隔週コラム　　　　　　　KUNI

　　　
　　引越し

　春の陽気は、どうしてか引越し心を擽る。
春の引越しは新しい物語が始るような高揚感がある。

オーストラリアに住んでいた頃、敷金・礼金なんて
ないし、家賃に家具付き・光熱費が含まれているから、
海の近く、街、山と気になるエリアに次々と気軽に
引越ししていた。
家探しも、不動産屋が仲介している事は少なく、
新聞やスーパーの掲示板に張り出された大家の
連絡先を頼りに、直接交渉でいたって簡単に見つかった。
ソファはこのぐらいのサイズがいいとかバスタブは、
キッチンはなど色々な発見があって楽しかった。
　
　旅している時なんてのは、引越しのペースはもっと短い。
この国のこの街に一度は住みたいと思う場所を
1週間づつぐらいのペースで引越して歩くような気分だ。
本で読んだ城下町・美しい景色の丘・森の中・
小さな島のバンガローと自由気ままに引越して周る。
新しい場所に引っ越すと隣人や住民も気になる。
隣人の国籍も期間も年齢もバラバラ、どのようにして
流れ着いたのかその人の物語を聞けたら、
ドラマチックに面白い。
引越しはまさに新しい旅の始まりだ。