カテゴリ:エクアドル人のおっとを持つと
12月24日(日)
クリスマスイブだ。なのに今年は珍しく予定がない。 というわけで、わたしたちは離婚したばかりの可哀相なエルトンをうちに呼んで3人で手巻き寿司をすることにした。 買ったばかりの石油ストーブは小型だが、なかなか活躍してくれているので暖房には問題もないし。。 午前中に家を掃除していると電話が鳴った。 ジェノバの兄いとこルイスである。(弟いとこは先日エクアドルに永久帰国した。) ルイス「クリスマスはどこかに行くのか?」 おっと「いや、今年は友達呼んでイブに夕ごはんを一緒に食べるだけだよ。」 ルイス「そうか、よかった。今夜たぶん、友達家族を連れて泊まりに行くわ。で、明日は雪を見せたいから山に連れて行ってくれ。」 おっと「え。。。うん。。いいけど。。。。何時ごろ?」 ルイス「友達にまだ聞いてみないと、行くかどうかもわからない。またあとで電話するわ。」 わたしは聞き耳をたてて会話を聞いていた。「ちょっと!なんでOKするのよ!?なんの用意もしてないじゃないの?そんなこといきなり言われてもルイスたちだけならともかく、なんで友達家族まで泊まらせなきゃいけないのよ!?」 おっと「まだ決まったわけじゃないし。。。食料の買出しだってまだ行ってないから、ルイスたちが来るなら多めに買えばいいじゃないか。」 わたし「余分な布団は1枚しかないのに、そんな大勢で来てどこに寝るのよ?ボイラーも壊れてるし、お客を泊められる状態じゃないでしょ!?それに暖冬だから、今年は山に行ったって雪はないわよ。」 おっと「あ~もう、うるさいっ!!ぼくら南米人にはどうでもいいんだ、こういうもんなんだよ。とにかくまだ来るかどうかわからないんだからギャーギャー言うな!」 まったく。。。 勝手な話だが、これが、日本人やイタリア人ならここまで怒らない。南米ヤギ男は、南米人のお客が来ると、急にわたしを召使のように扱い、まったく何もしなくなる。南米人女性もそれに慣れていて、彼らの中にいると、わたしがいかになまけものの役立たずの妻に成り下がるのだ。まあ、実際にそうといえばそうなのだけど。。。 夏に遊びに行くたびに歓待してくれるルイスの奥さんミリーには、今までの恩に報いるため、奉仕もしようが、連れてくる友達家族というのが、去年の夏、一緒にバーベキューに行ったあのがきんちょ共の家族である。 迷惑はかけられたものの、恩もない、親戚でも友達でもない。そんだけくせのある大勢を一挙にわたしひとりで接待しなければならないのだ。 出来るかっ!! こうしてせっかくのイブは朝から険悪ムードで始まったのだった。 スーパーに着いてカッカしながらカートに普段の食料を放り込んでいく。 しかし、どう考えたって人数が決まらなければそれ以上の買い物は出来ない。 ルイスはまだ電話してこない。 わたしはおっとをせっついて電話させた。「まだわからないけど、たぶん友達家族は来ないみたい。」 たぶん。。。たぶんじゃわからないよ!? やけになって友達家族も含めた人数分の大量の食べ物を買う。 当初の予定の手巻き寿司なら、海苔がまったく足りないが、ミラノの中心街ならともかく、こんな田舎町、売ってるはずもない。 わたし「おっと。。。今夜はあんたが作るんだよ。」 おっと「えええええ!!??妻が作らないと。。。」 買い物が済み、帰途に着く頃やっとルイスから「友達は来ないよ。俺たちだけもう、高速道路に乗ったから。」と電話があった。 出発してから連絡するな!! ここからわたしたちは大忙しだった。 エルトンがボイラーの故障を見てくれる、というので壊れた箇所の部品を買いに行く。そこでもうルイスから「今ミラノの環状線に乗った。