テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:我が社のないしょ話
ガトゥイック空港は格安飛行機が停まるはずれの空港なので中心地までは遠かった。おかげで「おしゃれなロンドン」とは程遠い、片田舎の景色も車窓から楽しめた。家の形を除けば、ミラノ郊外とあんまり変わらない。
車内で暑くてコートを脱ぐ。 降り立ったときにすでに気がついたのだが、ミラノより遥か北にあるはずのロンドンは、ミラノに比べて格段に暖かい。うちの近所じゃ朝の樹氷は当たり前なのに、ここはもう桃の花らしきものがあちこちでチラホラ咲いている。電車の中のひと、車窓の外を歩く人の服装を見れば、誰もコートなんて着ていない。ジャケットやスエットである。 30分ほど電車に乗ってビクトリア駅に着いた。 マテオ「あ、ここで3日間だけバイトしてた!!」と駅構内の売店をさす。(←留学経験者) ビクトリア駅はミラノのポルタガリバルデイ駅というか、ローマのテルミニ駅というか、近鉄上本町駅というか、渋谷駅というか、なんだかごちゃごちゃしてホームがたくさんあって、ひとがセカセカ歩いていて。。。のところで、ロンドン人たちが駆け上がっているエスカレーターを横にひろがってキョロキョロあたりを見渡しながら動かない超迷惑なわたしたち。 短期留学経験者のマテオのおかげでそんなごちゃごちゃした駅も迷わずに正しい地下鉄に乗り、展示会場のあるアールスコート(?)駅に着いた。 わたし「ああ、そういえば!!」 走馬灯のごとく思い出した。駅から展示会場までまるでラブホテル状態でホテルがずっと軒を連ねた通りがあるのだが、約9年前、ルミブーとこの1軒に泊まったよ! ホテル街が終った角のところで我が社長がニコニコと待っていた。 社長「霧がすごかったんだって?長時間お疲れさん。」とわたしを見る。 わたしはアンナマリアのついたウソがばれているのじゃないかと思ってどぎまぎした。 社長はみんなが揃ったのを見てさっさと歩き出す。彼はいつもながら、社内でも足早で、わたしたちは小走りで追いかけなければならない。 社長は前日も来ているので慣れたものだ。 「そこのタッチスクリーンで自分の招待ナンバーをインプットして。」 わたしたちはあたふたとかばんからナンバーを取り出し、団子になって見守っていると後から後から人が来て、どこに並ぶかわからず、わたしたちのせいで入り口が大団子状態である。というか、イタリアでよく見かける効率の悪い列の並び方状態である。 しかし、イギリス人のガードマンはイタリア人のように「さっさと中に入れ!!」などと叫ぶこともなく、あくまでもジェントルマンに「タッチスクリーンをお待ちでございますか?あちらにももう一台ございますよ?」とうやうやしく背の低いわたしに腰をかがめて言ってきたので(まさか、この田舎ものイタリア人集団のひとりとは思わなかったらしい。)、わたしは「すみません、すみません。」と慌ててインプット済みのカードを見せて中に入った。 中に入ると広い展示会場だった。社長はさっそく「青いじゅうたんのところは、お前たちに関係ないから見るな、赤いじゅうたんのところだけみなさい。では10分後にここで落ち合おう。解散。」と消えた。←超せっかち みんなは「え~、10分でなんて何も見れないよ!」と言いながらもとりあえず前進する。お菓子の見本市でもないのに、歩くたびにイベント嬢たちが、さまざまな会社のロゴ入りの景品とか、あめ玉をくれるので気がついたら、何かくれるところばかり探していた。 Mic◎osoftでは、キャンデイつかみどりだったので、夢中になってたらたちまち10分など過ぎてしまい、慌てて入り口に駈けて行く。 社長がちょっと不機嫌な顔で待っていた。わたしたちの手のキャンデイを見て「なにか収穫があったかね?」と聞くので言葉に詰まっていると「今からある会社がプレゼンテーションをしてくれるからそこに行こう。」とみんなでぞろぞろ、その会社のブースへ。 プレゼンは退屈だった。っつーか、わたしたちグラフィックチームにはまったく関係がなかったのだが、社長はこれは十二分にわたしたちのためになるものだと信じ込んでいるようだった。 ずっと立って聞いていると暑いし、脱いだコートは邪魔だし、いろんなところでもらった景品やカタログの袋は肩に食い込むし、お腹は空いたし、フラフラしてきたところで終った。 社長は「じゃ、コーヒーでも飲もうか。」 わたしたちは喜び勇んで会場内の休憩コーナーに直行する。しかし言いだしっぺの社長は消えうせてしまい、我々はとにかく座り込んだ。 わたしは出発前に「ロンドンに行ったら絶対紅茶しか飲まないぞ!」と決意していたのだが、あまりの暑さに水(イタリア産_| ̄|○)を買って一気に飲み干す。 男性陣は「腹減った。」とサンドイッチとジュース。 社長がやってきた。「みんなもう昼食は食べ終えたかね?」 ええ、これからみんなで外に英国名物料理を食べに行くんじゃないの!? わたしたちは慌てて売店に直行、各々サンドイッチ(男性は2個目)と水を買って大急ぎでほおばったのだった。(イギリスのサンドって超薄味) 社長はわたしたちが食べているにもかまわず「どのブースの何がよかったか、報告してくれないか?」という。 上司として当たり前の質問なのだが、たった10分の見学時間と、我々に関係ないハード面の展示会。(←技師のみ関係あり)声をあわせてそのことを言うとたちまち社長の機嫌が悪くなった。 「それはお前たちがちゃんと各ブースに立ち止まって説明を請わないからだ!」←だから時間がなかったんだって!