テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:我が社のないしょ話
さて。いよいよロンドン出張当日。
前日の夜は、弁護士事務所から帰ってきて、すでに作り置きしてあった夕食をかきこみ、シャワーを浴びて急いでベッドに入りたかったのだが、おっとに邪魔をされた。 おっとは郵便受けに入っていたちらしをふりかざし「見て!あの店でぼくらが買ったのと同じPCが「WINDOWS VISTA」バージョンで同じ値段で出てるよ!」 そう、「WINDOWS VISTA」は2月1日からいっせいに発売になった。 この間ノートを買ったとき、「WINDOWS VISTA」がもうすぐ発売というのはわかっていたけど、発売当初はきっと高いだろうし、値段が下がるのを待つのもイヤだし、おっともせかせかしてるし。。。と悩んだ末の決断だったのに、同じ値段、というのがショックだった。 わたしはそのショックを顔に出さないよう「へえ~。。」と軽くちらしをスルーする。 だって、もう買ってしまったんだ。よくある現象だ、買ってから更にいいものが見つかるっての。 しかしおっとはしつこい。「バッカだなあ、君はPCに詳しいはずなのになんでちょっと待って買わなかったんだよ?」 プチッ。 いつもはニヒルなわたしはこの言葉に切れて大喧嘩になった。きっと明日に備えて緊張していたのかもしれない。自分もちょっとは後悔しているのに、畳み掛けるように言うな!! わたしは息を荒くしてベッドに入った。しかし腹が立って寝付けない。悶々と寝返りを打って少しでも寝ようと努力しているうちに朝の3時半になり、目覚ましが鳴ってしまった。 くっそう!一睡も出来なかった!! わたしはすでに準備済みの服に着替え、無神経にまだ寝ているおっとを蹴り起こし、小さなバッグにパスポートと財布、携帯、ボールペンだけを詰めて肩にかける。 今から飛行機に乗ってガイコクだってのに、これだけじゃ、なんか忘れているような気がしてならない。 ドアを開けるとあたりは深い霧に覆われていて1m先も見えなかった。まるで「霧のロンドン予告編」みたいだ。 いつもは田舎道でも時速100km以上でぶっ飛ばすおっともこればかりはさすがに出来ずにそろそろと動き出す。 我々はリスクをさけるためにいつもの普通の市道を避け、車しか通らない高速道路や幹線道路を使ってちょっと回り道もしたおかげで、同僚たちとの待ち合わせのミラノ中央駅に着いたのはぎりぎり空港バス発車3分前。間に合ってホッとする。 朝5時始発のバスは予想を裏切って満員。 なぜか荒くれ系ガイジンが多くて、彼ら独特の体臭を撒き散らし、CDウオークマンから普通の音量で聞こえてくる異国の音楽にあわせてみなさんでハミングしているので、早朝からハードだ。 マルペンサ空港に着くころにはすでに疲れてしまって、まだ来ていない1人の同僚を待つのにぐったりと座り込んでしまった。向かえあわせのベンチにはシチリア人の大家族が耳慣れない方言で朝からどなりあってるし、赤ちゃんは泣き出すし、これからおしゃれなロンドンに行く気があまりしない。 チェックイン終了ぎりぎりに1人の同僚が走ってきた。わたしたちはすでにあきらめてチェックインを済ませ、ゲートに向かおうとしていたのだが、彼の登場でさらに遅れ、みんなで小走りでゲートに駈けた。 パスポートコントロールは満員だった。最近飛行機を使って旅行していないのだが、テロ対策のためか?厳しくなっている。 全員コートを脱ぎ、男性はベルトまではずして金属探知機をくぐる。 それでもブザーが鳴ってしまったマッシモは靴までぬがされてX線でコントロールされる物々しさだ。 やっと解放されて、男性陣が並んでカチャカチャとズボンをたくしあげながらベルトをはめる姿はなんとも滑稽であった。 やっと飛行機内に入ることが出来た。 我々の飛行機は「Easyjet」という格安飛行機で、なんと自由席! 空港内に反して飛行機はガラガラだったので、みんなははしゃぎながら好きなように座り、わたしも真ん中ぐらいの3列の席にひとりで座っていると、その前列に韓国人のビジネスマン数人が並んで座った。 く。。。臭い。。。。。。。。。 彼らはこんな早朝からいったい何を食べてきたのだろう? 