テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:エクアドル人のおっとを持つと
8月15日(火)
次の朝7時半、わたしは半分眠り状態でクルマに乗る。運転手のおっとはグッタリしていた。 なぜならおっとは前日潮風の吹きすさぶ寒い中BARで「慣れない食べ物=ジェノバ料理」であるラザーニャ アッル ジェノベーゼを食べたおかげで、かつてわたしが見たこともない腹痛に見舞われたのである。汗 近所のカミッラさんのお宅に着いた。彼らと行くのだ。(キイテネエ) おっとはぐったりとしたままクルマに残り、わたしとルイスファミリーだけが家に上がった。 家に一歩はいると、子供も大人も大勢走り回っていて、懐かしの「ホームアローン」の出発前シーン南米人版みたいだ。 目を廻していると、ミリーが「こっち!」とわたしの手を引っ張ってキッチンに連れ込み、わけのわからないままぱさぱさのパンのきれっぱしとうすうすのインスタントコーヒーをごちそうになっていた。 ミリー「みんな、朝ごはんは食べ終わった~?さあ、出かけるわよ!!」 ミリーは親族の中のみならず、基本的に仕切り屋のようである。 わたしがクルマに乗ると、ミリーの仕切りで「マルちゃんのクルマには子供たち全員をお願いね。」という声とともに、子供たちが騒ぎながらぐったりとハンドルにもたれかかっているおっとの後部座席に次々に飛び込んできた。汗 ああ、このままBBQが終ったらミラノに帰るつもりだったのに、これじゃ帰れないじゃないか! わたしは冷や汗が噴出してきて「おとなならともかく、『「腹痛」のためハンドル切り損ねて、他人の子供たちと一緒に心中。』はシャレにならないから、ちゃんと運転してね!」とおっとに喝をいれ、クルマはよろよろと発進したのであった。 クルマは4台。 高速道路をピエモンテ州方向に向かってひたすら走る。 おっとがいったいどこまで持つかがこわい。 わたしはハイテンションの子供たちを振り返り「どこまで行くの?ずいぶん遠いようだけど。」 子供たち「しらな~~い。」 そうだよな、子供なんて無責任だ。しかし、要求だけは「マルちゃん、『Gasorina!』のCDもう一回かけて!!」「マルちゃん、もうちょっとここボリューム上げて!!」「お腹空いた~。なんか食べるものないの?」とうるさい。(←そういえば同じような悪夢が目目さんのクルマの中で繰り広げられたような?) クルマの中でまで、そんなに髪を振り乱して、獅子舞みたいに踊るな!! しかし魅惑のリグリア海岸を離れて、こんなに遠くまで来るからにはよほど素晴らしい渓谷でもあるのかな。。とちょっとワクワクしてきた。 高速道路の表示が「アレッサンドリアまで7km」というところまで来たところでやっと我々は出口を出る。 しかし、周りをみれば、我が家の近所とたいして変わらない田舎の風景が広がり、川とはとても呼べないようなしけた河原のそばをクルマは走っていく。 クルマは雑木林に入っていった。 ちょっと入ったところから、すでにたくさんのクルマが無造作に駐車されている。 あちこちにビールの空き瓶が転がり、パニーノ屋のワゴン車が土ぼこりの中、ビールを売っている。 見渡せば、あっちにもこっちにも南米人。。 ま、まさか、こんな遠くまで来て、南米人でひしめきあう、しかもこんなしけた河原でBBQをするのか!? OOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHH,NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!????? よっぽど我が家の近所の河原のほうが数倍綺麗やでっ!!! 我が男性軍はクルマを降りてうろうろと開いている場所を探す。 男たちはクルマに再び乗り込んだ。「いくきーと、ロードマップを持ってたな。貸してくれ。」 わたし「どうするの?」 男たち「他のところを探す。」 わたしは時計を見た。1時だった。 