Ａｒｔ ｏｆ Ｌｉｆｅ研究所 プレイバックシアター　　　　　　

毎月の定期パフォーマンス、
同じ会場なのに、
その都度、雰囲気は、全く異なる。

そこに集う人たちで、
場は構成されていく。

おなじみの観客や、
久しぶりに会う懐かしい友人、
知っている人が全くいない一見さんまで、
共通項がないかに見える観客たち。。

しかし、そんなはずは、やっぱりない。
プレイバックシアターという場に来る人、
この日この時間、
同じ場所に居るという、奇跡のような瞬間。
つながっていないはずはない。

台本のない心理即興劇、プレイバックシアター。
パフォーマンスのテーマも決めていないのに、
なぜだか、その日、必要なストーリーが語られていく。

個人的なストーリーが、その場の人にとって、
とても重要な意味を持つ。

その不思議さを、何度も味わうたびに、
プレイバックシアターの魅力を確認する。
コミュニティーにとって、
必要とされているプレイバックシアターを。

一人目のテラーは、５人も子育てしている、きれいなお母さん。
今夜、ここに来る直前のことで、息子にありがとうと言いたいと、
長男への感謝の言葉が、語られた。
第１子の子育ては、新米ママにとって、常に不安や苦悩に満ちている。
その中で、わが子の症状から、そのサインを受け取り、
たくさんの学びがあったという。
すでに成人した頼りになる長男への、オマージュ。

二人目は、わずか２ヶ月体内に居た、
まだ見ぬ子への感謝のストーリー。
母体から去って初めて、その子の存在を大きく感じる母親。
初めての妊娠、流産。
夢か現か、その子どもが夫の姿を借りて、知らせてくれた、大事なお別れの日。
今やっと、次の出産を考えられるくらいに、
母体の状態も安定してきたという。
本当に育てられるんだろかと不安に満ちた、初めての妊娠から、
今ようやく、母親としての準備が整い始めた。
次の妊娠を待ちわびるくらいに。

最後は、
長い間恐れていた、自分の身体への不安が、
赤いガーネットという石の力を借りて、
すっかり消え去ったというストーリー。
絶望的なまでに、自信のないぼろぼろの状態だったというのに、
わが子との楽しい時間を過ごしたい一身で、
一縷の望みと共に、光が見えた。

涙が続くストーリーから、
力強い、生きるエネルギーに満ちたストーリーへと、
ドラマティックに変容していった。

最初のストーリーが、長い年月かけて、今の感謝を語り、
次が２ヶ月前の感謝、そして最後は、先週の話だった。

こうして、今この瞬間へとつながっていく。

過去の出来事を語りながら、
今この瞬間の、自分の気持ちに気づいていく。

語ることで、観ることで、
今ここにいることの、存在の価値や重要性を感じ、
明日へと生きていくのだ。

明日を生きる子どもたちから、
たくさんのギフトを受け取ると、
わたしたちの明日が明るくなるようだ。

言葉に出来ない想いは、あえて言語化することもない。
溢れる想いを、ただ、静かにハートに収めて、
パフォーマンスのあとは、静かに感謝と共にいよう。

会場に足を運んでくれた観客の皆さんと、
語ってくれたテラーたち、一緒に上演した仲間たちに感謝しながら。

こんな日は、母と語りたくなる。
遅い時間だけれど、一緒に食事しながら、ありがとう。