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最近、同僚のシルビアが新しい犬を飼い始めた。
「ジャダ」と名づけられたその犬はきれいな白黒のまだら模様のセッターだ。 イタリアの田舎は、っつーかうちの前の道も、秋になると狩猟が解禁になって、毎週末「日曜にわか猟師」が猟犬たちを連れて横切る。 彼らの猟犬のほとんどは、たいてい昔の肖像画なんかにも描かれているセッターである。 シルビアのジャダもそんな中でも毛並みの美しい人なつっこい犬なのだが、可哀相に片目がつぶれている。 猟のときに間違えて銃で撃たれたのだ。 そんなわけで猟犬として使い物にならなくなったジャダが高速道路脇につながれて捨てられていたのを、動物保護団体のひとが見つけて「CANILE(カニーレ)」という施設に送られた。 カニーレは、日本の保健所のようなところだけれども、ここでは引き取り手のない犬を殺すことはないようだ。ここで一生を終る犬もいるらしい。 シルビアは以前から動物保護団体のボランティアをしていて、彼女の家には常に2~3匹の犬がいるけれどもみんなカニーレから貰い受けた犬である。 なので、奥さんがペットショップを経営しているマッシモが、ときどき社内で新しい仔猫や子犬を入荷した、と宣伝するといつも「売るから、買うから、動物を捨てる人間が跡を絶たないんだ!」と小喧嘩に発展するのである。汗 そういうわけで、実はこの間から無性に動物を飼いたいわたしはおおっぴらにマッシモにその旨でお願いする勇気がなく、シルビアに「子犬か仔猫を飼いたいんだけど。。。カニーレってそんな子供もいるの?」と聞いてみた。 シルビア「常時じゃないみたいだけど、結構いるよ。これで探すといいよ。」と何軒かのサイトを教えてくれたのである。 (イタリア長期在住で動物を飼いたい人はここで可哀相な子達を救ってやってください!!) http://milano.kijiji.it/f-Animali-In-regalo-W0QQCatIdZ901 http://www.enpanet.it/cercatrova/ http://www.enpamonza.it/ さっそくひとつのサイトのページを開けると1800件以上の犬や猫の写真つきの掲示があって驚いた。 犬が100匹のうち猫が1匹の割合で圧倒的に犬が多い。子犬も結構多かった。しかしそのほとんどが、シェパードや、サモエド犬の雑種などの大型犬だ。 うちは共働きだから手間のかかる犬より、家の中で勝手気ままにしてくれる猫のほうがいいな。と探しつつもほとんどそんな掲示がないので自然に犬の掲示を開けてどんなものか読むようになった。 「ディエゴ。約5歳。ラブラドールの雑種。高速道路のそばでひどい咳をして倒れているのをわたしたち(動物保護団体)が発見し、すぐに獣医に連れて行って一命を取り留めました。10日間の点滴の後、なんとか元気になりましたが、彼はカニーレの寒さには耐えれません、このままでは死んでしまうでしょう。暖かい室内で飼ってあげられる飼い主を至急募集!」 「アンナ 約13歳。ヨーキー。飼い主の虐待の末、カニーレに来ました。おとなしくて人なつっこいおばあちゃん犬です。眠ってばかりいますから手間がかかりません。お願いですから彼女の犬生を虐待の末、カニーレで終らせないで!」 わたしは目をうるませて「ううううう、可哀相に。全部引き取りたい。。。。」 シルビア「いちいち真剣に読んでたらダメだよ。カニ-レも収容場所がないから一匹でも早く減らしたいために、同情を引く文を強調して書いてるんだから。写真を見て本当に気に入ったものだけちゃんと読むようにしないと。」 な、なるほど。 わたしは日本ではずっと犬飼いだったので、犬なら大人の犬からでも飼えそうだけど、未経験の猫にはやっぱりしつけやすい仔猫が欲しい。 そういったわけで猫だけ集中的に探し始めたのだが、なかなかいない。 数日も経つとすっかり猫を飼う心の準備だけは整ったわたしは焦ってきた。 「全然猫が見つからないよ。」とあちこちでこぼしているとプログラマーのロンギが「猫ならうちのばあちゃんちに14匹もいるよ。そのうち3匹はこの夏に生まれたばかりだから興味があるなら写真持って来てやるよ。」とさっそく次の日写真を見せてくれたのだ。 3匹全部がまだら模様でグレーX白、赤茶X白 ベージュX白。 か、かわいい、全部欲しい! わたし「これ全部予防接種とマイクロチップ登録は済んでるの?」 ロンギ「まさか!全部田舎の庭に放し飼いの半野良猫状態だから、そんなものないよ。」 うう~ん。マッシモに聞いてみることにした。 マッシモ「それ全部個人でやったら、100ユーロはするよ。