テーマ:子連れのお出かけ(8053)
カテゴリ:ご近所物語
こんなほとんど日記と言うより、月記になってしまったブログにいつもコメントをいただいて恐縮しております。最近お返事ができないので申し訳ないのですが、やっぱり書いてもらえるとすごくうれしいです!
*** 先週末、Ryuが夏風邪を引いてしまった。育児書には「生後6ヶ月を過ぎると母体からもらった抗体が切れて病気にかかりやすくなる。」とあったけど、まったくその通りだ。 さて「ステファノ2」とは「ステファノの物語パート2」ではなく、「ステファノ 2(ドゥエ)」の話である。 わたしには今とっさに思いつくだけでも5人、ステファノという知り合いがいる。 そのうちのひとり、わたしがミラノに着いた時から知っているステファノに言わせると「クラウン」という意味らしい。てっきり道化師かと思って「変わった意味だねえ。」と言うと「冠という意味だ。」と怒られた。 あとの2人のステファノは日本人友達の旦那さんたち。 残りの2人のうちのひとりはうちの従業員第一号の元ピアニスト。 そして最後のひとりがステファノ2(ドゥエ)。 5月からうちで働き始めた従業員2号である。(やっぱり雇うならイタリア人?)従業員2人ともステファノなので、元ピアニストは「ステファノ1(ウノ)」、新入りは「ステファノ2(ドゥエ)」と呼ぶことにした。 いくらからもうとしてもクールでなかなかからめないステファノ1に対して、ステファノ2はちょっと違うようだ。 5月1日はわたしはまだ日本にいたのでスカイプでおっとと話していた。 おっと「今日、ちょっと問題があってさ。」 わたし「どうしたの?」 おっと「新しく雇ったステファノなんだけど。。」 わたし「新しく?え、ステファノ??新しくないじゃん。」 おっと「先週、ステファノを雇うことに決めたんだ。そいつがね、初日に配達に行った、ある大きな邸宅でブザーを鳴らして門を自動で開けて貰ったら、門の中からいきなり2匹の番犬が飛び出してきて噛まれて、即救急車で運ばれたんだ。」 わたし「新しい従業員がステファノ?そんなこと全然知らなかったよ!?ちょ、ちょっとまだ話が読めない。ステファノが犬に噛まれたの?どうして??彼、犬飼っているのに。」 おっと「だから別のステファノだよ。同じ名前なんだ。そいつが犬に噛まれて1週間入院になった。」 わたし「わ~、初日からついてないひとだね。入院費用とかはその犬の飼い主が負担してくれるの?」 おっと「もちろんそうだし、社会保険も利くからね。」 わたし「ああ、よかった。」 おっと「ちっともよくないよ!1週間、彼が働かなかったらその分、収入がないわけだしぼくが困るよ。すぐにワゴン車はレンタルして、あいつの配達地区には別の人を手配して今日は大変だったよ。」 まったくだ。雇用主って大変だなと、このときはまるで他人事のようにスカイプを切った。 日本から帰ってきたある朝。Ryuをあやしているとおっとから電話があった。「今からステファノ2がそっちに行くからテーブルに置いてある書類を渡してくれる?」 そうか、来るのか。 もうひとりのステファノって、どんなひとだろう? おっさんかな? 青年かな? かっこいいかな? やぼいかな?? 一日家で子育てだけに明け暮れている主婦の想像力は果てしなく膨らみ、いそいそと擦り切れたTシャツを着替えにかかった。 しばらくして玄関のチャイムが鳴った。 覗き窓越しに制服が見えたので、同じくよそゆきに着せ替えたRyuを片手に抱いて鍵を開ける。 外にはたばこくさいヤンキーの兄ちゃんがせかせかした様子で横を向いて立っていた。 ヤンキーの兄ちゃん「あの~、取りに来たんだけど。」 わたし「え、ああ。ステファノね。書類はこれ。」と書類を片手で持ち上げようとしたが重かった。「ちょっと家の中に入って取りに来てくれる?」 ヤンキーの兄ちゃんは無表情で家に入り、すれちがいざまにRyuをチラッと見て「ヘヘッ」と片頬をゆがめて笑い、さっと書類を取ると「さいなら。」とドアも閉めずに行ってしまった。 なんだ、あいつは。。。? はじめて、しかも社長宅に来たのなら社長夫人とそのお子ちゃまに挨拶ぐらいして当たり前なんじゃないの?! その夜。 わたし「ねえ、どこからあのステファノ見つけてきたの?あんなので大丈夫なの?わたしの顔も見なかったんだよ。」 おっと「そうなの?Ryuのこと「可愛い坊っちゃんですね。」って言ってたよ?大丈夫、経験者だよ。若いから礼儀は知らないかもしれないけど、仕事は知ってるよ。」 なんだか嫌な予感がしながらも、それ以上の追及はやめた。仕事を辞めて以来、わたしはおっとの仕事に口を出さないことに決めたのだ。 だからおっとが困っても口を出さない。 それから何週間か過ぎたある日。 またおっとから電話があり「後10分でうちに着く。今夜はステファノ2がうちで夕食を食べるから。」と言ってきた。 この日おっとは仕事の帰りにわたしの友人宅から新古品のソファをもらってくる予定があったので、ステファノ2が手伝ってくれているんだ、とすぐさま思った。 なんだ、なかなかいいところがあるじゃないか。 しばらくしておっととステファノが帰宅してソファを2階に運び入れはじめたので、わたしはそれにあわせてパスタを茹で始めた。 2階からどかどかとステファノが「いや~、今日はさんざんな一日でしたよ。」と降りてくる。あいかわらずたばこ臭い男だ。そして今回は強烈な体臭がして、クラクラくる。 ソファひとつがそんなに大変?わたしはちょっとムッとしながらテーブルにパスタを並べた。 ステファノ2「奥さん、このラグーソース、おいしいですよ。」 