八重洲ブックセンター産ハチミツ
パリのオペラ座の屋上で養蜂をしていることはご存知の方も多いだろう。考えてみればなるほど、大都会のど真ん中といえど、近くには花の市場もあるし、公園も多い。ミツバチにとっては格好の「花の都」なのだ。 東京はどうであろう。先日この日記に書いたばかりのデ・ラランデ邸が信濃町にあったころ、建築家ゲオルグ・デ・ラランデ氏の邸宅であった明治時代から以後、その所有者は次々に変ったことはこのたび復元されたことを報じた朝日新聞の記事にも書かれていたが、20年以上前だと記憶するが実はさる養蜂家があの邸宅でミツバチを飼育していた。JR信濃町駅を見下ろす高台は、左向かいに大宮御所、各宮邸や赤坂離宮(迎賓館)、右向かいに神宮の森がひろがり、一方、その反対側には新宿御苑がある。花にはことかかない、まさに養蜂にはうってつけの場所だった。 ところで、我が家の蜂蜜はといえば、これも東京都心産。みなさんご存知でしょうか、東京駅のすぐそばにある八重洲ブックセンター、ここの屋上で養蜂をおこなっていて、そこで採れた蜂蜜が我が家の食卓のもの。本好き、読書好きを誇る方でも、あえて八重洲ブックセンター産の蜂蜜を食べている方は少ないかもしれない。「八重洲BーBee project」 と称している。製造元は鹿島建設環境本部。 たしかにここも東京駅をはさんで皇居があり、日比谷公園がある。ミツバチにとってはさほどの飛行距離ではあるまい。 ここ2,3年、世界的にミツバチが消えるという「事件」が起っている。養蜂家にとっては死活問題だが、それはさて、じつは我が家の小庭にアシナガバチの小さな巣が庭木のしげみにあって、どうもそのハチがグミや柿の受粉に一働きしていたらしいのだが、昨年、その巣がいつのまにか無くなってしまった。飛び交っていたハチも姿を消してしまった。そして、それかあらぬか、昨年、我が家の柿もグミも花がたちまちに落ちて、ほとんど実をつけることがなかった。いや、アシナガバチばかりではない。昆虫の飛来をみかけなくなってしまったのだ。毎年、柚の葉叢のなかで孵化していたらしいアゲハチョウが、今年は姿をみせるのかどうか。 ホットケーキに八重洲ブックセンター産の蜂蜜をかけながら、花時をおわって次第に緑の葉をしげらせている、庭のグミをながめている。