テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:エクアドル人のおっとを持つと
クルマに乗り込もうとするとカティちゃん「歩いていったほうが早いよ、こっちこっち。」と手招きする。
カティちゃん「ローランド、引っ越して更にうちから近くなったのよ。」 そうか。 わたしたちは決して夜にひとりでは歩けないであろう、ぽつりぽつりと街灯がさびしく点いた坂道をどんどん降りていった。 リグリアの海岸沿いは山がぎりぎりまで張り出していて、ジェノバの街も、山肌にしがみつくように発展している。なので、この街はちょっと歩いただけですごい急傾斜の坂道ばかりになるのだ。 (どうでもいいが、この街に地震が来たら、おそろしいことになるだろうな。) ちなみにわたしは1月の事故からもう7ヶ月も経っているのにまだ「びっこ」状態である。 階段や坂道を上がるのは平気になってきたが、降りるのは未だにこわい。 わたしは、わたしよりもがっしりしてきたカティちゃんにしがみついて、へコヘコ降りる羽目になった。これではどちらが保護者かわからない。汗 やっと坂道を降り切ったところにローランドのアパートがあった。 それがそうだとすぐにわかったのは、8月の無人の静寂の街に、そのアパートの一室からラテンミュージックが大ボリュームでガンガンに聞こえていて、部屋の明かりの逆光で顔はわからないものの、母子がこっちを見て手を振っているのが見えたからだ。 「く~き!!!」アパートのドアを開けると、真っ赤な口紅を塗りたくったミッシェルちゃんが抱きついてきた。 ミッシェルちゃんは今年5歳。いったいいくつまで、わたしにこうやって抱きついてくれるんだろう? 続いてラメ入りの黒いミニのワンピースとキラキラのピンヒールで決めたローランドの奥さんローリーが「ひさしぶり!」とキスしてきた。 気のせいかもしれないが、去年の暗い影はずいぶんと薄れたようだ。やっぱり仲直りしたのかな? で、例のお土産のTシャツを渡す。ミッシェルちゃん用のはぴったり、というかちょっと小さいぐらい。今年限りだろう。カティちゃんのはさすがに大きすぎたが素直にもらってくれた。ホ アパートは去年の他の2家族との、いかにも「しょうがないからシェア」な、殺風景なアパートと違って、きれいでこじんまりとしたカントリー調の家具で揃えられたアパートだった。 ローリー「他のメンバーも今来たところなのよ。」と紹介する。←リピートするが、夜の11時過ぎ。 一組はローランド家族とシェアしている、たぶんわたしとあまり年齢がかわらないであろう、イタリア在住エクアドル人にしては垢抜けしたお母さんと、18歳前後のセクシーな娘、母娘どちらの彼氏かわからないセクシー系イタリア人。 近所に住むという、エクアドル人の双子のお姉さんたち。 リビングのテーブルの上にはまるでイタリア料理雑誌から抜け出したようなおしゃれなアンティパストがぎっしり並んでいる。更に切り分けられた生のフルーツがたくさん乗ったケーキはそこら辺のケーキ屋とは比べ物にならないぐらいおいしそうだ。 ローリー「全部わたしが作ったの、たくさん食べてね。」 去年と雲泥の差だ! しかしわたしたちはさっきルイスの奥さんミリーが作った夕ご飯を食べてきたばかりでおなかが一杯だ。 しかし食べなければ。せっかくローリーが丹精込めて作ってくれたのに。。。 わたし「うぐうぐ、もぐもぐ。。。お、おいしいよ、絶品だよ、ローリー。」と取り分けられた皿を冷や汗を流しながら食べ切った。 ローリー「アハハ、いくきーとったら!よほどおなかが空いていたのね?さあ、どんどん食べて!!」 ああ、地獄だ。こういうのを餓鬼地獄じゃなくて、なんて言うんだっけ。。。 カティちゃんを見ればアパートに入ってからというもの、ぶすっと黙りこくって、ローリーが取り分けたお皿も「いらない。」と断ってイスに座ってじ~っとしている。 