰ってきたんだ。」とちょっと苦々しい思いで上から眺めた。 というのも、カリモリさんちの部分は改築したばかりの我が家とは違って、20年前から手入れもしない状態で住んでいるので、当然のごとく、ある嵐の日に瓦が落下した。 この件でうちとは反対隣に住んでいる、この納屋の番犬のようなアントネッラおばさんに苦情の嵐を浴びせられ、慌てて様子を見に帰ってきたようである。 カリモリさんはクルマを出ると「いやあどうもどうも、お待たせしました?」と階下にいる誰かに声をかけ、たたたっとわたしがいる2階に上がってきた。そして家の鍵を開けながら「お久しぶり!いいところで出会った。うちね、今修理屋に屋根を見てもらうんですよ。もしよかったら、お宅も一緒に見てもらいます?」 わたし「いやあ、それはわたしの独断では返事できません。」 カリモリさん「じゃあ、マルちゃんはいますか?」 そこにグッドタイミングでおっとが帰って来た。 しかしおっともやはり独断では返事は出来ないだろう。と思いながらカリモリさんと下に降りた。 そこで見たのである! 階段の一番下でカリモリさんを待っていたのはなんと、憎んでも憎み足りない、あの「ルイジな」言葉を産み出させた、あのルイジ本人だったのである!! 悪夢を見ているのかと、わたしは固まった。 ルイジは普通に「やあ、久しぶり!足はだいぶ良くなったようだね。」とわたしに普通に声をかけた。 わたし「はあ、おかげさまで。。」と言って、クルマから降りてきてわたし同様、距離を置いて固まってしまったおっとをルイジの背中越しに見る。 カリモリさん「彼に今から見てもらうんだよ、でね、お宅も良かったら。。。」と言うのを邪魔するようにおっとは「おい、イクキート。行くぞ!」と苛立ち加減で低い声で言った。 わたし「え。。ルイジになんか言わなくていいの?」とオロオロする。 おっと「行くぞ!」 わたしがクルマに乗りこむと、おっと「全部は弁護士を通じて話し合いする事になってるんだから余計な事を言うな。」 カリモリさんはぽかーんとした顔をして、さっそくルイジと階段を上がっていった。 しかしカリモリさん、よりにもよって、ルイジに仕事を頼むなんて。。。 弁護士がいようがいなかろうが、ルイジに再度、お金を払って仕事を任せるなんて、どうしたってご免である! ***** 話を戻してあの「お母さん!」という叫び声を聞いた日の午前、我々の弁護士団が再び我が家を訪れた。 というのも、上記のカリモリさんち同様、嵐があった日に我が家はまたもや、というか、今までにないほど水浸しになってしまったので、再度、検証をお願いしたのである。 しかし。 1時間ほど待ったのだが、本来なら我々の弁護士事務所からの依頼で、来なければならないはずの悪徳不動産屋軍団と裁判所指定のはずのペリート(悪徳不動産屋軍団の友人)はとうとう来なかった。怒 我々の弁護士事務所がレターを出した時点でもシカトされたようなので、彼らも、そういった場合の対処はもう、考えていたようだ。 弁護士「今からMONZAの裁判所に行ってペリートを他の人に替えてもらう様、申請してきます。」 わたしはかなりホッとして「そうですか、今度は彼らの友人でないひとをお願いしたいです。」 弁護士「。。。それは、どうとも言えませんね。」と苦笑いした。「今日までの間になにか変わった事はありませんでしたか?例えば屋根に誰かが登ったとか?」 わたし「わかりません。ア。。お隣にルイジが修理の見積もりをとりに来ました!」 弁護士の顔はたちまち歪んだ。「何と。。いいですか、どんなことがあっても彼に勝手に屋根を触らせちゃいけませんよ!」 わたし「でも、わたしたち、昼間は留守なのでチェックのし様がないんです。」 弁護士「では、ご近所の方に協力してもらって、彼でなくとも、誰かがお宅の屋根に登っていたら、知らせてもらうか、証拠写真を撮ってもらう様にお願いしておいてください。」 わたし「わ、わかりました。。」 そうだ、状況を考えればかなり危険な状態だ。だってルイジは「お隣の仕事」のふりをして、堂々と屋根に登れる状況なのだ!! そんな話をしながら玄関に置いてある金魚の水槽をなにげなく見やると、4匹いる金魚の中で一番愛嬌のあった赤い流金が底で動かなくなっていた。 弁護士たちが出ていってからわたしは急いで水槽に駆け寄る。 死んでいた。 今朝聞いた悲鳴はこの金魚が発していたのだろうか? 先日書いた野鳥のヒナは、わかっていたことなのだが、我が家に来て3日目にはもう、死んでしまった。浅い箱に入れていたので拾った次の日、わたしたちが留守の間に箱から抜け出して、帰宅した時には、石の床で冷たくなっていたのだ。 その日は急いで温めて、なんとか生き返ったのだが、これが打撃ですっかり弱ってしまい、もう元気になることがなかった。 3日目はこのヒナが息を引き取るのを見届けて、ベランダの花の鉢にまだ生暖かい死体を埋めたのだが、不覚にも涙が止まらなかった。 おっと「大げさだな。どうせ死ぬのはわかってたじゃないか。」 その通りだ、でも。 やっぱり世話も出来ないのに、拾うんじゃなかった。あの時、ぺちゃんこにしてしまったほうが良かったのだろうか? 話を戻して金魚は水槽からすくいあげると、まだ死んだばかりのようで、他の金魚たちにつつかれることもなくきれいな形を保っていて、まるでおもちゃのようだった。これも別の花の鉢に埋めた。しかし、連続して死に立ち会ったおかげで、もう涙は出なかった。 死に慣れるってイヤだな。 家のこんな状態にも慣れてしまって、雨の日には雑巾とバケツを抱えて階段を上がる自分にかなり嫌気がさしている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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