ここからどう行くんだ?」と電話が。 時間がない。 このあとわたしたちはエルトンを家まで迎えに行って、もう2日浴びてないシャワーを使わせてもらう手はずだったのだ。 わたしたちはエルトンの家に直行、まずはおっとが急いで風呂場に飛び込み、わたしは気もそぞろでエルトンと会話をしながら自分の支度をはじめる。 ルイスから電話が鳴った。「どうも道を間違えたみたいだ。モンツァの中心街に迷い込んでしまった。ここからどうやっていけばいい?」 ほ~。。。よかった。道を間違えてくれて。さんざん迷っておくれ。そうすればわたしもシャワーが浴びられる。。 この後、おっとは濡れたぐしゃぐしゃの髪のままルイスを迎えに出て行き、わたしはゆっくりとシャワーを浴びて、エルトンと一緒に家に行くこととなった。 さっぱりして家に帰ると、カティちゃんが「おかえり~!」とドアを開けてくれる。ルイスとミリーがその後ろでニコニコしている。 いいなあ、こういうの。そうだよ、最初から彼らだけだったらこんなにパニくらずに済んだんだ。 ミリーは着いたばかりだというのに、もうキッチンに立って料理を始めていた。 わたし「うわ~、何してるの?今日はわたしが作るよ。」←シチュエーションでころころ態度を変えるわたし ミリー「明日のターキーの仕込みをマルちゃんに頼まれたのよ。大丈夫、これだけ」←ミリーがいると何もしなくなるおっと わたしはさっそくエプロンをつけ、つけあわせの肉じゃがの準備にかかった。 ミリー「何か手伝うことない?じゃがいもの皮むきするわよ。」 わたし「あ、じゃ、お願い。」 わたしが手巻き寿司の具になる野菜を切ろうとしていると ミリー「わたしが切るわよ。」 わたし「あ、じゃ、お願い。」 こんな調子で結局わたしは肉じゃがの煮込む作業と、ミリーが切った手巻き寿司の具をお皿に盛ることしかしなかった。自分の無能を噛み締めるひととき。_| ̄|○ ルイスたちとエルトンとの手巻き寿司パーティは、それはそれはアットホームで楽しく、和んだ。 みんなが食卓に着く前に、エルトンはボイラーを見て、おっとと2人で部品を替えたおかげで動き出し、暖房も効いて暖かい部屋になった。 エルトンはほとんど毎回我が家のパーティに参加しているので慣れたものである。 ミリーとカティちゃんは、はじめて食べる日本料理を写真に撮って、不器用に箸で具をつまみあげて笑っていた。 ルイスは「オレは肉食なんだ。」と酢メシに肉じゃがをぶっかけてモリモリ食べていた。汗 ああ、作りがいがあったというものだ。 食後はブラジル人エルトンの淹れたおいしいコロンビア産のコーヒーで閉めとなり、クリスマスイブは終った。 12月25日(月) この日、朝ゆっくり起きてみんなでパネットーネを食べ、山に向かってルイスのクルマを走らせる。 ルイスはクルマが大好きで、11月に見たクルマとまた違うクルマに乗っていた。そういえばあのクルマも夏に見たのとは違う。。。 ルイス「11月のは2週間で飽きて替えたんだ。」 どうでもいいが、毎回スポーツカータイプばかりなので、後部座席は我々女性陣だけなのに、ぎゅうぎゅうだ。 今回向かう山はレッコ湖からさほど遠くない山の小さなスキー場。前日にエルトンが「ここの山小屋で食べれるピツォッケリ(そば粉をベースにしたこってりした山のパスタ)は絶品だぞ!」と教 えてくれたので、行ったことがない新しいスキー場開拓、というのもあってウキウキしていた。 しかし、この日は12月末とは思えないぐらい天気が良くて、暖かくて、山々を見上げたところで雪など積もっていない。 わたし「雪がなくても山小屋でピツォッケリを食べてよし、としよう。」 ミリー「え、ピ。。パンツエロット?」