そりゃあ、ここは満員でしけててかなりイヤだけど、遠くからはるばる来たのに、今から別のところを探して行ったら何時になるんだろう? クルマたちはそんなわたしの思惑は無視して発進した。 どこに行くんだ?どこに行くんだ?どこに行くんだ?どこに行くんだ? クルマは往き道に2度通った高速道路の料金所をまた通り、昨夜稼いだ小銭を全て使い果たして、「ジェノバ方向」に戻っていく。 まさか、このまま何もせず、家に帰るつもり?? と思っていたらジェノバのひとつ手前の出口で降りたのでホッ。 そして、のどかな牧場の広がる小道をひたすらあがっていく。 なんだ、こんないいところが近くにあるなら最初っからここに来ればよかったのに。。と思っていたら、目的地の小さな村に到着。どこかで見たことがある、と思ったら、去年も遊びに来た村だった。 そうか、いつも来るところだから、たまには場所を変えたかったのだな。 この時点で4時半。 もう空腹もピークを達した後で、わたしはお腹も空いてなかった。おっとはやっとクルマから降りれた、と言った感じでその辺のベンチにぐったりと横たわり、わたしのひざを枕にして動かなくなってしまった。 女たちを見れば、着々と肉を降ろし、その村の公園の片隅にひとつだけあるBBQコーナーで肉を焼き始めた。 男たちはビールのたくさん詰まった保冷バッグとサッカーボールを取り出し、野原にサッカーにでかけた。 子供たちは、というと最初は親の周りで遊んでいたのだが、飽きてくると「いくきーと、一緒に川に行こうよ。」という。 わたし「わたしは行かない。みんなで行ってきな。」と答えると「でも。。お母さんたちが。。。大人と一緒じゃないとダメっていうの。」 仕方がないな。 わたしはおっとをベンチに残して立ち上がった。 子供たちはきゃ~きゃ~言いながらビーチタオルを持ってわたしの後についてきた。 カティちゃん「く~き、ちょっとあたしのタオル持ってて。」 わたし「いいよ。」 カティちゃんはそのまま川に駆け出していった。 それを見て、カミッラさんところの子豚のようなコロコロの2人の娘も「あたしたちのもお願い!」とタオルを押し付けて駈けて行く。 カミッラさんところの無口の小さな弟ディエゴだけが黙ってわたしについてくる。彼は「小人症」で、もう7歳なのに5歳の最年少の妹よりも小さく、実際幼い。 子供の時はまだいいけど、大人になったら大変だろうな、とわたしは胸を痛めた。 可哀想な彼のその腕にはすでに全員の浮き輪やゴーグルを抱え込んでよろよろと歩いていた。_| ̄|○ わたしたちはセバスティアンかいっ!? 川岸に着いた。 仔豚たちは水を前にきゃ~きゃ~騒いでいるだけで浸かろうとしない。 カミッラ姉「ねえいくき~と、この水に入っていい?」 わたし「入ったらいいじゃない。」 カミッラ妹「え~、でもこの水、緑色だよ?本当に入っていいの?」 わたし「好きにしなよ。」 勝手なくせに、変なところで大人の意見を求めるのだな。 仔豚たちは意を決して水に浸かった。「冷たい~。」「みどりいろ~っ!」 弟を見れば妹のゴーグルを握り締めて水に入ろうかどうしようか悩んでいる。 それをみて妹「ちょっと、ディエゴ!わたしのゴーグル使わないでよね、きたない!!」 わたし「あんた、なんてこと言うのっ!」 わたしが彼女の親なら、やつらが水に浸かっていなかったら、確実に張りセンパンチしていた。残念ながら遠かった。 しかし慣れているのか、子豚たちはわたしを完全無視である。 ムカムカしながら自分のビーチタオルの上に座り込んだ。 すぐに仔豚たちが水から上がってきた。 カミッラ姉妹は「寒い、寒い!」と自分のビーチタオルを身体に巻いて、わたしが座っているにもかまわず、当たり前のように緑色に濡れた身体でわたしのタオルの上に寝転がる。 こいつら、可愛くねえ。 我が親戚のカティちゃんは、といえば自分のタオルを身体に巻いて突っ立っているので、しかたなしにわたしが立って、カティちゃんを座らせた。 カミッラ姉「わたしあの公園で遊びたい!ねえ、いくきーと付いてきてくれるでしょ?」 見れば、どこぞのホテルの敷地内の子供の遊び場である。 