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April 30, 2005
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小説を書いてみました。少し長いですが
よかったら読んでみて下さい。



「今年は2回桜が見られてラッキー」
盛岡に帰ってくるなり奥居くんは私にそう言った。
あいかわらず女みたいな事を口にするやつだ。
「ゴールデンウィークなんて稼ぎ時によく帰って来れたね」
改札口を抜けて並んで歩く。
「ずうっと休んでないから、たまにはさー」
上京して8年、奥居くんはお店で指名ナンバーワンの
カリスマ美容師になっていた。
雑誌の取材もよく受けるらしい。
ルックスもセンスもそこそこよいので一見モテる。
でも残念ながらしゃべるとがっかりしてしまう・・・
声が高音なのだ。裏返りそうなくらい。
世間でワールドカップ熱が凄かった頃、友達が
「ベッカムってかっこいいけど声がねえ」
と言っているのを聞いてすぐさま奥居くんを思い出した。
『かっこいいけど声がヘン』
一言で奥居くんを表すならば皆、こう言うに違いない。
そして繊細な性格さゆえ、言うこともみみっちく
せっかくつき合った女にもすぐに振られてしまう。
例えば、「言わなくても気持ちを察して欲しい」とか
「あいつにとって俺は何?」とか。または
「ピアスの穴があるのにピアスをしていないのは許せない」とか
どーでもいいようなことを相手にぶつける。
奥居くんがかっこいいのにもてない原因は
本当は声のせいではなくこの女々しい性格かもしれない。

「俺さあ、ずっと冷麺食いたかったんだよねー、
あっちでスタッフたちと焼肉行って、冷麺食べたけど
やっぱ違うンだよなあ」
「ふーん、おいしくなかったの?んじゃ、 ぴょんぴょん舎に行きますか」
「おっし」

奥居くんと私は専門学校からのつき合いだ。
卒業して奥居くんは東京で美容師、私は地元でネイルの仕事をしている。
ファッションのこと、好きな音楽、読む本の傾向など、なぜか
奥居くんとは気が合って、いろんな話しをしてきた。
でも恋愛感情がお互い芽生えるわけでもなく
奥居くんが帰ってくると一緒にご飯を食べたり
仕事の愚痴を言い合い、時には恋愛相談などしている。
あまりにも女友達のようで一度、オカマなの?と聞いたら
本気でムッとされた。
好きになるのは毎回女なのでそーいうわけでもないらしい。


ぴょんぴょん舎の駐車場は他県ナンバーの車もたくさん列び
入り口にも家族連れやカップル、グループで溢れている。
「あいかわらず混んでんなあ」
「最近ここの冷麺、ガイドブックにも載ってるみたいよ」
「ふーん、そういえばさ、昔みんなで裏の広場で貸しきりパーティ
したよなー」
「うん、した、した。なつかしーねー」
お店の人がおしぼりと水を持ってきた。
「冷麺、2つ。辛み、別で」
ちょっとひっくり返りそうな声で奥居くんが言う。
店員が奥居くんの容貌と声のギャップに少し動揺したような気がしたが
オーダーを繰り返し、すぐに行ってしまった。
辛さには数段階あり、『辛み別』は違う器にキムチが入ってきて
好きな量を冷麺に入れることができる。
「激辛ってどんくらい辛いかな?」
「さあ、食ったことねえ」
正面から見る奥居くんはやっぱりかっこいい。
「ねえ、『クロちゃんです』って言って」
「はあ?」
「ほら、いるじゃん、安田大サーカスのクロちゃん、マネしてよ」
「けっ、やだね」
笑いながら奥居くんは丸めたストローの袋を私に投げつけた。そして
私も投げ返し、笑った。学生に戻ったみたいに楽しいと思った。

