51年前の「ミロのビーナス特別公開」
朝日新聞夕刊が「東京五輪物語」と銘打った写真入りコラムを連載している。今日は「ミロのビーナス特別公開」について書いている。見出しに「細心の輸送 集客170万人」とある。 1964年4月8日、東京・上野の国立西洋美術館の前庭に建てられた円形の特設会場で開幕した。私は、以前にも書いたが、この年に大学に入学したので、4月はまさに入学直後だった。またぞろ当時の日記を資料保存箱(幾つもあるのだが)から引っぱり出して見てみると、4月11日にこの展覧会に出かけている。 朝日新聞は、「そぼ降る春雨のなか」と書いている。私の日記の4月10日(この日の分から新しい日記帳になり、その第1ページだ)の冒頭に、「雨がもう三日も降り続いている。これがどこか山林の雨なら幾重にも深む若緑のすがすがしさも一層のものとなろうが東京の街中ではそうもゆかない。石の道にはねかえってぬるりと足許にからみつく。」とある。 そして、翌11日。「雨が上がった。正午に家を出て上野に行く。ミロのヴィーナス → 松方コレクション → ロシア秘宝展。家についたら六時も半を過ぎていた。少々疲れた。』と書く。欲張って一度に三つの展覧会を観て回ったのだ。日記はつづけてこう書いている。 「La Venus de Milo かすかなる光の愛撫 幻の海底に 昔ギリシャのハープの調べは流れて 女神はいとも静かに立ちませり まろき肌より 温かき感情は流れ あゝ麗しきおみなよ 我をその熱き胸に抱き給え ほのかなる唇と 豊なる乳房に接吻を許し給え 永遠(とわ)なる恋を 幻の海底の深き光の中にささやかしめよ 昔ギリシャの女神 昔ギリシャの栄光ある女神 豊かなるLa Venus de Milo」 「ギリシャのハープの調べ」と書いているのは、特設会場内に、古代ギリシャ音楽を再現したハープによる調べが、程よい音量で流されていたのだ。それにしても、こんな文章を見ると、ハハハ、私も若かったんだなー。18歳だもの。 というわけで、その「ミロのビーナス特別公開」のカタログも保存してあるので、思い出しついでに書影を掲載してご覧いただこう。カタログの奥付にチケットが貼付けてある。