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カテゴリ:日々徒然
まだ二十代だった頃、仕事で襟裳岬方面に車で出かけたことがありました。時期は、ちょうど今頃の2月前半。 午後遅くに襟裳町の旅館に到着。その日は仕事もなく、そのまま旅館で寛いでいれば良かったのですが、ふと、せっかくこんな所まで来たのだから襟裳岬を見ておこうと思い立ちました。 外は次第に雪と風が強くなっていて、しかも、陽も沈んで暗くなりかかっていました。でも、何か抗えない力に押されるように、車に乗って出発したのです。 横殴りの雪がビュンビュン吹きつける夕闇の視界のなか、濃紺の海の真ん中の一本道を進み、岬の先端の広場まで来ました。 車から降りると、物凄い風雪がゴーッ、ゴーッと吹き付ける音と、鬼のようにゴワゴワした断崖の下で真っ黒な海の荒々しい波がドカ~ン、ドカ~ンと打ちつける音だけがしていました。それに、灯台の光が棒のようにバサッ、バサッと回転していて、その音も聞こえそうでした。 吹き付けてくる雪で真っ白になりながら、断崖の下を覗き込んだり、荒れる海を眺めて立ちつくしていました。他には人っこひとりいません。恐怖と言おうか戦慄と言おうか、とにかく飛んで帰りたいのを我慢して、自然の猛威を感じていました。 そうしている内に、暗黒の宇宙の中心にたった独りで浮かんでいるような気持ちがしてきました。おまけに、その宇宙の大きさが、トテツモナイくらい巨大なようにもピンポン玉くらい小さいようにも感じられて、大小の感覚が麻痺したような気がして、発狂してしまうような恐怖に慄きました。 そうして、数十分、身体が冷えきって、もう限界というところで車に乗って帰りました。 旅館に着いて、食事をして風呂に入って布団の中で暖まっていると、人間の世界に戻ってきた安心感でホッとしましたが、心の中は、やっぱり無理してでも行って良かったという思いと、何か宇宙的なものに触れたような不思議な満足感と嬉しさの余韻が続いていました(笑)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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