東京薬科大学学園祭へ行く
きょうは東京薬科大学の学園祭に行く。文化の日をはさんで、ここ4,5年、私の恒例になったお出かけイヴェント。薬草園を訪ねるのと、同大教授の最新の研究に関するセミナーに参加するのが楽しみなのである。 1時間ほど早めに到着したので、まず薬草園を巡る。面積41,000平方メートルに、野生植物約500種、栽培植物約2,000種。ほかに、大学全体を樹木園にするという考えで、キャンパスのいたるところに各種の樹木が植えられている。もちろん、すべての樹木に名板が添えてある。 今年は、学生たちが製作したパンフレットが、写真入りになって、その分、掲載している種類は少なめだが、植物図鑑に匹敵する丁寧な解説が嬉しい。9月頃から写真撮影を始めていたようだ。受付で薬草クイズに答えたら、全問正解で、御褒美に手作りクッキーを2枚もらった。2枚というのがイイじゃないですか、可愛らしくて。お互いに顔を見合わせて、イタズラっぽく微笑。 そして、これも毎年のこと、球根をプレゼントしてもらった。フリージア・スザンヌとダッチアイリス・アポロの2種。さらに、乾燥レモングラスとローリエも。ハーブティーとスープのために。 古本市も覗く。5册購入。●外務省編『終戦史録』1巻、2巻。(1977年、北洋社) 帯に、次のようにある。 〈「・・・力及ばずしてついに戦争になってしまったが、われわれは、この戦争を日本にもっとも有利な機会に切り上げなければならない。外務省員は他の用務を放擲しても、このことの研究と準備に力を尽くしてもらいたい」 『終戦史録』は、このときの東郷外相訓示に端を発する日本の終戦への努力の跡を、外務省が収集したおびただしい史料と、生存関係者の証言とによって明らかにしようとした大冊である。〉 ただし、購入本は再刊本で、初刊は全1巻の文字通り大冊だった。再刊はそれを6分冊にしている。したがって、私がきょう購入したのは、全体の3分の1ということになる。全巻は見つからなかったのだ。残念。●黒屋政彦・冨田軍二編『英語科学論文用語辞典』(1986年、朝倉書店) 英語科学論文に多く用いられる語の、科学論文における活用法に重点をおいた英語辞典。 科学論文を書くために、用語の解説がきわめて実践的である。普通の英和辞典・英英辞典にはみられない。文例も、不可の例と正しい例とを掲げている。 一例をとって引用してみよう。 〈NAME〉の名詞形と動詞形とを例示したのち、【人名・敬称・肩書の書き方について】として、次のような説明を付している。長くなるが、おもしろいので全文引用してみる。 「Robert A.Taftを文献の所ではR.A.Taftと書く(R.Taftとは略さない)。手紙の宛名では略さずに書くのが礼儀正しい。論文中に他人の名前を書く場合、所属や、称号と所属などを示すof-phraseを付ける時はDr. S.Yamada, of B University, states that・・・のようにコンマで区切るのが普通。特にof-phraseの長い時は必らず切らないと、特に密接な関係があることを強調するような場合になる。敬称・肩書き・学位・称号の中には名前の前に付けるものと後に付けるものとあり、また、本文の中でも略字を用いるものとそうでないものとある。 名前の前に置き、本文でも略字を使うもの:Dr., Messrs., Mme., Mr., Mrs., Prof.(手紙の書き出しの「Dear・・・」の所では Prof.とせずProfessorとする。Mr.やDr.は略字を使う)。 名前の後に置き、本文中でも略字を使うもの:Esq., Jr., Sr., B.A., B.S., E.E., Ph.D., M.D. 論文第一ページに書く著者名には、学問または職業免許の称号は、寄稿規定その他で特別必要のある場合以外には付けない。付ける場合には名詞の後。」 〈NAME〉を引いただけで、これだけの説明をしている辞典は、私はいままで知らない。おもしろい英語辞典である。●西山松之助『花 ― 美への行動と日本文化』(1978年、NHKブックス)●ノヴァーリス『日記・花粉』(1970年、現代思潮社、古典文庫) 現代思潮社の懐かしい古典文庫の一冊である。私にとってはドイツ・ロマン派はもはや読む必要はないのだが、『青い花』も所蔵していることだし、奥付を見れば初版である。つい古典文庫の懐かしさにひかれて買った。パラパラと拾い読みすると、婚約者ゾフィーを亡くしたノヴァーリス、朝方しきりに情慾のきざしを訴えている。彼のロマンチズムの孤独は、切実な情慾の昇華であったと知れば、人間くさくて面白い。 以上、1册150円均一で、合計750円也。 学生たちが作る「塩焼そば」と「大判焼」で腹ごしらえをして、いざ、セミナーへ。 薬学部病態生化学教室・野水基義教授による『細胞をコントロールする再生医療やがん治療』、および、生命科学部環境ストレス生理学教室・高橋勇二教授による『地球温暖化問題 ― 今、すべきこと、してはいけないこと』。 しかし、これについては明日とあさってとに回すことにする。 楽しい一日であった。