テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:ご近所物語
昨日の夜9時半ごろ。
わたしは積まれた乾いた洗濯物の山をかき分けて、ソファに寝転がってボリュームを落としてほとんど音の聞こえない、TVをぼ~と眺めていた。 昨日は一日中、歩き回ってクタクタで、静かに時を過ごしたかったのだ。 電気は節約のために消していて真っ暗、早い時間にもかかわらず、わたしはウトウトしかけていた。 カチャ。 玄関で音がした。 わたしはびっくりして上半身を起こす。 おっとは朝から「ちょっとウイリアムのところまで行ってくる。」と言って出かけていない。 それに、ほんの2時間ほど前に電話したとき、「今から夕ごはんをごちそうになって1時間ぐらいしたら帰るよ。」と言っていたので、エクアドル時計で計算すると、帰りはきっと明日の朝だ。 誰だろう!? わたしはそうっと玄関に近づき、何か武器になるものを探した。すぐ手の届くところにくつべらがあったので、それを冷たく湿る手で握り締めて、次に何が起こるかを待つ。 カチャ。カチャ。カチャ。カチャ。 外から誰か鍵を開けたがっているが、内側からわたしが鍵を挿しているので簡単に開かないのだ。 わたしは凍り付いて、自分の携帯を真っ暗な中、目を凝らして探した。 え~と、えとえとイタリアの警察って何番だっけ!? カチャン。 とうとうわたしの鍵が落ちて、ドアが開いた。 わたしは一歩引いて靴べらを上段構えで構えた。 そこに侵入していたのは なんと おっとだった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH,NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????????????????????? これは夢なのかっ!? おっと「ただいま。真っ暗な中で何やってるんだよ?」と電気をつけていぶかしげにわたしの手の靴べらを見る。 わたし「い、いったいどういうことっ!?」 おっと「何が?」 わたし「わたしはてっきりあんたは明日の朝、帰ってくると思ってたよ!?」 おっと「ウイリアムのところでごはん食べて1時間ほどで戻る、って言ったでしょ?」 わたし「だって。。。だって、あんたの1時間が本当の1時間だと誰が信じるよ!?」 おっとはふんっと鼻でせせら笑ってさらに洗濯物を押しのけてソファに寝転がってTVのボリュームをあげた。 いったいどうしたんだろう?こんなこと、本当に本当に初めてだ。 ああ、わかった。きっと新しい男が出来たから、遠くマルペンサ空港のそばなんかに住んでいるウイリアムとは別れたに違いない。 その新しい男はクラウディオという、わたしもまだ会ったことのない、隣町に住むイタリア人だ。 最近は毎週末、こいつと一緒に朝まで帰らないのである。怒 確かに遠距離恋愛は面倒だし、気持ちも離れる。 恋愛にしたって、友達にしたって、近いに越したことはない。 わたしは田舎町に引っ越してから孤独になった。 ミラノにはたくさん友達はいるけれど、遠いし、夜ちょっとどこかに一緒に出かけても電車の時間ばかり気になって、すぐに帰るようになってしまってから、ほとんど誰とも会わなくなってしまった。 それに比べて仕事場が家から近いこともあって、毎週末、遊びにでかける相手に困らないおっとがうらやましく、妬みすら感じる。 時にそれにたいして、当たり散らすと「じゃあ、一緒に出かける?」と聞くのでわたしは「うん!」と返事をして支度をはじめると急におっとは「いやあでも。。男ばっかりでただビールを飲んでダラダラ喋るだけだよ?そういうの嫌いなんじゃないの?」と慌てだすのだ。 きっと、そう偽って他に浮気しているに違いない。相手が男か女かは知らないが。 それはともかくわたしはネット上で友達作ってるしかないな、と先週もぼ~っとミクシのページを開いた。「新着メッセージが一件あります!」という文字が飛び込んできた。 誰だろう?開けると知らない女性名からだった。「はじめまして。わたしはこの沿線上の「INAKAMACHI(仮)」という駅に住んでいます。いくきーとさんはお近くですか?」 正直言って驚いた。 きっとわたしの家を知っている人がイタズラで書いてきたのかと思った。 だって「INAKAMACHI(仮)」といえば、我が駅ではないか!? 疑り深いわたしは彼女のブログを開き、ざっと読んだ。 知らない。。。知らない人だ。 彼女は飼い猫のことをよくブログに載せているが、わたしのミラノの日本人の友達で猫飼いはいない! そしてある日のブログには彼女の家の写真が載っていた。 こ、これは。。。。。 わたしはこの家をよく知っている。ご近所だ。 彼女は本当の我が「INAKAMACHI(仮)」の住民だ!! 慌てて「わたしも「INAKAMACHI(仮)」駅なんですが。。」と返事を出す。 またまたすぐ返事が来て彼女の狂喜も伝わってきた。 無理もない。こんなちっぽけな田舎町、我々はいまだに日本人どころか、中国人すら道ですれ違ったことはないのだ! 会いたい。 痛切に思った。同町民として。 次の日さっそくわたしは勇気を出して彼女にラブレターを出した。