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私が家の中で愛用しているスリッパは トマトみたいな赤い色で、少し大きくて 履きやすくてお気に入りのひとつだ。 このスリッパはわたしのパーソナルなものの つもりなのだが、最近仕事から帰ってくると 義母がこれを履いて台所に立っていたりする。 義母は私の家の近所に住んでいて 子どもが学校から帰る頃にうちに来て、私が帰宅するまで 子どもたちを見てくれている。 勤務時間が延びて遅く帰ったときは ご飯を作ってくれたりするので とても有り難いけど マイスリッパを履かれてしまったことは なんだか歯ブラシを使われたような、 箸を使われたような、 少しだけ不快な気分。 「やだ~、お義母さん、それわたしのスリッパー~、 別の履いてよ」 と簡単に言えばいいんだけど そんなにフレンドリーな仲でもない。 そんなこと言ってスリッパなんてどれだっていいじゃない、と 思われたらやだなとか、気まずくなったらやだなとか、 小心者なのでいろいろ考えて結局言えずじまい。 お義母さんが 「あら、さとこさんのスリッパだったわね、返すわ」 と気づくのを待っていたが どうもそこのところはまったく気づかない様子だ。 いつも私が履いているのを見ているのに なんとも思わないのかな? 私だったら他人のもの履きたくないけど。 他にもスリッパたくさんあるのに。 義母ってそういうところあまりこだわらない、 悪くいえばちょっと無神経。 そのまま一緒にダイニングでご飯を食べたが 義母が赤いスリッパを履いたまま、私は何も履かずに 冷たい床の感触を足で味わい、 にこやかに団欒しながらも 心の中では 「スリッパ、返せー」と叫んでいた。 そして思ったのだ。 そうよ、義母専用のスリッパをプレゼントすればいいのだ! 今日早速仕事帰りにデパートへ行き 義母が好みそうなスリッパを購入。 私的にはスリッパにしてはいい値段。 今の季節に合った、ちょっとふわふわと暖かそうな 黒の生地にエレガントな花の刺繍が織り込んでいるもの。 クリスマス仕様の包装にしてもらったので 義母には少し早いクリスマスプレゼントだ。 家へ帰ると今日も義母は私のスリッパを履いている。 すかさず、 「お義母さーん、プレゼントあるんだー。開けてみて」と渡すと 「えー、なになに?」 驚きながら包みを開けた義母は 「あらあ、素敵なスリッパだこと!さとこさん、 お金使わせちゃってえ」 とナイス感触! 「いいの、いいの、お義母さん用に買ったから、履いて♪」 いいぞ、いいぞ、今すぐこっちに履き替えろ。 「よかったわあ、家のスリッパ、7年も使って 擦り切れてきたとこだったからちょうどよかったー。 もらって帰るねえ、さとこさん、ありがとう」 えっ・・・まって、これはここで履くスリッパだってば! 持って帰っちゃだめだってば! でも私が発した言葉は 「お義母さん、いつも来てくれるからここで 履けばいいと思ったんだけど、でも 家に持っていってもいいよ、どっちでも・・・」 やだー、わたしのバカ、何言ってるの。 「んだねー、もらって帰るわ」 あ~ああ、なんてこった、 わたしってなんてバカバカバカ・・・。 そしてとうとう赤いスリッパは最後まで脱がず、 ご飯を食べ終わるとプレゼントのスリッパを持って 帰って行った。 プレゼント作戦失敗に終わる・・・、さとこ、撃沈。 義母は赤いスリッパ、わりと気に入ってるんではないだろうか? というか、さんざん義母に履かれたスリッパ、 わたし、もう履く気がしない。 しょうがない、もうこのスリッパは 義母に譲ろう。 そしてわたしは自分用に 明日スリッパ買いに行くことにしよう。 うんと、かわいいやつ、 少し高くても絶対気に入ったものを買うんだもんね。 (完) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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