運ばれてきた冷麺はすっきりとした透明のスープに半透明のツルツル麺が
渦巻き型に盛り上げられている。トッピングはゆで卵、きゅうり、白ねぎ、
スイカ、味付け肉、そして大根とキャベツのキムチ。
ひんやりとしたスープを一口飲むとその透明のスープは私を裏切り
コクと旨味を舌に残す。麺はコシと弾力があり、つるりとのどを通る。
辛いのがそんなに得意ではないのでスプーンで少しキムチをすくい、
冷麺のスープに泳がせ、麺にからめて食べる。
「あ、酢もいれなきゃ」
「うめー、うめー、やっぱいいよなあ」
わたしが残したキムチも一緒に自分の噐に入れて奥居くんは
満足そうにつるつると冷麺を食べていた。

「俺さあ、長崎に行こうかと思ってんだよね」
「えっ、長崎?」
たばこの煙りをふうっと吐いた奥居くんの横顔を見つめた。
「うん、世話になった先輩が向こうで店出して、誘われてるんだ、
勉強もしたいし、もっとその人がやることにかかわりたくてさ」
奥居くんが長崎??
「なんか、びっくりだけど・・・。じゃあ、今より会わなくなっちゃうね」
そう言ってすぐ私は可笑しくなった。
今だって、奥居くんとは1年にいっぺん会うか、会わないかなのに。
「来月から行くから、こっちにもしばらく戻れないと思って」
「じゃあ、冷麺も食べおさめだね」
「だね、よかった、みちるにも会えてさ」
きっと会わない期間は長崎に行っても東京にいても変わらないのに
距離がせつなくさせる。なぜなんだろう。
「そうだ、あの裏の広場に行ってみようーよ」
建物の裏はパーティー用の野外テーブルがあり、緑に囲まれた
ちょっとした庭になっている。
「おお、桜満開。前からあったっけ?」
「ここで打ち上げしたときは春じゃなかったから気づかなかったんだよ」
ふと見ると奥居くんは桜の花をひとつ取っていた。
「子どもの頃とか桜の絵を描くとさ、花びらって5枚しか描かないじゃん?」
うん、確かに...。桜って5枚じゃないの?あれ??
「種類によってはちゃんと見るとひとつの花にいっぱい
花びらついてるでしょ、重なって。桜の木は見るけど、
花ひとつ、ひとつってあんまし見てねーじゃん、
ほんとはこんなにきれいなんだなー、なーんてねえ」
ひとりで照れたように少し高い声で奥居くんが言った。
私はそんな、やっぱり女みたいな感性がすごく好きだと思った。
「ねえ、ねえ、奥居くん、髪切ってよ、はさみ持ってきたんでしょ」
「はあ?どこで」
「ここでよ、ねっ、いいじゃん。桜の陰だと誰にも見られないし」
「まじでえ?ま、すくくらいならいいかっ、みちるの今の髪ヘンだし」
こっそりと野外用テーブルセットから椅子を拝借し、
桜の木の陰においてすわった。
奥居くんのすっきりとのびた長い指がわたしの髪をさらりとなでる。
「前髪切るから、ちょっと目つぶって」
シャキシャキという音を聞きながら、シザーハンズって映画あったなと思った。
「ねえ、奥居くん、冷麺食べたくなったらいつでも送ってあげるよ」
「うん、そんときはよろしく」
「でさ、あたしに長崎チャンポン、送ってよ」
「・・・はいよ」
「ねえ、『クロちゃんです』って言って」
「いやだね」

奥居くんのはさみの音が心地よく胸にひびき
いつか長崎に遊びに行ってもいいかなあと
なんとなく思った。

                    


他のお店の冷麺も紹介します♪

春は野菜がおいしいから♪盛岡冷麺具材付4食にドレッシングのおまけつき!
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ちょこっと食べてみたい!やまなか家の冷麺とキムチのおためしセット
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こんなセットが欲しかった!!冷麺・そば冷麺2つの味が楽しめる♪
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Last updated  May 3, 2005 08:04:44 PM
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