口臭がくさいのだ。 世界共通、おっさんって皆一緒。。。。。。。。。 席を移動しようかとも思ったが、露骨に失礼かな、という気持ちと、窓の外を見たかったし、うちの会社の衆で他の全部窓側は陣取られているので、しかたなしに口で息をしながら座り続けることにした。 濃霧で少し遅れて飛行機は空に飛び立った! あっという間に霧と雲を抜け、青空のひろがる上空を飛行機は進む。 マルペンサ空港から北上すぐにスイスのアルプス山脈が眼下に広がったのだが、これを見てショックを受ける。 暖冬で雪不足はわかっていたけど、地球規模で危機を感じたのだ。普段は頂上は夏でも真っ白。写真も白いけど、真っ白じゃない。 そうして地球の未来を憂えていると飲み物と食べ物を満載したカートを押してにこやかにあんまり可愛くないスッチーたちがまわってきた。(制服がオレンジとグレーのジャージだし) スッチー「COFFE?」 マテオ「イエス。」 スッチー「ドェーユウロゥ シンカンタ」 マテオ「は?」 わたし「2ユーロ50って言ってるよ!」←ガイコク訛りイタ語解読に慣れている。 マテオ「え~、有料かい!?」←格安飛行機なので機内サービスは全部有料 スッチー「ドエエウロゥ?」とわたしに振り向く。 わたし「No,ドゥエエウロ。」 スッチー「OH,ドゥエエウロ。」とわたしじゃなくてマテオにウインクして舌なめずりをした。 マテオは「日本人にイタリア語を教えてもらうイギリス人ってどうよ?」とため息をつきながらお金を払ってスタバのようなカップに入ったコーヒーを受け取った。そして一口飲むなり「いくきーと、コーヒーいる?」とわたしに押し付けてぐったりと背もたれにもたれかかる。 わたしは一口コーヒーを飲んでみた。懐かしい日本で飲むようなアメリカンコーヒーの味が広がった。「んま~いっ!!」 マテオ「。。。だからガイコクのコーヒーはイヤなんだ。」←だったら頼むな。 わたしがこうしておいしい目覚めのコーヒーを飲んでいるうちに飛行機はロンドンガトゥイック空港に到着したのである。 同僚たちとわいわい言いながら飛行機を降りたとたんにディズニーランドの人気アトラクションの前のような何重にもなった長い列が目に飛び込んできた。 パスポートコントロールである! みんなで呆然と「なんじゃこりゃっ!?」と立ち尽くす。 アンナマリア「え。。。ええ!あ、よかった。EU圏人出口は空いてるわ。」 とみんながぞろぞろとそっちに向かうときにわたしは小さく叫んだ。「ご、ごめん。。。わたしはこっちなの。待ってもらわないと。。。」 一同で「え!」と言う顔になる。 ルカ「なんで!?イタリア在住の滞在許可証持ってきたんだろ?」 わたしは真っ青になって首を横に振り「関係ないの。わたしEU国籍持ってないから。。。」 ジャンピエロ「わかった、説明はもういいからさっさと並べ!」 こうしてわたしは他の全員を1時間以上、コントロールの外で待たせるはめとなってしまったのだった。 待っている間は、怒りと、わたしはやっぱりいくらイタリアに住んでいてもEU圏外外国人である、という自分の中での再認識での情けなさと、みんなをわたしのために待たせている申し訳なさでいっぱいだった。トイレも我慢していたので、途中、後ろに並んでいた、先ほどとは別の韓国人ビジネスマンに列を見ておいてもらってトイレに駆け込んだ。 顔を真っ赤にしてフラフラとコントロールを出て行ったときにはみんなすっかり待ちくたびれていて、そばの売店のマフィンをぱくついていた。 みんな「あ~もう、だからExtracomunitaria(EU圏外人)はイヤなんだ。」 わたしは恨めしげに後をついていくしかなかった。朝食を食べてないのでお腹も空いていた。誰もマフィンをわたしに残してくれてはいない。涙 アンナマリア「社長には、あんたが遅れたわけは、『飛行機が遅れた。』って連絡しておいたから、一言でもそんな話題に振ってはダメよ。」 ありがとう、アンナマリア。 すでに用意された電車の1日券を渡され、わたしたちはロンドンのビクトリア駅に向かうローカル急行に乗りこんだ。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[我が社のないしょ話] カテゴリの最新記事
|
|