テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:ご近所物語
まったく最近出会いと別れの日々が多い。
月曜日、コピー室にコピーを取りに行って自分のデスクに帰ってくると携帯の着信メロディが流れ続けていた。 わたしにいつも電話をかけてくるといったら、目目さんか、ベネチア在住のSaicuccioさん、現在イタリア旅行中の謎探偵さんがメッセージを送ってくるぐらいだし、おっとは一回だけ鳴らして電話を切って、わたしからかけなおすのを待ちやがる。怒 だからこんなに長くメロディが流れることはめったにないので、慌てて携帯に飛びついた。 「もしもし、いくきーとちゃん?」 この声を聞いて、じわっと涙がこみあげた。 声の主は3年前に旦那のアンちゃん(仮名)の転勤でアメリカのシアトルに行ってしまったピツコちゃん(仮名)だった。 ピツコちゃんがこの時期ミラノに里帰りすることはずいぶん前にメールで知っていたのだが、ちっとも連絡がないので寂しい思いをしていたのだ。 ピツコちゃんと旦那のアンちゃんはおっとの心の友があのエクアドル暗黒組織のボス(違)である「ウイリアム」であるように、わたしが約10年前、ミラノに来て以来の「心の友」だ。いつもほがらかで前向きなピツコちゃんたちは、すぐに凹んで閉じこもってしまうわたしにとっては「憧れ」であると同時に数少ない心を許せる友だった。 ピツコちゃん「ごめんね、親戚廻りが忙しくて、なかなか連絡できなくて。あたしたち、あさってもうシアトルに帰るの。今日か明日に会わない?」 わたし「もちろん、会おう!どっちでもいつでもおっけ~!!」 というわけで、その日の夜、運河沿いにある魚屋の前で待ち合わせることになった。 銀行の審査に通ったおかげでぎりぎり1回ぐらいは外食できる余裕も出来たし、大丈夫だ。このことを悟られないようにしなければ。。。 待ち合わせの時間、8時きっかりに魚屋の前に着くとピツコちゃんと旦那のアンちゃんのほかにも、やっぱり昔からの「心の友」だったルミブー(仮名)とひろぽん(仮名)とその旦那さんも来ていて、涙がちょちょ切れそうになり、熱く強く抱きしめあったのだった。←考えたらほとんど日本人なのに、なんか変だ。 わたしたちはピッツエリアに入り、昔話に、現在の話に、シアトルの話に、と声が枯れるまで喋った。 シアトルとは行ったことがないのだが、ピツコちゃんたちの話によるとこれといった観光名所はないけれど、住むには税金も低いし、治安もいい、イタリアみたいに警官や裁判官など、ありえないひとに裏切られる心配もないらしいし、暮らしやすい街らしい。 ここミラノでは日本人は「わたしはデザイナーです。」とか「ぼくは翻訳家です。」とか、プロでなくてもなんか肩書きを持っていなきゃいけないような雰囲気があるのだが、シアトルでは、普通に肩書きを持たない人がへれっと普通にすごい特技を出してみたりするところらしい。 うううううう。そんな街にわたしも移住したいよ。 わたしに関してはみんなが「ときどきブログ、読んでるよ。大変だねえ。」と言うので、極貧バレバレやんけっ!!!と穴があったら入りたくなった。 もうついでなので、ブログに書くようなことでもないし、おっとにも他の友達にはなんだか恥ずかしくて言えないようなクヨクヨしていたことも思い切って話したら、あっさりみんな受け入れてくれてなんだかスッキリした。(ルミブーからは、それに関連してそれを上回るような、わたしだったら立ち上がれないような体験談も聞けたし。) とにかく楽しくて楽しくて楽しくてずっと笑い転げてニコニコしていた。 こんなに心の底から笑ったのは何年ぶりだろう? イタリア人やヤギたちの言うギャグなんて100発100中おもしろくないから、愛想笑いだけは覚えたけど、笑えないし、知り合って間もないようなひととはやっぱり「ここで笑っていいのかな、いけないのかな?」と様子を見てしまうし。 ああ、気持ちがよかった。すっきりした。笑うってやっぱり気持ちがいいなあ。 ピツコちゃんたちは、ちなみにグリーンカードを申請中だそうだ。 ということは、この間家も買ったし、向こうに永住するってことか。。。。。←本人たちはそのつもりはない、と言ってる割にはそのつもりな行動である。 ルミブーもわたしたちが知り合ったころからのつきあいのスイス人の彼と結婚したら、どこに行くかわからないし、ひろぽんも旦那さんは日本人だから日本に行ってしまう可能性だってある。 別に彼らとは普段からしょっちゅうべったり接触していたわけじゃない。ピツコちゃんたちとの3年の年月だって、会って5分もたたないうちに埋められたけど、だけど。。。 なんだか無性に寂しくなった。 この間のおっとと同じくうるみそうになったが我慢した。 12時も過ぎてレストランが閉店支度を始めたので、わたしたちは腰をあげざるおえなかった。 まずはひろぽん夫妻が帰っていって、わたしたちは全員で我が家のクルマ、もんで男くんを停めているところまで歩いた。 そういえば、もんで男くんはピツコちゃんの旦那のアンちゃんがシアトルに引っ越すのに売りに出していて、出発3日前に売れたはいいけどドタキャンされて、廃車に行く時間もないから出発2日前に「もらって!!」とおっとと一緒に名義変更に行ったのだ。 そこでおっとの滞在許可証が5日後に切れることが発覚_| ̄|○、窓口で「出来ません。」と言われたらアンちゃんが切れて「ぼくはあさって国外に引っ越すんだ!なんとかしろ!!」と窓口のお姉さんに怒鳴って、名義変更が出来たんだっけ。。。 アンちゃんは懐かしそうにもんで男くんの廻りを一周し「ぼくのクルマ、こんな紺色だったっけ?てっきり明るい灰緑だと思ってたよ。」 わたし「うん。。。最初わたしたちもそう思ってたんだけど。」 引き取ってからおっとのいつもの病的なほどの丹念な掃除と磨きで、本来の紺色を取り戻したのである。汗 ピツコちゃん「ミラノはスモッグが多いからね~。」 ああ、いろいろ思い出すなあ。 これで一緒にメルツォの巨大映画館に行ったこと、彼らが狭い狭い天井裏の家に住んでいたときに家の中で焼肉をして、みんなでいぶされたこと。。。 あのころはまだミラノ生活をぶ~ぶ~文句を言いながらも謳歌していたな。 こうしてわたしとおっとはもんで男くんに乗って帰途に着いた。 また次の日から、こんな楽しい日なんかなかったような日々が続くと思うと、ほがらかなピツコちゃんたちを見習わなければいけない、とわかってながらも暗く凹むわたしなのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ご近所物語] カテゴリの最新記事
|
|