A氏邸ホーム・パーティー
昨日金曜日の夜は、元ヨーロッパの某王国大使館スタッフで現在は同国の照明器具デザイン社日本支社員であるA氏のホーム・パーティーに招かれ、楽しくすごした。お嬢さんの16歳のお誕生日だった。A氏御一家とはかれこれ17年ほどのおつきあい。能楽師・梅若猶彦氏とも共通の友人である。 お嬢さんが生まれて間もなく、私は可愛い赤ちゃんの彼女を抱っこしている。その赤ちゃんがもう16歳、「私の背より大きいのですよ」とお父様のA氏はおっしゃった。御夫妻にお目にかかるのはひさしぶりであった。 御一家をいれて総勢15人。半分は日本人、半分は外国の方。日本語、英語、フランス語、アラビア語のにぎやかなパーティーとなった。 A夫人の故国はレバノンである。ディナーは、お友達と二日がかりでおつくりになったというレバノン料理の数々。私はレバノン料理が大好き、レバノン産ワインもすばらしいのである。以前、レバノン大使邸に招かれたときは、口当たりの良いアラク(松ヤニで香り付けした透明な酒)をぐいぐいやって、帰りの足許がふらふらした。ついそのときのことが思い出され、おいしいワインも飲み過ぎないようにと、私は内心に注意、注意。 ところが大失態をやらかした。夫人が「これ試してごらんになります?」とテーブルの上のオードブル皿に飾りのように盛られた赤唐辛子を差し出した。A氏がすかさず、「どうしてこんなふうに丸のまま置いておくの。山田さんやめた方がいいですよ」。 しかしその顔は笑っているので、私は一本を摘んでほんの少し噛んでみた。赤唐辛子のピクルスだった。 「おいしいですよ」 「すごく辛いでしょう?」 「まあ、辛いですけど、このくらいは大丈夫」 で、私は残り半分を取り皿に置いて、料理を口に運び、ワイングラスを傾けた。そして、しばらくしてから、再び赤唐辛子のピクルスを食べた。 「ウッ、ウッ、ウッ!!!」 ナプキンで口許を押さえて、あわてて立ち上がった。「ジチュレイジマズ(失礼します)」 キッチンに駆け込み、その場に屈みこんだ。夫人が背中をさすり、それから製氷機から氷を出して、「これを口に・・・」 辛いのなんのって、ヒーヒーゲボゲボ、口の中が大火事状態だった。 テーブルに戻った私の前に、夫人は細長い一本のビンを置いて、「ピリピリ」と言った。 ラベルには、「Piri Piri」と書いてある。赤唐辛子のスペイン産のピクルスである。日本語で辛いことの表現をピリピリすると言うが、スペイン語でも同じ発音をするのだろうか。イヤー、勉強になりました。「I'm so sory」 私は涙目で言いながら、ビンを手にとってつくづくとラベルに書いてあることを読んだ。 出席者はさまざまな分野で御活躍で、国連海外派遣医師団としてエジプトから帰国されたばかりの女医、音楽セラピスト、詩人、国連機関の首席弁務官、能楽師、画家、レバノン料理のクキング・マスター、etc. 会話ははずみ、時のたつのも忘れ、・・・私は本当に帰宅時間を忘れてしまった。 第二の失態! 数人とともに泊めていただくことに。 そうなるとまたワイワイガヤガヤ。私は若き詩人の処女出版詩集を見せていただきながら、素直な詩心に打たれて、ついついそのなかの1篇を朗読。詩人の母上の「ヤマダサ~ン、スゴイ、スゴイ」の喝采に乗せられて、また1篇。今度は作者自身の「私の書いているときの呼吸とおんなじだワー! ヤマダさん、ビックリ!」の言葉に乗せられてまた1篇。つごう3篇の朗読を披露。 夜が白々あけるころは、アラビック・コーヒーを飲みながら、コーヒー占いを伝授してもらう。この占い、デミタス・カップの底に残ったコーヒーのシミによって、イメージ連想をしてゆくもの。レオナルド・ダ・ヴィンチが天井や壁のシミにさまざまなイメージを見い出し、それを一種の絵画修行にしたと書いているのと似ている。魚のイメージがお金を意味するなど、基本的な解釈があるようだが、私はそのあたりを詳しく知るにはいたらなかった。ともかく、私のカップを占いのマスター(あるいはリーダーと言うべきか)が見て、その後に私自身が見て浮んでくるイメージを報告し、マスターと一致不一致を調べるのである。 「オモシロイ、オモシロイ、ヤマダサン ト ワタシ ノ イメージ ミンナ オナジニナル ワ! Yamada san is thinking about a lady from two ways, ・・・this way and this way, and these ways goto the lady」 ウフフ、それはないでしょう、マスター、ウフフ。 たのしく徹夜で会話して、レバノン風ブレクファストをいただいて、なんとやっと午前7時にA氏邸を辞去したのである。 I very appreciate delicious dinner and breafast, and also kindly attetion, Mr.& Mrs.A.