カテゴリ:ご近所物語
日曜日は家でダラダラしているとおっとの携帯にブラジル人のエルトンから「一緒に川に行こう。12時半に我が家集合。」とメッセージが入った。
最近エルトンは家庭内離婚をしている奥さんの気持ちを取り戻すため、見ていて痛ましいぐらいほぼ毎週末、いろいろ楽しい企画を立てている。 今回も川遊びのために大きなゴムボートまで購入したらしい。 体調があまりすぐれないわたしは、どうしようか迷ったが、最近そのおかげで太陽の光を浴びていない気がして「川辺で昼寝でもするか。」とOKした。 野外活動のときの南米人のお約束: バーベキュー 絶対これははずさないだろうからと、冷蔵庫をあさって肉やソーセージ、ジュースやビールを保冷バッグに詰め込んでエルトンの家に向かったのだった。 最近ミラノは数日前に連日降った雨のおかげでまるで、夏を飛び越して秋になったかのように涼しい。 まさかこんな中、泳ぎはしないだろう。 おっとは「え~、泳がないの?」と言いながら水着を着て、買ったばかりのシュノーケルセットをクルマに積み込んだ。 わたしは長袖にGパンを着ようかと思ったが、さすがに川で濡れることを考慮して、半そで半パンで出かけた。 エルトンの家に着くと、もう家の前の駐車場で2人の友達とわたしたちを待っていた。 わたし「あれ、奥さんは?」 エルトン「。。。体調が悪いから来ないって。」 しかしわたしはわかっていた。わたしが南米人飲み会の断り文句によく使う手だ。奥さんは単に来たくないだけである。まだまだ2人の距離は遠い。 エルトンはわたしたちに2人のイタリア人の友人を紹介した。マウロとホーマー。「ぼくの教会(エバンジェリカ)の友達。今日は彼らが川に連れて行ってくれる。」 我々はクルマ2台に乗り込んで出発! もともと我々の家の付近は田舎なのだが、見慣れない田舎町を何個か通過し、クルマはきれいな渓谷のそばを走っていく。 30分足らずでベルガモ県のメドラゴというところに着いた。 小さな町の中を通って、川に下る舗装のされてない山道のような細い下り坂に入った。ちょっと下っただけでわき道に沿って延々と続く駐車されたクルマの群れが目に入った。 わたし「混んでるねえ。名所なの?」 ホーマー「まあね、ここから先は南米になるから。」 おっと「??」 我々もクルマの群れの一番頂上にクルマを停めて降りる。わたしはホーマーが言った意味がすぐわかった。 向こうのクルマから荷を運び出しているのは明らかに南米人の一家だ。 我々も大きな荷物を抱えて川に下りていった。 川べりは川に沿って200mほど長細く芝生が敷き詰められた公園になっていた。 川は緑色に澄んでいて、たくさんのひとが水遊びをしていたが、涼しいせいもあって、泳いでいる人の姿はそんなに見かけない。 さび付いた門とも鉄柱ともいえないものをくぐって入ると 1m四方の人口密度は先日のプールの1/20ほどだが、結構混みあっていてあっちでもこっちでもバーベキュー。 入り口からの100mほどが更に人口密度が濃く、そこでバーベキューをしている家族5家族につき、4家族ほどが南米人である。_| ̄|○ 確かにイタリア、というより南米だ。 そこはもう混みあっていて、わたしたちが場所を広げるスペースはないので、肉を焼く煙と、ラジカセから流れる壊れた音のラテンミュージックにいぶされながら、どんどんと奥に進んだ。 それと共にイタリア人家族の比率が多くなり、バーベキューをしている家族、というより犬連れで寝そべっている家族が増えてきた。人口もまばらになってきたので、芝生が終わるぎりぎりのところにわたしたちはパラソルを立て、ビーチマットを拡げた。 エルトン「腹が減ったぞ!みんな、その辺のできるだけ大きな石を集めてくれ、バーベキューの用意だ!!」 ああ、やっぱり。つくづくはずさないなあ。_| ̄|○ 男たちはせっせと石を拾ってきてかまどを作り、その上に持ってきた頑丈な鉄製の網を乗せた。炭を入れて火をつける。 エルトンが大きな袋を開けると、何個もの大きなタッパーにぎっしり味付けされた肉が詰まっていた。どうみても3~4kgはありそうな勢いである。 エルトン「今日はブラジル風焼肉だからな。」と大張り切りだ。 わたしはそんな男たちの活躍をパラソルの下でぼ~っと見ていた。 おっとはその間、一生懸命ポンプでエルトンのゴムボートに空気を入れている。 最終的にはエルトンとおっとだけが働いている形となって、わたしはマウロとホーマーとひたすら喋っていた。 偏見ではないが、やはりわたしにはイタリア人との方が話が弾む。こちらのほうが母国語をしゃべっているわけだから、確実に彼らの言葉のほうがわかりやすい、というのもあるのだろうが。。 肉が焼けた。 エルトン「よしっ、いくきーと食べなさい!」 わたしは喜んでエルトンが切り分けてくれた肉にかぶりつこうとした。 するとみんなが下を向き、目を閉じて「神よ、我々の今日の糧に感謝します。。。」とお祈りがはじまったので慌てて肉を口から離した。 そうなのだ。