面白くないなら、こんな遅い時間だし来なきゃいいのに。。 わたしは更に配られたモヒート(生のミントの葉が入った南米風カクテル)のグラスを持ってカティちゃんの横に座った。 カティちゃんはわたしをじっと見る。 わたしは困ってしまい「え~と、楽しんでる?」 カティちゃんは首を横に振る。 わたし「一緒に踊ろうか?」 カティちゃん「まだいい。」←なにげに答え方が玄人である! わたし「あ、そう。あのさ。。そのう、お父さんたちはローランドたちと仲直りしたのかな?」 カティちゃん「なんでそんなこと聞くの?」 わたし「いや、なんとなく去年よりはいい感じだな、と思って。」 カティちゃん「大人のことは大人に聞けば?わたしには関係ない。」 あ、そう。 やがてローリーがおっとの手をとって踊りだした。 おっとはわたしと踊るときは、わたしがヘタだからか?グルグル目が廻るほど廻すのだが、彼女とは違う。彼女と腰をうねうね密着させて踊っているのである。 たぶん、ラテンの踊りをはじめて見る日本人妻なら、そこで怒ってちゃぶ台をひっくり返しているだろうが(←ひっくり返し経験者)、もうこんなものごときで怒らなくなった。 それに続いて同居人の娘が彼女の彼氏かお母さんの彼氏か、わからないイタリア人と踊りだした。 彼氏はやはり本場ものじゃないのでへっぽこなのだが、彼女が 超ミニのフレアスカートを翻しながら、 腰をクネクネさせながら、 スカートがちょうど座っているわたし鼻先をくすぐりながら、 で踊るのは、いつまでたってもウブな日本人には鼻血が出そうになる。 もしかしたらわたしはレズのけがあるのでは?と思うぐらい食い入って見てしまう。 日本のスケベなおじさまたち、へたなキャバレーに行くより、ラテンクラブの方が楽しめまっせ。 そうやって、鼻をさりげなくティッシュで押さえながら見ていると、横でずっとぶすっと座っていたカティちゃんが立ち上がった。 カティちゃん「この曲きらい。これかけて。」と他の曲をリクエスト。 その曲のタイトルは忘れてしまったが、いかにもヤング(死語?)が好きそうなズンズンお腹に響く曲である! ここでおっちゃんおばちゃんたち(おっとを含め)が潮を引いた。 同居人の娘だけが残り、踊りだした。カティちゃんがやっと舞台に立ち、ひたすらお菓子を食べていたミッシェルちゃんも「やほ~!」と飛び出してきた。 わたしが感心したのは、年頃の同居人の娘が色気を振りまきながら踊るのはわかるが、カティちゃんの腰の動きも半端でないのだ! 相当踊り込んでいる。。。。とわたしは見た。 そういえば彼女、ルイスの家を出る前、確かこの曲をかけて鏡の前で練習していたっけ? これが10年後には、わたしを鼻血ブーにするのだろうか? それに比べてミッシェルちゃんの動きはまだやはり全体としては幼い。 だが、歌詞のさびのところでの腰のうねりを見ると「この子。。。もしかしてもう、知っている?(何を)」と思うぐらい練りこまれたものがある。 子供たちはわたしをあんぐりさせながら踊り続ける。 おっとを見れば、別にわたしのように驚いた様子もなく、普通にカクテルを飲みながらくつろいでそれを見ている。 時計を見ると、夜中の3時。 この子達は眠くないのだろうか? わたしの同僚のミッシェルちゃんと同い年の娘は、9時にはもうベッドに入っているのにな。 。。。。。。。。 。。。。。。。。。。。。。。。。。 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 「ぐ~」 おっと「いくき~と、こんなところでうたた寝しないで!失礼だろ!!」とわたしを揺り起こした。 ハッと我に返って眼前を見ると、まだ子供たちは汗を振りまきながら踊り狂っていた。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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