「今週日曜日に隣町で普段公開されない屋敷や別荘が公開されます。一緒に観に行きませんか?」 彼女の答えは即座に「YES」だった。 うれしい。おっとはこういう催しは「ケ、つまんなさそう~。」と渋い顔してパスなのだ。やっぱり文化的な日本人、いいなあ。 待ちに待った昨日日曜日の朝。 幸運にもいい天気で涼しかった。 どきどきしながら待ち合わせの家のすぐそばのBARに行くと、すでに停まっていたクルマから彼女がニコニコしながら降りてきて、じーんとした。 続いて今年3月に結婚したばかりのイタリア人のだんなさんが降りてきた。いかにも優しそうである。 わたしたちは軽い挨拶を交わしてクルマで隣町へ。 町全体の催しなだけあって、あちこちの教会や建物の前にはテントが張ってあって、人々が集まっていて楽しそうだ。 わたしたちはさっそく事前に予約済みの市役所の建物に入った。 「予約」」などという前もって何かをオーガナイズして、楽しむことも、我がおっと相手では決して出来ないことなので非常に楽しい。 彼女、サトちゃん(仮名)は大阪出身で、とてもとても面白いひとだ。彼女と話していると、わたしは笑ってばかりだった。 ああ、笑う、なんて、なんてひさびさなんだろう。 豪勢なバロック調のシャンデリアと、コテコテなへたくそなフレスコ画で全ての部屋が彩られた、正直言えばかなり趣味の悪い建物を美術館員が早口で説明していくのを、わかりやすいゆっくりしたイタリア語でサトちゃんに説明し直す旦那さん。 優しいなあ。 うんざり時計ばかり気にしながらツアーが15分遅れで終った。そしてわたしたちは駆け足で隣町の更にはずれまでクルマを飛ばして次の建物へ。 駆け込んだ建物はある時期、ロンバルディア州で勢力を誇っていたボロメオ家の狩の別荘だ。 そういえば、現在のボロメオ家の娘はフィアットの御曹司とこの間、結婚したばかり。←どっちが玉の輿なんだろう? ここは1900年代はじめにボロメオ家が買い取って、狩の別荘にしたのだが、壁になにか着色されているのを見つけて、本格的な修復を施したところ(お金がある家はいいねえ)、1400年代の素晴らしいゴシック調のフレスコ画がよみがえった。 ものは古いが、修復されて100年しか経っていないから、生々しいのに無名の画家の力量が伝わってくる。 わたしたちはすっかり気に入って、ずっと見続けていたら係の人に「次のツアーが来ますから。」と追い払われてしまった。 この後、我が家にいったん帰って前日の残りのカレーとごはんを持って、ずうずうしくも初対面のサトちゃん(仮名)のお宅にお邪魔した。 サトちゃん(仮名)のお宅は素敵なピンクの田舎家の1階だ。 ドアを開けるとさっそくかの猫、ティグレ君が迎えてくれる。 家の中は天井が高く、広く、それはそれは素晴らしかった! みんなでわたしの持ってきたカレーと、サトちゃん(仮名)作ったサラダ、旦那さんのお母さんが作ったと言う野菜の煮物とコロッケをいただいた。 しめには旦那さんのいとこ手作りのアップルパイ。 ああ、近所の友達っていいなあ!!! 豪勢な昼食が済んだところで、山のような彼らの結婚式の写真を見せてもらい、そしてショッキングなことを聞いたのだった。予告はあったのだけど。。 サトちゃん(仮名)「わたしたち10月末にはエミリアロマーニャに引っ越すの。」 が~~~~ん。。。。午前中までばら色に染まりかけていた人生に水色のシミが出来た。 サトちゃん(仮名)「カナダ風のB&Bを田舎で開こうと思って。」計画を語るサトちゃん(仮名)の目はキラキラしていた。とても前向きな彼女のなかからわたしは丘の上に立つ、小さなB&Bを思い浮かべてうっとりした。 でも。 そ、そうか。。。あと1ヶ月後にはこの町から居なくなるわけね。。。_| ̄|○ わたし「おっともね、エクアドルのカナダ風B&Bで働いてたこともあったんだよね。ホテル業の大学に行ってたからさ。」となんとか話題に協調するのに必死であった。 わたしたちは気を取り直して再び隣町に出かけることにする。 ジェラートを食べて、街を散策した。中でも無料公開のボロメオ家の納屋にはたくさんの馬がいてなでてみたり、そのために大きな長屋があって、そこがまるまる馬に乗るための馬具やブーツ、帽子、コートなどの衣装室だったのに驚いたり、とてもとても楽しんだ。 本当にふたりとも、いいひとで、はじめて会ったと思えないぐらい自然だ。 夕方になって、家に送ってもらったのだが、わたしはまるで恋人と別れたくない女となっていた。 2人に家にあがってもらってお茶を入れて、我々の3年前の結婚式の写真を無理やり見せたり、なんだか未練がましい女になっていた気がする。 わたし「引っ越すまでに絶対ぜったい、また会おうね!」 期間限定の近所の友達。 うれしいけどちょっとせつない。 時間が許す限り、会ってもいいやろうか?ね、サトちゃん(仮名)?←迷惑だって ちなみにサトちゃん(仮名)の写真つきこの日のブログはこれ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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