エルトンは信仰が厚くて、土日の教会のミサは絶対かかさない。 それに比べておっとは最近、めったに教会に行かないし、家でも食べる前にお祈りなどしたことがないので(日本語で「いただきます。」はちゃんと言うようにしつけたが)、それを思い返してちょっと恥ずかしくなった。 そんな様子を見ていたマウロ「いくきーと、君はなんの宗教なの?」と聞く。 わたしはうっかり「無宗教。」と言ってしまってから慌てて口をつぐんだ。 そうなのだ、彼らエバンジェリカは「世界がエバンジェリカで統一されるべき。」と思っているひとたちなのでうっかりこういうことを言うものなら勧誘にかかってくるのである! 案の定、マウロは「キリスト様はね。。。」と始めたのでわたしは慌てて「え~と、正式には無宗教なんだけど今、神道に傾倒しているの。」と言い換えるとたちまち不快な顔を露にした。 マウロ「シントロジーか。」 わたしは日本神話を思い出しながら「神道というのはね。。」ときっとでたらめでもわからないや、と思いつつ説明にかかるとマウロ「知ってるよ。ちょっと宗教学を勉強したからね。」という。 この言葉を聞いて、さらに冷や汗をかいて口をつぐんだわたし。 この時点では、ここから話題がなんとかそれたのでよかったのだが、真剣に日本の宗教を勉強しないと、と思ってさっそく購入した次第。これ。 エルトンが焼いた肉は絶妙の焼け具合でおいしかった。 さすがに神経質なエルトン、焼けすぎも、生焼けも許されないという。その証拠に彼はほとんど食べずに火の番をしていた。 わたしたちが持ってきた肉は開封されることもなくお腹がいっぱいになり、いよいよ川へゴムボートでGO! マウロとホーマーは残って、わたしとエルトンとおっとの3人で上流までゴムボートを担いで行き、水に浮かべた。 比較的広い川はほどほどに深く、魚もたくさん泳いでいる。 流れが緩やかでボート遊びにはもってこいだ。 周りの緑を見ながら、きれいな川辺のとんぼを観察しながら、わたしは水着も持ってきてないのでお尻をズボンの上からびちゃびちゃにしながら、それでもさわやかな川風に吹かれて楽しみながら、ボートで川を下っていくと岸から手を振っている2人の男性が見えた。 エルトンが手を振り返す。「他の友達が到着したよ!」 岸にボートをつけるとたちまち小さな男の子が2人駆け寄ってきて「エルトン、次はぼくたちを乗せて!」と叫んだ。 我々の場所を見るとお父さんお母さん、おじちゃんおばちゃん、じいちゃんばあちゃん、子供たちの大家族がビーチマットを拡げているのが見えた。 ああ、つかの間の大人の休日は終わりか。。とわたしはしぶしぶ岸に上がったのだった。 マウロとホーマーは次々に「これがぼくの奥さんで、これがおばさんで、これが。。。」と紹介してくれるが、あまりの人数の多さに目が廻って覚えられない。 ぼ~っとしていると、子供たちは子供たちでエルトンとおっとにくっついて川に水遊びに出かけたし、残った男たちはビールを飲みながら立ち話をはじめたし、女たちは固まって一番小さな赤ちゃんをあやし始めたので、グループ分けとしては、やっぱり女性のところだろうか?ととぼとぼとなんとか、その輪の中に入った。 しかし。 どこに行ってもそうなのだが、エクアドル人と日本人の夫婦というのは、非常に珍しがられる。 誰かが「馴れ初めは?」と聞くので口を開けて説明しようとすると、誰かが「教会で知り合ったんでしょ、そうでしょ?」と口を挟んできて、否定するまもなく「キリスト様の愛は。。。」という話になって、尋ねてもいないのに、どれだけこの宗教が素晴らしいか、と言う話を全員がわたしに向かって一斉にするのでヘキエキしてしまった。 わたしがどの宗教を信じている、とも言っていないのにだ。 世の中には宗教一色の人間が多いのだな、とつくづく思う。やっぱり無信仰にしろちゃんと勉強しないと。。。 うんざりしてすぐに子供たちのところに移った。こういう場合、よっぽど理屈をこねない子供たちといるほうが楽だ。 おっととエルトンは一度は子供たちを乗せてゴムボートで出かけたのだが、後は置き去りにして自分たちだけでシュノーケルをつけて潜り、水中観察を楽しんでいる。 わたしはちょっと子供たちとサッカーをしてみたり、釣りを楽しんでいるとあっという間に日が暮れて、このまま余った肉を腐らせるのはもったいないからと、またもや強行バーベキューを決行したのであった。 もう、肉の顔は今週は見たくないや、というほど食べた。 ああ、なんか久しぶりに休日のような休日だった。 これで宗教の話さえこんなに頻繁に出てこなければ、あとあちこちでするバーベキューの臭いのために群がるハエたちがいなければ、完璧な休日だった。 来週末はヘビーなおっとのいとこ家族のいるジェノバ行きである。 やっぱりもっと肉を食べて体力をつけねば! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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