英語も出来ないし、違う分野だし!! そして一揉めした後、社長は怒りながらも理解したようで技師代表のルカだけ連れて行ってしまった。 わたしたちはやっと暑い会場を脱出して会場出口でぼ~っと「この展示会、全員で来る意味なかったよなあ。」とぼやいていた。 アンナマリア「わたしはこのあとバッキンガム宮殿を是非見たいわ。」 マッシモとジャンピエロ「え~、やっぱりビッグベン見ないと。」 マテオ「ぼくはピカデリーサーカスに行きたい。」 わたし「わたしはもう歩きたくない。一人でハロッズでお買い物して午後ティー飲みに行く!」←日本人的発言 全員「いくきーと、ダメだよ、別行動しちゃ!飛行機に乗り遅れたらどうするの!?」←イタリア人的発言 このあと社長は先ほどの不機嫌もどこへやら、上機嫌でルカと会場から出てきた。そしてわたしたちを地下鉄駅まで送り「わたしも予定を変更して今日みんなと一緒に帰ることにしたから、空港のチェックインカウンターで。」と言い残して消えうせてしまった。←ゲ、社長と最後まで一緒。 時計を見れば残り時間3時間。1日って経つのが早い。 そこでどうしたかというと、マテオとわたしは完全に無視され、ロンドン在住者ならおわかりになると思うが、地下鉄ウエストミンスター駅で下車、そのあと交通機関を一切使わず、ビッグベン、観覧車を見てからSt.ジェームスパークを大きく外から回りこんで左手に見るような形でバッキンガム宮殿の正面の道をひたすら歩き、ビクトリア駅へ、その間、休憩なし。という地獄のウォーキングルートをたどったのである。 朝気持ちよく目覚めて、体力たっぷりなときならいいのだけども。。。 St.ジェームスパークの横を歩いていたときのわたしはコートをはだけ、狂人のようにふらふらと定まらない目で足だけ動かしていた。 ビクトリア駅に着いたときには日はとっぷり暮れていた。 全員「お腹空いたね、あまり時間がないから、軽くどこかで食べる?」 わたしは叫んだ。「じゃ、スタバ!ピザハットもある~!!」←どちらもイタリアに存在しない。 マテオ「スタバなんて、今朝みたいなコーヒーはごめんだよ。」 だからイタリア人同伴はイヤなんだ。 アンナマリア「とにかく空港に行きましょ。今時間を気にしながら食べるより、空港で落ち着いて食べたほうがいいわ。」 しかたがない。我々は駅構内に向かう。 しかしそれは正解だった。 ガトゥイック空港行きの電車は鈍行しかなく、着くまでに1時間近くかかった。 空港のチェックインカウンターは往きと違ってすごい人ごみ。 そこに社長が大荷物で現れ、「荷物は機内持ち込み1つのみ。」だったので、荷物を分解して各々のかばんに詰めさせられ(そのために飛行機を変更したのか?)、 化粧品はうろうろしていた空港警備員にビニール袋に入れさせられ、 パスポートコントロールでは往きよりひどい荷物チェックがあって、今度は全員靴を脱がせられ、 可哀相なアンナマリアは社長の荷物を持たされたおかげでパンパンになったリュックを怪しまれ、全部中をぶちまけさせられて、1本1本の鍵の束まで念入りにチェックさせられる始末で、 そこを全員で通過したときにはゲートの搭乗開始時間10分前だった。 我々は小走りにレストランの集まるコーナーに行き、慌ててサンドイッチと水を買い、サンドイッチにかぶりつきながら走った。 ゲートは遠くて、わたしたちはすでに飛行機に乗り始めている人の列の最後尾になんとかついて入ることが出来たのであった。 飛行機は満席。 皆バラバラに近い席に座り、最後に入ったわたしは唯一社長のとなりの真ん中の席が空いているのを発見したが、おそろしくて離れた通路側の席にちょこんと座る。 社長「いくきーと、ここに来なさい。」 わたし「う。。。トイレにすぐ立ちたいのでいいです~。」と笑ってごまかす。 この席も往き同様、はずれ席。 3つ並んだ2つはイタ公カップルがいちゃいちゃしてるし、通路を挟んだ隣の席のビジネスマンは熱があるらしく顔を真っ赤にして咳が止まらない。 やがて飛行機が地上を離れたので、疲れて寝ようとしたら機上会議がはじまった。 社長、勘弁してくれ~。 精神ぴりぴり状態で離れた席から会議に参加し、ミラノの見慣れた空港に着くと、心からホッとする。 しかし。 ジャンピエロ「いくきーと、ダッシュだ!!」 あ、そうだったそうだった。 わたしはパスポートコントロールめがけてダッシュする。 しかし、どうやらこんな夜更けには我々の飛行機の乗客しかいなかったようで、EU圏もEU圏外も関係なく列に並び、ロンドンに入ったときがウソのように簡単にミラノに入ることができたのだった。 でも、3年前、最後に海外、日本に帰省したときにはマルペンサ空港にはコントロールすらなかったんだけども。 我々はやれやれと予約していた貸切バスに乗って夜中の会社へと帰っていったのだった。 アンナマリア「今回の出張って、パスポートコントロールがメインだったような気がするわ。」 わたしは無言でうんうんとうなずいた。 ああ、何もロンドンらしいものは食べれなかったし、紅茶すら飲めなかった。お土産も買ってないどころか、夕ご飯のサンドイッチは食べながら走っている最中に落としてしまったので全部食べてない。 足は歩きすぎて、ビッコを引いてるし一応写真も撮ったけど、何撮ったかも覚えてないや。 やっぱりこれって、「遠足」じゃなくて「出張」だったんだな。 タダより高いものはない。はあ。。。。疲れた。 (写真につづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[我が社のないしょ話] カテゴリの最新記事
|
|