看護人の気の抜けない季節
東京は終日の雨。 老母の介護ベッドのかたわらに設置してある湿度計は、もうしぶんない湿度である。しかし気温はやや肌寒い。 一日一日の寒暖の差がはげしいときの、寝たきり老人の体調管理は、なかなか厄介なものである。温め過ぎず、冷やし過ぎず。摂取する水分量と小水の量とがバランスがとれているかどうか、データをとって観察する必要がある。 健康な若者は、通常まったく気にもとめないであろうが、私は老母の看護をするようになって、人体の生理システムの精妙さにほとほと感心している。 摂取した水分量が、体内を潤し(つまりは消費し)、余分になった量を小水として排出する。それがきっちり数字に出て来る。 たとえば、老母の場合、一日の摂取水分量は1,530~1,630mlである。小水の量は1,200~1,300ml。これが良好な状態だ。 しかし、発汗があったり、不汗蒸散(籠り熱などで目視できないが、水分が蒸発している状態。熱中症などで起りうる)の場合は、小水の量が900mlとか800ml以下に減ってしまう。この状態がつづくと膀胱内に細菌が増殖し、膀胱炎になる率が非常に高くなるのである。そうなると小水の色は、濃く濁り、臭いもきつく激しくなる。排尿管でバッグに採尿しているときは良くわかるのだが、尿のなかに雲のかたまりのような白いゴミ(浮遊物)が非常に多くなる。ゴミがあまりに多くなると排尿管の入口を塞いでしまい、尿が出てこなくなり、恥骨の上あたりを軽く押してみると、パンパンに張って固くなっている。 ・・・老人は体温調節があまりうまくゆかなくなっているので、寝たきり状態ともなれば、日常の寒暖にともなう体調管理はきわめて大切になってくる。熱中症にもなりやすいだ。 在宅における看護人の気の抜けない季節が近づいているのである。