テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:エクアドル人のおっとを持つと
この日はみなさんの期待を裏切って、なんとかそのまま兄ルイスの家に帰ることが出来たのである。
だが次の日。 「く~き、起きて。」とおずおず部屋に入ってきたカティちゃんの声で目が覚めた。 唇が乾いて、のどがイガイガだ。 原因はすぐにわかった。我が家の暖房は独立していて自分たちでつけなければならないタイプだから、夜は消して寝るのだが、彼らのアパートは建物全体で管理しているセントラルヒーティングで、1日中つけっぱなしなようである。わたしは暖房のすぐそばに枕を置いて寝たので、顔から干からびていったわけだ。 顔を洗ってうがいをすると、イガイガが収まった。 ああよかった、風邪が伝染ったんじゃなくて。 ルイス「今日はミラノに行く高速沿いのアウトレットにお土産を買いに行くから早く支度しようぜ。」 おっとは大ハリキリだ。 なぜなら、すでに大型スーツケース2個と大きなボストンバッグ1個に荷物がぱんぱんな彼らに、ずうずうしくもキトの実家に送るクリスマスプレゼントを持っていってもらうようにとりつけたのだから。 慌しく支度をすませ、弟ローランドのアパートに行く。門の前であいかわらずひどい咳をしながら待っていたのは、ローランドだけだった。 おっと「あれ、ローリー(奥さん)とミシェルは?」 ローランド「ミシェルは熱が上がったから行けないよ。ローリーは家に残ってごはんの支度をするって。」 やっぱり。昨夜だってミシェルは外食なんて出来る状態じゃなかったのに。 でも。。。なんでローリーは家に残ってごはんの支度? わたしたちこのままミラノに帰るんじゃないの? またもや疑問を抱きながら昨夜からローランドの家の近くに置きっ放しだったクルマに、バッグを置きに行こうとするとおっと「何やってるんだよ。早くルイスのクルマに戻れよ。」 わたし「え?だってわたしたち6人だし、全員乗れないし、このままミラノに帰るのになんで?」 おっと「いいから!」 ルイスが運転席、おっとが助手席に乗った。 はあ。。。このままミラノに帰れるなんて、やっぱり甘い考えだったんだな。 ついで後部座席にカティちゃんが、兄奥さんのミリーが乗り、わたしが乗ると、ミリーはふとっちょなので、もうぎゅうぎゅうになった。 あ、そうか。ローランドは一緒に冗談で行く、って言ったけど家に残ってごはんの支度を手伝うのか。そうだよねえ、この咳じゃ、いくらなんでも厳しいでしょ。 ローランド「く~き、もっと詰めて!」 えええええええええええええええええええ!!!!!!!????????? 入れるかい!! わたしはカッカしてクルマを降りた。「無理だよ、無理!全員なんて乗れないよ!!」 ミリー「そうだ、上着を脱ぎましょ。で、わたしがカティをひざに乗せたら全員乗れるわ。」 カティちゃん「え~。。。」 カティちゃんはもう10歳だ。しかも彼女は母親似で、普通の10歳よりも体格が大きく、身長はわたしより高い。汗 わたしたちはしぶしぶ上着を脱ぎ、可哀相なカティちゃんは首をまるで絞められた鶏のように折り曲げてミリーのひざの上に乗り、なんとか全員が1台のクルマに乗ることが出来た。 そして可哀相なわたしは後部座席のど真ん中、足は体育座り状態、おまけにげっほげほのローランドは超至近距離だ。 あかん。。。完全に感染るな。はあ。。。 ミラノに向かう高速道路は山道で、小雨が降っていた。 そこでわたしははるかかなたのエクアドルを思い出していた。 そういえば、キト郊外のミンドに下る舗装もしてない山道、わたしたちの前を1台の小型トラックがもうもうと砂煙をあげながら走っていた。その荷台には運転手の家族親族 一同と思われるであろう子供やおばさんがぎっしり詰まれていた。キト市内でも何度もおんぼろ車に7~8人詰まったのを見かけたような。。 。。。。。今もそんな感じ? ああ、やっぱりここはジェノバじゃなくてエクアドル。_| ̄|○ 感慨にふけっていると、まもなく我々はSerravalleアウトレット村に着いた。 その外観はまるでパリのディズニーランドだ。 わたしは興奮してカティちゃんをモデルに写真を撮りまくった。 しかし興奮が収まると、きれいすぎてイタリアにはありえなくて、超うそっぽいヨーロッパの街並み。 表通りに立ち並ぶナイキやディーゼルの店構えはまるで童話の家のようだけど、中は中型スーパーが全部そこのブランドになっているようなな~んかイケテない雰囲気。 おっとたちははしゃぎながらITALIAと書かれたユニフォームをお土産にするかどうか悩んでいる。 わたしとカティちゃんも最初はTシャツやジーンズを手にとって見ていたのだが、だんだん飽きてきた。 とにかくヤギたちは、たくさんの人数のお土産を買わなければいけないのはわかるけど、悩みすぎる。 しかもプラダやフェラガモなどもあるのに、廻るのはスポーツショップばかりだ。 おまけにクリスマス前の週末だからすごい人ごみ。 わたしとカティちゃんは疲れ果ててピューマの試着室の前のイスに座り込んでしまった。 そしておっとはわたしたちが「水飲み百姓」であることをすっかり忘れて、帰国するからお金に糸目なく豪快な買い物をするローランドと同じような買いっぷりである! おっと「ねえねえ、これはどう?」 