←もういいや。 山をくねくねあがっていくと、いかにもスキー場近くにありがちな木造の可愛い家が立ち並んできて、期待が高まる。さして迷うことなく目的のスキー場のふもとに着いた。ここからはケーブルカ ーで山頂に上がるのだ。 しかし。何か変である。ケーブルカー乗り場に着くと張り紙がしてあった。「クリスマスのため運行休止。」 なんじゃっこりゃ~?クリスマスこそ、稼ぎ時なんじゃないんですか!? わたしはみんなの非難をいっせいに浴びて、山を降りることとなった。_| ̄|○ ミリー「3年前に一緒に行った山に行きましょ!」 その山とはスイスとの国境近くのマデシモというところだ。しかしそこに行くには今からこの山を降りて、レッコの町の中心に戻り、レッコ湖の反対側の果てまで行かなければならない。 時計を見る。12時半。方角的には近いから1時間半あれば、行けるか?彼らは雪を見にはるばるジェノバから来たのに、今から街に戻ったっておもしろくないだろう。 ルイスはクルマをすっ飛ばし、一路マデシモへ!! マデシモは彼らがはじめて雪を見た思い出の場所である。よほど衝撃的だったらしい。あの年はどか雪が積もって、ダムも何もかもが雪に覆われた。 エクアドルと同じで、ジェノバも雪の降らない温暖地方だから、雪が見たくて見たくて、まだ見たこともない友達家族にも見せたくて、今回のミラノ行きを決行した、というわけである。 マデシモに着いた。 営業していた。 しかし暖冬の影響で雪はあったものの、ほとんどアイスバン状態だった。 マデシモの山頂には名物の黄金のマリア像が建っていて「あれを見に行こう!」とスキーリフトのチケットを買いに行く。 チケット売り場のお姉さん「歩行者はスキーリフトには乗れませんよ。マリア像のそばはスキーシーズンは立ち入り禁止です。」 そうか。。。一同、ちょっとしょげる。わたしはここまで来てスキーが出来ないのを恨む。 わたしは雪山、ということでスキーウエアを着ていたが、何の用意もない彼らを放置してひとりで行くのもな。。。。。 おっと「そりを借りよう!そり!!」 いいアイデアだった。おっとはそりをレンタルしてきた。 スキーリフトからちょっと離れた坂に上りおっと「まずぼくが試運転するね~。やっほ~!!」と滑っては上っていく。 カティちゃん「あたしも滑りたいよう!」 おっと「待って、あともう一回。」 わたし「わたしも滑る!」 3人でそりの取り合いになった。ルイスとミリーは寒そうに震えながら見ていた。 この時点でわかったこと。 わたしはスキーをレンタルしなくて正解だった。 なぜなら、1年前に骨折した足が寒さで急激に痛くなってきて、それに伴って、そりをしているうちにそりを滑ることすら、こわくなってきたのだ。 この将来、わたしがスキーを再開できる日は来るのだろうか? わたしはそりを降り、おっととカティちゃんだけが、最初はそばでううらやましそうに見ていたイスラム系の男の子と一緒にずっと滑り続けていた。 あっという間に日が暮れてわたしたちは満足して山を降りた。 夕食はミリーが作ったエクアドル風ターキーの丸焼き。 おいしかったけど、やっぱりクミン味って馴染めないなあ。 この後全員で 「CARS」のDVDを観て疲れて寝てしまった。 翌朝、目が覚めるとルイスたちはもう荷支度をしていて「渋滞に巻き込まれたくないから。」とあっという間に去っていった。 なんだか慌しかったような?充実したような?家族親族ですごすって、イタリア的な?そんなクリスマスだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[エクアドル人のおっとを持つと] カテゴリの最新記事
|
|