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カテゴリ:サンチャゴ巡礼2004
■第11日 アルズア~モンテ・ド・ゴソ 35km 10月7日
アルズアを出てすぐ、サンチャゴまで「36km」という標識を見る。 空に星が見えない。 きょうも天気はよくなさそうだ。 野を越え、畑のわきを通り、森のなかを抜ける。 道は平坦で、快調にとばす。 きょうはアルカまでの19kmでいいと考えていた。 しかしどこがアルカなのかはっきりしないまま、標識がサンチャゴまで20kmを切ったことを告げる。 まだ昼前で、身体もまったく疲れを感じていない。 ならばモンテ・ド・ゴソをめざそう。 たびたび出会うブラジル人のおじさんに追いついた。 わたしを見かけるたびに「◎▲☆×!(わたしの名前) アリガト! サヨナラ!」と声をかけてくれる陽気なおじさんだ。 小一時間ほど話しながら歩く。 62歳、ボルト・アレグロで医師をしているという。 「きょうサンチャゴまで行けるかもしれない。 カミーノでいちばん楽な区間だね」 同感だ。 終わりが近く、気分が高揚していることもあるのだろう。 アリさんといった。 本当はアリステなんとかという名前らしいが、「アリでいいよ。アリガトのアリと同じ」。 「わたしはカトリックに生まれ、カトリックとして育った。 けれども宗教的な理由だけでカミーノを歩いているわけではない。 去年は仕事が忙しかった。 それで仕事を断ち、エネルギーを得ようとカミーノへ来たんだよ」 「君やわたしのように大都会で働いている者には、ふだんのルーティンから外れることに意味がある」 とアリさんはいう。 そしてつけ加えた。 「スペインには観光でも来たことがある。 しかしカミーノを歩くことのほうがはるかにおもしろい。 だって世界中からやってくる巡礼の人びとと出会い、話をする機会があるのだからね。 観光で来てもそんな体験はできないよ」 まったく同感だ。 それに出会うのは各国の巡礼者だけではない。 自分にも出会える。 それがカミーノのすばらしいところだ。 アリさんは11日にマドリードを発ってブラジルに帰る。 「13日から仕事だよ。 患者が待ってるからね」 「わたしは10日にマドリードから東京に発ち、12日から仕事です」 「東京まで14時間? 信じられんな」 「アリさん、いまの気分は? 「ハッピーだね!」 道が上りにかかったところで「先に行っていいよ」とアリさん。 そろそろひとりで歩きたいと思っていたところだった。 いつの間にか空港の横を歩いた。 木の間から飛行機の機体が見えてびっくりする。 サンチャゴ空港だ。 すでに市内まで10kmない。 道はほとんど下り。 ラバコーリャを出たところで村上くんを発見。 モンテ・ド・ゴソまでいっしょに歩く。 巨大な研修センターの一画がモンテ・ド・ゴソの巡礼宿として使われていた。 隣接する丘に巡礼者の像がある。 その像が手を上げている方向にサンチャゴの大聖堂が見えるはず…。 夕方のうすぐもりのなか、3本の尖塔がうっすらとかすんでいた。 ▲アリさん。 ▲モンテ・ド・ゴソの巡礼者像。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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