のらりくらりと・・・あくせくと・・・

朝起きてからの一時間は、子ども達を急き立てて、何かと慌ただしく過ぎていく。
この季節は特に、夜更かしをする事が多くなったせいか、子ども達の寝起きも殊更悪い。
声を荒げて叫び続けながら、「もうどうなっても知らない。自業自得よ」
と放っておとこうと思う自分と「あぁあ～、友達を待たせちゃうよ。まずいよ」
っていう自分が戦っている。
そして、相変わらずあれやこれやと叫び続けて時が過ぎる。


上の子は、下の階の同級生と入学した時からずっーと一緒に毎朝登校していく。
途中、既に卒業した女の子が一緒だったり、他の同級生達や兄弟たちが
一緒に合流して登校していた時期も有ったが、
結局ずーっと６年を通して一緒なのはこの２人。
早く準備が出来た方が、相手の家の玄関に向かうという毎日。
お陰で、忘れ物も少なくて済んだし、遅刻もしたことが無い。


２年生の下の子は、上の子が出た１０分後に家を出る。
彼は、同級生の男の子３人でマンションのロビーで
待ち合わせをして登校していく。
下の子が出る時はやっと余裕も出来て、エレベーターの前まで見送った後、
すぐにベランダに出て、登校していく彼らの姿が見えなくなるまで見送るのが私の日課。


以前は、エレベーターの前で必ずチュっとしてくれていたのが、
次第に口がほっぺに変わり、投げキッスに変わり、
今では私の投げキスに身をかわして喜んでいる。


ベランダでは、子どもが思いっきり上を見上げて振り返り、
私は身を乗り出して手を振って見送る。
入学した頃は、私の姿が見えなくなるまでずっと見上げながら
何度も振り返っていた我が子。
この頃ではお友達との会話に夢中で、一度も見上げることなく
歩き去っていくことも有るようになってきた。
あぁ、少しずつ親離れしているなと、実感する時でもある。
・・・ちょっと寂しい。


私は、このベランダから見る朝の景色が大好きだ。
小学生達が、一斉にいろんなマンションの入り口から湧き出て
皆同じ方向に向かって歩いていく。
いつも１人の子もいれば、必ず２人３人・・・６人と
登校するグループの数はだいたい決まっている。
歩くペースの速いグループ、話し込み過ぎて遅いグループ、
じゃれ合いながら入り乱れて進むグループ。
それぞれの子ども達の様子は、規則で決められたかのように毎朝同じだ。


そして通勤していくサラリーマンやＯＬ達が、
子ども達とは反対方向の地下鉄の駅に向かって一斉に歩いていく。
上から見ていると、見事なまでに美しく方向性を持った人の流れがそこにある。


通勤ラッシュになり始めた時間帯。
一筋向こうの大通りをバスが引っ切り無しに行き交い、
バス停では、プシューとドアの開閉する音と運転手さんのアナウンスする声が、
朝の空気の中で響き渡る。


陽射しも夏のギラギラしたものとは違って、
低いところから斜めに差し込み、少し黄色味をおびたその色は、
西日にも似てはいるが、なんだかとっても暖かくやわらかい。
風も爽やかで心地良く、今朝は絶好の秋晴れ。
そう遠くも無く見える山々も　近くの大きな公園の緑も
紅葉には程遠いけれど、鈍い緑色をして秋を感じさせてくれる。


毎日少しずつ変わりゆく景色と、毎日変わらない人の流れ。


この季節、子どもの姿が見えなくなった後も、ぼーっとベランダで
景色を眺めて過ごす時間が長くなる。
慌ただしく送り出した後の、ホッと静かに流れるそのひと時。
今一番幸せを感じる時間かな。