旧家Tさんから頂戴した柿「禅寺丸」
土地の旧家のTさんから「庭に勝手に生る柿です」と、柿を頂戴した。「禅寺丸;ぜんじまる」という柿だそうで、小振りの甘柿である。 「禅寺丸」は植物学上の学名も「Zenjimaru」で、鎌倉時代の1214年に、現在の川崎市麻生区王禅寺の山中で偶然発見された、日本で最初の甘柿といわれている。昨年、川崎市で、この柿発見800年を記念したイヴェントが開催された。柿は現在では品種改良された交配種をふくめて1,000種におよぶそうだ。いまや外国語にもなっている日本特産の柿であるが、しかし、元来、ほとんどが渋柿である。我家の庭の柿も渋柿。そして私の青春の城下町会津若松を中心とする会津特産の不知身柿(みしらずがき)も渋柿で、柿農家はそれを大樽に詰めて焼酎で渋抜きをする。 禅寺丸の発見地・王禅寺は、我家の猫達の柿生の墓地の近くで、その地名が「柿生」というのはこの禅寺丸と無縁ではないようだ。私は猫達の墓参りに、自転車を駆って王禅寺から柿生へと行くのである。 Tさんから頂戴した禅寺丸は、ほんのり甘く、気分はなんとなく往古をしのぶ感じだった。私は初めてこの柿を食べたのである。旧家であるTさん宅の地に、いつ頃どのように辿り着いたかは知らぬが、混じりけのない原種を味わったような感慨を私はいだいた。