わたし「高いよ。」 おっと「じゃあこれは?」 わたし「高いよ。」 おっと「み~んなこんなに安いんだよ!?君にもなんか欲しいものがあったら買ってあげる!」 わたし「。。。。誰の口座から?」 おっと「。。。ぼくレジに行って来るから、次はリーボックで待ってて!」 この野朗。怒 こんなことを言っている自分がなんだか悪者の「ケチケチババア」になった気分だ。わたしだって、こんなこと言いたくない。 おっとが親兄弟孝行をしたいのはわかるし、見栄を張りたいのもわかるし、こんなに気軽に荷物を運んでもらえるのはめったにないチャンスだけども、この厳しい状況下、わたしは自分の両親に申し訳ない、と思いながらカードだけ送ったというのに、なんか不公平だ。というか、おっとは豪快に翌月払いのカードを切っているが、翌月はたしか、おっととステファノ両方のワゴン車の保険を更新しなければならないはず。。。 胃が痛くなった。 気がつくとおっとのそばにはわたしとカティちゃんだけになった。 みんなどこへ?とキョロキョロ見回しているとおっとの携帯が鳴った。 おっと「みんな疲れたからクルマで待ってるって。」 _| ̄|○_| ̄|○_| ̄|○_| ̄|○_| ̄|○ おっと「あとはママのお土産が残ってるだけ。これからナイキに行くよ!」 わたしとカティちゃん「もう、やめて~!!!」 結局おっとはこれだけさんざん悩んだにもかかわらず、家族全員にイタリアの公式ユニフォームを、妹の娘には同じく公式ロゴの入ったベビー服を買った。 洋裁が得意で、きれいな生地で作ったエレガントなツーピースを着ていたお義母さん、ユニフォームなんてうれしくないと思うけど。。もう好きにしてくれ。 やっとクルマに向かうと、他のヤギたちがうんざりした顔で待っている。 ルイスはクルマを発進させながら「腹が減った。」とつぶやいた。 わたしたちもお腹がペコペコだ。時計を見ると、もう15時半。食事休憩もないまま我々はウロウロしていたわけだ。 おっとは明るく「ぼくも腹ペコだよ。ねえ、ぼくが買ったのを見て!」とぎゅうぎゅうなクルマの中で買い物袋から、ユニフォームを取り出し、ローランドに投げる。 ローランドはそれをキャッチして値札を見て「へえ、安いね!」と広げる。そして「あれ。。これ、イタリアの勝ち星が3つだよ?」 おっと「ええええええええ!!!!?????」←ちなみに今年で勝ち星4つ おっと「だから安かったんだ!ねえ、まだ遅くないからUターンして!買い直す!!」 全員「。。。。。。。。。。。。」 もちろんそのままジェノバに直行したのはいうまでもない。 ローランドの家に着くと、奥さんのローリーが夕食を準備していた。 わたしたちが昼食も食べてない、ということを聞いて、慌ててスパゲッティにセコンド用に煮込んでいた肉料理をぶっかけて出してくれる。ありがとう、ローリー。 ミシェルちゃんを見れば、げほげほだけでなく、鼻ズーズーになっている。_| ̄|○ 昨日のレストランより更に狭い家の中で肩を寄せ合い、ローランドとミシェルちゃんと、今朝からひどくなった兄奥さんのミリーのげほげほを聞きながら食することとなったのであった。 廻りを見れば、まだ元気なルイスはさっさと帰りたそうである。わたしも早く外に出たくてたまらなかった。 ルイスが「明日は仕事だし、もう帰るわ。」とコートをはおりながら立ち上がったのを見て、おっとに有無もいわせず、立ち上がり同じようにコートをはおるわたし。 ローランドが「待って、待って。渡したいものがあるんだ。」と部屋に消えた。しかたなしにコートのまま座り込むが、なかなか部屋から出てこない。どうしているのか見に行くとTVを掃除していた。 ローランド「いろいろ売りに出したんだけど、これだけ売れ残っちゃって。持って帰ってよ。」 わたし「え~、いいよ。うちにもTVあ。。」 おっと「わ~、ちょうだい、ちょうだい!!」 結局わたしたちは重たい21インチのTVを担いでミラノに帰ることとなった。_| ̄|○ わたしはジェラートを食べていたミシェルちゃんに「じゃあね、エクアドルでも元気でね。」とキスをする。ミシェルちゃんはうざったそうに「バイバイ。」と言ってジェラートを食べ続けた。 きっとわたしたちがいつものようにミラノに帰るぐらいにしか思ってないんだろうな。これでもう何年も、もしかしたら永久に会えなくなるかもしれないのに。 ローランドとローリーとはもちろん熱い抱擁を交わした。別れる、となると今まではヤギの群れの中のただのヤギぐらいにしか思えなかったのに、強烈にいとおしくなって目が潤んだ。 帰国したらデカセギで貯めたお金でローランドはタクシーの商売権(?)を買って、個人タクシー、ローリーはイタリアンスタイルのパン屋を営みたいらしい。どちらも成功して欲しいものだ。 わたしたちは、いつもの夏のように雨の中、ミラノに帰っていった。 そしてあれから2日。 咳は出ないんだけどな~、はらみる(鼻水)が。。。。ズー。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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