それだったらうちの店の仔猫、予防接種とマイクロチップ登録済み、ごはんのおわんと1回分の餌つきで50ユーロ、を40ユーロに負けてやるからそれにしなよ。」 た、確かに。店で買ったほうが安い。 でも買ってしまうとシルビアに悪いなあ、というかやっぱり不幸な猫を救ったほうが世界平和にちょっとでも協力することになるし。 改めて検索範囲を広げてネットで探しているとなんと、家の近所に「CANILE(カニーレ)」ではなく「GATTILE(ガッティーレ。猫のカニーレのようなもの)」をみつけて小躍りした。 掲示を見れば、仔猫であふれている!しかも全部予防接種とマイクロチップ登録済みだ。わたしはうれしくなってさっそくそのガッティーレに電話でコンタクトを取ると週1回の一般公開日を教えてくれた。くしくもその次の日の夕方だったのだ。 今夜おっとに許可をとって、明日見に行ったらちょうどいいな。。。と思った。 帰宅しておっとに話すと、おっとは「え~、ぼくは犬のほうがいいのに。」といいながらも「やっぱり明日は行く前にキャリーBOXを買っていかなきゃいけないかな?それとも下見だけにしとく?」と乗り気である。 次の日わたしは意気揚々と出勤した。夕方になるのが楽しみでしかたがなかった。 昼休み。 新人のジャンピエロの奥さんが会社まで来たのではじめて一緒にマッシモとアンナとで近所のバールで昼ごはんを食べた。 出産まであと2週間を切った奥さんは、ジャンピエロ同様、はきはきとして楽しいひとだった。 ちなみに彼らはペルシャ猫を飼っているので、わたしは猫を飼っている感想を奥さんに聞いてみたのだ。 すると奥さん、目じりがだらんと下がって「猫ちゃんはねえ、いいわよお。わたしたちは彼女なしの人生は考えられないわ。」と猫自慢話がとまらなくなった。 わたしも、そうかそうか、やっぱり猫を飼うって素敵なんだなあ。とウンウンうなづきながら熱心に聞く。 そこに黙って聞いていたマッシモが水を差した。「その猫、妊娠する前から飼ってたんでしょ?その~。。こわくなかった?」 え? 奥さん「いやねえ、あんなウイルスのリスクなんてほんっとに低いのよ。妊娠初期も猫のトイレ掃除とか自分でしていたけど、大丈夫だったわ。ちゃんとその後に手を洗えばいいのよ。」 ?? マッシモ「まあ、今が無事出産間近ってことでいいんだけどさ。でもうちの奥さんは妊娠中は店に猫を仕入れるの、やめてたしね。」 ???何を話してるんだろう、この2人。。。 疑問が残ったまま、話題は変わり、やがて昼休みが終って奥さんは帰っていった。ジャンピエロはお腹の大きい奥さんを駅まで見送りに行った。 わたし「あのさ、さっき奥さんとなんの話してたの?」 マッシモ「猫が持ってるトキソプラズマ菌のことだよ。妊娠初期に感染すると流産したり、障害児が生まれる確率が高くなるんだ。知らなかったの?」 OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH,NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO???? 知らなかったよ~~~~~~~~~~~~! っつ~か、マッシモ、わたしが「不育症」治療しているのを知ってるくせになんで言ってくれなかったんだろう!? この話題が一日遅れてたら、わたしは2回も流産してるのに、さらにハイリスクな猫飼いになってたかもしれなかったよ!? わたしは日本語のサイトに行ってさらにトキソプラズマ菌について調べてみる。 どのページを見ても、猫を飼うことで感染率が高くなる、猫なんて飼うのはやめとけ、と書いてあるのだ。 そんなリスクを承知で無理に飼って、また流産したら、たとえ猫が原因ではなくても、自然、矛先は猫に向けてしまうだろう。そんなのイヤだ。 この午後、わたしの猫欲しい度が120%から0,0001%に下降した。涙 その日の夕方。我が田舎駅に着くと、おっとがワクワクしながら待っていた。 事情を話しているうちに、おっとがだんだん猫に見えてきて、ひげがだらんと下がっていくのがわかる。 おっと「。。。。。い」 わたし「え?」 おっと「。。。犬ならいいんだよね?」 わたし「犬がこの菌を持っている場合もあるって書いてあった。」 おっと「。。。。。。そうか。」 こうしてわたしたちの動物飼いの話は不完全燃焼な形で終ったのだが。。。。 シルビアにもらったサイトをついつい毎日見る癖がついてしまった。 フェレットなら、ハムスターなら、うさぎなら大丈夫だろうか?としつこくリターンマッチを考えているこのごろである。 なんか飼いたいなあ。やっぱ犬。。。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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