わたし「そりゃどうも。市販の瓶詰めソースです。」 おっとがすかさず「彼はイタリア料理のシェフと同居していて口が肥えているんだ。」とフォローだか、非難だか、わからないコメントを出す。 ステファノ2「今日は一日で救急車にパトカーで事情聴取で、いろいろあってクタクタ。あ、奥さんごちそうさま。お料理がお上手ですね。」 わたし「事情聴取?人身事故でも起こしたの?」 ステファノ2「え、奥さん。よくわかりましたね!」 わたし「あははは。」 おっと「笑い事じゃないよ、ホントだよ。」 わたし「げっ!?」 おっとはわたしに携帯のカメラで撮ったワゴン車を見せた。見事に後部がへしゃげていた。 こ、この野郎。。。 ステファノ2「相手のクルマのおばさん、携帯を見ながら駐車場で発進しかけてたぼくに突っ込んできたんですよ。彼女シートベルトをしていなかったから顔面血まみれになって救急車で運ばれたんです。」 わたし「うわ~。。。でもよかった、ステファノは悪くないんだ。」 おっと「それが、おばさんはステファノが悪いと言ってるんだ。今回はすぐに警察を呼んだし、どちらが悪いかわかるまで3ヶ月かな。」 ステファノはこのあと、疲れきった顔で出て行った。可哀想なおっとはもっと疲れた顔で座り込んでしまった。 ほんの3日前、清水の舞台から飛び降りる気持ちで、もう4年は行っていない夏のバカンスに1週間行くことを決めて、旅行代金12ヶ月ローンで頭金を払い込んだばかりだ。 たとえステファノ2が正しくて、ワゴン車の修理代が支払われるとしても、前回の我が家のモンデ男くん事件から考えると1年後ぐらい。しかしワゴン車はすぐに修理しないと仕事にならない。 一応我が社には規則があって、従業員が事故を起こした場合、ワゴン車の修理代は従業員本人持ちなのだが、善悪がわかるまで今のところはおっとが自己負担しなければならない。 わたしの収入はもうないというのに、わたしたちはこれから生活できるのだろうか? そして先週末。暑い日だった。 それでも毎週お決まりの食料買出しに冷房のガンガン効いたスーパーに行かなければならないので、Ryuに少し厚着をさせて午前中でかけていたおっとの帰りを待った。 おっとが帰ってきた。ステファノ2と一緒だ。「今からクルマの販売代理店に行かなきゃいけないんだ。帰り道にスーパーに行こう。」 クルマ。。?そういえば我が家の長老モンデ男くん、1年前からエアコンも壊れて修理するより買い替え時なので、ずっとお買い得なクルマを探しているのだ。しかしいきなりだな。 連れて行かれた販売代理店はただのポンコツ屋で、2つの環状線にはさまれ、日差しとスモッグとほこりで気を失いそうな場所だった。わたしは慌てて汗だくのRyuに着せていたものを脱がせて下着だけにした。 ステファノ2は「ボス、これなんっすよ!」と、ほこりにまみれた95年製のクルマに駆け寄る。なんだ、ステファノ2のクルマか。 「かっこいいでしょ~?これが諸経費込みでたったの2000ユーロ!運送業者するのにやっぱ、クルマのひとつも持たないとね。」 プレハブ小屋の中から上半身裸のおっさんが出てきた。「今日はうちの社長が留守だからクルマは売れないよ。月曜に来てくれ。」 ステファノ2「そんな!今日はうちのボス連れで来たんだ。現金一括払いにするって前もってあんたのとこの社長と話もついてる。」 現金一括払い。。。ワゴン車の修理代も払わなきゃいけないかもしれないのに豪勢だな。 おっと「来月の給料いらないからって、前借りしてきたよ。」 そうなのか。尻の青いちんぴら野郎だな。一人ぐらしなのに生活費とかどうするの? わたしとRyuはコンクリートの壁のわずかな日陰にへばりついて見ていると、3人のちんぴらはそれから押し問答を繰り広げ、結局なんの収穫もないまますごすごと戻ってきた。 おっと「。。。スーパーに行こうか。」 スーパーに着くと、おっととステファノ2はベビーカーを押して真面目な顔でしゃべりながらあっという間にどこかの売り場に消え去ってしまった。わたしは野菜を選ぶ。寒い。。。 ベビーカーに全部Ryuの上着は乗っているけれど、おっとはちゃんとRyuに着せてくれているだろうか? 買い物が終わって、どこからともなくおっとたちが現れた。Ryuを見ると下着のままで鼻水をたらし、手足が冷たくなっていた。 わたしは頭の中で激怒、しかしこんなヤギ野郎にRyuを任せてしまったわたしが一番悪い。 Ryu...ごめんね。ひどく哀しくなった。 あれから1週間。Ryuは2日ほどひどいせきとくしゃみと鼻水で苦しんでいたが(そんな中、無理にバーゲンに連れ出したおっとにさらに激怒)、今はただのハナタレ小僧にまで回復した。 そして昨日はステファノ2の駐車違反切符が書留で届いた。(ちなみに切符も当然従業員持ち。) ちなみにステファノ1は2年ぐらいうちで働いているけど、まだ切符を切られたことないのにな。 そんなステファノ2は南イタリアプーリア州出身の21歳。 14人兄弟の2番目で、一番末っ子は17歳だそうである。そんなに短期間で次々と出産? 長男の結婚式には2000人の親戚が参加したそうだ。 さすが謎に包まれたプーリア州と、ステファノ2である。 これからネタに欠くことがない予感はするが、他人事と笑っていられないのであった。 とーちゃん、しっかりしておくれよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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