ミミズの力・植物の力
5月に入った。連休の谷間の1,2日、東京は雨の予報がでていた。その雨の少しのはれ間をみはからって、夏秋の花の地植えのために、ほんの一部だが庭土の入れ替えをした。 我家の庭は土質が悪く、2,30cmも掘ると粘土質の層になる。水はけが悪いので、植える品種はおのずと限定される。それを幾分でも改良しようと、50~70cmほどまで掘り下げて、その土を全部入れ替えようというわけだ。3年前に入れ替えたところは、ミミズをいれておいた。ミミズたちが土をふかふかに変え、糞も分解するので、植物の成育にはとても良い黒土になる。ミミズの生存は、危険な害毒が混入していないということの証明でもある。 ミミズ樣様だ。しかしそれとて時間もかかり、面積も限られる。きょうは、園芸店で購入した腐葉土と赤玉土との混合を使用した。もちろんミミズくんにも新居に入ってもらった。 掘り返した土は発泡スチロールの箱に保存。天気のよいときに陽に晒してさらさらに乾燥・消毒し、石灰や堆肥を混ぜて再生土として使用する。 夕方6時までの作業だった。 もうずいぶん昔、母がすぐ上の姉(私の伯母)から紫蘭(シラン)を株分けしてもらってきた。それから間もなく伯母は亡くなった。母は鉢植えにして大切にしていたのだが、今の私の家に移したらいつのまにか消滅してしまった。母は何も言わなかったけれど、おそらく大変残念に思ったにちがいない。使っていた鉢は土をいれたまま、空いた鉢とともに庭の片隅に放置してあった。 一昨日の日曜日に園芸店から買ってきたものを植え付けしていて、その放置してあった鉢のなかに丈20cmばかりの葉が3本、まっすぐ元気に伸びているのに気がついた。 「あら? これ、紫蘭だわ」と母が言った。そして片隅から引出し、日射しのなかに置いた。「消えてから5年以上になるのに・・・!」 もしそれが紫蘭だとすると、この長い年月、いったいどうしていたのだろう。隠忍の時がすぎるのをジッと待っていたのだろうか。 私はまたもや「植物力」を感じながら、黙って植え付け作業をつづけていたのだった。