わたし「ダメだよ、あそこは。お金を払わないと入れないの。」 カミッラ姉「え~、いくきーと、お金ないの?」←なんでわたしが他人の子供に金を出さなきゃならんのだ!?怒 カミッラ姉「じゃあ、あっちの滑り台は?」 それは公共の公園のようだった。「いいよ、行っといで。」 カミッラ姉「いくきーとも来てよ!大人がいないとお母さんに怒られる!」 なんでこんな高圧的な言い方をするんだ、この子豚は!? わたし「川のほうが危ないんだよ。ひとりで行きなさい。」 カミッラ姉「え~、お願いお願い。。わたしディエゴも連れて行かなきゃいけないの。ディエゴの面倒誰が見るの?」 ディエゴを見れば無心に水遊びをしていて、公園に行きたがっているわけではない。 これがカティちゃんなら、叔母として可愛いから(実際に「シンデレラ」と「意地悪な2人のお姉さん」ぐらいの差だ)、「よしよし、しょうがないな、行ったろ。」になるのだが、こんな憎たらしい他人の子豚のお願いをなんで聞く必要があるのだ!? 2人がバリバリ火花を散らしていると、可愛くよく気のつくカティちゃんが雰囲気をすぐに察知してカミッラ妹に「わたしたちもあと5分したら公園に行こう!」と言ったので、カミッラ姉は喜んでディエゴを引っ張って公園へと走って行き、わたしはノロノロとその後ろをついていくことになったのだった。 手ぶらで公園に駈けて行った姉とは違い、ディエゴは浮き輪をちゃんと持ってきたし、後続の2人はカミッラ姉の散らかしていった荷物もきちんと全部まとめて持ってきたのが偉い。 子供たちが公園で遊んでいるのをぼんやり見ていると、やっぱり障害児のディエゴがよその子であるカティちゃんにではなく、実の姉妹にいじめられているのがわかって無性に腹が立ってくる。 わたし「そろそろBBQも出来てるころだし、戻ろう。」と子供たちを無理やり引き上げた。 母親たちのところに行くと、まだ汗だくになって2山目の肉を焼いていた。 おっとは最初に横たわったベンチの上で身動きもしないで死んだようになっている。 カミッラ姉「く~き、まだ準備出来てないじゃない!戻ろ!」 わたし「勝手に戻りな。」 仔豚たちは地団太を踏んで、公園に戻る。自分たちで行けるなら、最初から自分たちだけで行ったらいいのに。 ディエゴは残って、おとなしく母親たちのそばで砂遊びをしていた。 やっと全ての肉の山が焼きあがったころには4時半になっていた。 子供たちも戻ってきた。 気がつけば、最初は無人だった公園にイタリア人が集まっていて「いい匂いだね、おいしそう。」「へえ、南米風のソーセージですか、どんなお味?」とちゃっかりわたしたちのおしょうばんに預かる人もいる。汗 こういうところは南米人は気前がいいので、大判振る舞いをしていた。 おばあちゃんに連れられた小さな子供たちは、カーステレオからガンガン流れるサルサに乗って楽しそうに踊っている。 ベンチに座っていたおじいちゃんたちはそれをみて、手拍子をとっている。 まるで「エクアドル人と交流する地元の会」のようでおもしろかった。 おっとを見れば、ときどき起き出したが、日が暮れるまでベンチでぐったりしたままだった。 BBQが終わり、そんなおっとも無事に子供たちをカミッラさんのお宅に送り届け、ルイスの家にたどり着くことが出来た。 わたしはヘロヘロのおっとを見た。これでは今日ミラノに帰るのは自殺行為である。 しかたがない。 わたし「マルちゃんがこんなんだから、もう一晩泊めてもらえる?」 まさか、自らこんな言葉が出てくるとは思わなかった。 我ながら、成長したなあ。。。っつーか、慣れたな。うん。 最初の覚悟のおかげでびっくりすることもあんまりなかった。 翌朝、やっと回復したおとっととわたしは豪雨の中をジェノバから帰還したのであった。 (終) PS.明日から1週間、家出します。よろしく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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