花を移植して庭に彩り
午前中に、きのう弟が持って来た花々を1時間半ばかりかかって移植した。雑草の緑一色だった小庭に、やわらかな彩りがそなわった。 雑草は雑草でそのままである。「雑草」と言っているのは人間どもだ。備わるべくして備わった生命機能のみごとさと、美しさがある。私は子どもの頃からそれに魅了されてきた。 そういえば先日民生委員の研修で中野へ行ったときのこと、往きの電車の中で私は一人の小学生に注意が向いた。熱心にポケット植物図鑑を読んでいたのである。写真図版だけを見ているのではなく、ひとつずつの植物の説明文を丁寧に読んでいた。 私立の小学校に通っているのであろう、随分長い距離の乗車だったが、周囲の大人達がモバイル通信端末でメールのやりとりをしたりゲームにうつつを抜かしているのだったから、その小学生は私の目にはひときわ異色だった。第一、集中する目つきがちがっていた。 やがて学校のある駅に着いたのであろう、バッグの中に植物図鑑をしまって降車していった。 私はこんな小学生に一昨年にも出会っている。 その子は私も参加したキノコ探索会に父親と来ていた。私はすぐに、この子のキノコについての知識が並々ならぬことに気がついた。そこで私は、「きみ、ちょっとこちらへいらっしゃい。おもしろいキノコがありますよ」と、大人達が食用キノコばかりに口角泡を飛ばしているのを尻目に、少年と父親を手招きし、エリマキツチグリの群生している場所を示した。少年は「ツチグリだ!」と言った。やはり相当の知識がある。私はさらにツキヨタケを示し、「毒キノコだから気をつけてね」と言い、またカイガラタケの群生に気付くようにしむけたりした。 彼はさかんに写真を撮っていたが、その写真コレクションはいったいどのように発展してゆくのだろう、と私は思った。すぐれた指導者にめぐりあうと良いがと、少年の父親と並び立ちながら、走り回るその姿を見ていたのだった。 私が愛用している植物図鑑は「牧野 新日本植物圖鑑」という、全1,137ページの大判であるが、じつは小学2,3年のときに買った本もいまだに使っている。蝶類図鑑も昆虫図鑑もその当時のものである。つまり60年以上前に買った本が所有者が71歳の現在も現役。良書の生命は永いということだ。 とはいえ、もちろんそれですべて用が足りるわけではない。 きょう移植した花木のなかに、私がその名を知らないものがあった。上記の図鑑には出ていない。 弟に訊くと、「カシワバアジサイ」だと言う。さっそく調べてみると、北アメリカ東部原産のアジサイ(ユキノシタ)科の植物で、葉に深い切れ込みがありカシワ(柏)の葉に似ていることに由来する和名らしい。学名、Hydrangea quercifolia. 白い十字花が円錐状に咲いている。雨を含むと重く垂れ下がる性質がある。 樹高2mほどにもなるそうだから、剪定をうまくやる必要がありそうだ。