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山田維史の遊卵画廊

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2021年11月の記事

全30件 (30件中 1-30件目)

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深夜午前3時ころの俳句

　昨夜，深夜午前3時頃に出てきた3句を、小型懐中電灯を銜えながら走り書き。　　冬ざれや耳の地蟲に深々と*　青穹（山田維史）　　寒月の洩れて嬉しや破（や）れ障子　　寒月や老いの寝覚めの厠から【自註】　「冬ざれ」とは、人も草木も枯れはてて、自然が蕭々寂寞としていること。しかし人間の耳は、自然が静かであればあるほど、耳の奧にジーンと絶えざる音が鳴る。それを地虫が鳴いているという。夜が深々（しんしん）と更けてゆくことと、その静けさに耳がシンシンと鳴ることを掛けた。　さて、これからいつものように作品にとりかかろう。

Nov 30, 2021

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きょうも忙しく

　きょうも朝から何だかんだと忙しかった。午前中に2時間半ほど外出。　午後は電話連絡を受けながら午後5時まで作品制作。明日には完成するかと思ったが、どうも12月1日までかかりそうだ。もう一息なのだが、塗りが乾かない。あわててやっても，元も子も無くしてしまう。描きたくて手がむずむずするのを堪えて、きょうの作業をおしまいにした。 I was busy today as well. Go out for about two and ahalf hours in the morning. In the afternoon, work was prodused until 5 pm whilereceiving several phone calls. I thought it would be completed tomorrow, but it look like it will take until the day after tomorrow, December 1st. It's anotherbreath, but the paint doesn't dry. Even if I do it in ahurry, I will lose everything. I finished today's work,enduring the itching of my hand because I wanted todraw.Tadami Yamada

Nov 29, 2021

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トランペット吹く少女

　今朝の俳句。　　町総出としのしまいの掃除かな　青穹（山田維史）　　小春日や立ち話する女どち　　小春日や川辺にトランペット（らっぱ）吹く少女あり

Nov 29, 2021

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市内一斉清掃の日

　市内一斉清掃の日。年末を控えて各町内毎に毎年恒例の行事。午前9時から10時まで。　私の住んでいる町内自治会は、同日清掃後の午前10時から正午まで、災害救助訓練のための「黄色い旗運動」を行っている。自治会が制作して各戸に配布してある「黄色い旗」を、それぞれの家の門や、通りから見える窓などに掲出する。そして自治会の当番役員が、一戸一戸巡回して無事を確認するのである。　民生委員の私は、災害時救助支援要請を市に提出してある家を、市のリストに基づき、やはり一軒一軒を実地確認することにしている。これは市から要請されての巡回ではないが、私が民生委員として担当している約400戸のすべてを記憶してはいないので、上記のような機会には自発的に巡回確認しているのである。　巡回しながら出会う住人、特に高齢者と、立ち話で近況を話されるのに耳を傾ける。それも私の役目であると、私は思っている。・・・今朝も、市民ホールのステージでの私の歌声に感激したと、握手してきたお爺さんがあった。私は恐縮しながら笑った。・・・まあ、そんなふうなことが、高齢者が親しみをもって相談事を私に依頼してくるきっかけとなっているのだろう。　さて、午前中はそんなことで過ぎたが、昨夜もベッドの中で、それも灯りを消したあとで、句が出てきた。　　おのれから老いを深山に捨てたるや　青穹（山田維史）　　星北に南天の実は赤きかな　　冬寒み足袋履いて寝む親は無し* 【自解】　第一句は、無季句。背後に姥捨山伝説を置いた。暗に冬ということである。句の意図は、高齢者を社会の厄介者として見捨てる風潮に対する反語。年老いたからと、自ら社会の隅っこに引きこもってはいけない、と。私も「後期高齢者」と、この国で無礼な言い方をされる身であるが。　第二句は、北に南を対比。北の北極星は常に変わらない人生の指針。南の天に、植物の南天を掛けた。小さいが美しい赤い実は人生の豊穣と温かさ。　最後の句は、「足袋を履いて寝ると親の死に目に会えない」という、昔の言い伝えを前提にしている。「冬寒み」の「み」は古語。「・・・ので」という意味。「冬が寒いので、親も死んでしまったことだし、足袋を履いて寝よう」

Nov 28, 2021

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ミュージカル界の巨匠スティーブン・ソンドハイム氏追悼

　かずかずのミュージカルの作詞・作曲をしたスティーブン・ソンドハイム氏が11月26日急逝された。1930年ニューヨーク生まれ、享年91。　レナード・バーンスタイン作曲の『ウェストサイド・ストーリー』に作詞し、最初のヒットとなった。27歳のときだった。以後、半世紀にわたる活躍は、『ローマで起った奇妙な出来事』『フォリーズ』『リトル・ナイト・ミュージック』『スウィニー・トッド』『ジョージの恋人』『アサシンズ』『パッション』等の作曲。作詞は上記『ウェストサイド・ストーリー』のほかに『ジプシー』など。また映画音楽も作曲された。ミュージカル界では最高の栄誉となるトニー賞を、特別功労賞も含めて歴代最多受賞していられる。『ディック・トレーシー』（1990年）でマドンナの歌う5曲を作曲し、1991年に第63回アカデミー賞ベスト・オリジナル歌曲賞を授賞した。2015年には大統領自由勲章を授与された。　私は、『ウェストサイド・ストーリー』のブロードウェイのステージこそ観ていないが、高校3年のときに観た映画は忘れられない。あの当時、映画好きの高校生はみな『ウェストサイド・ストーリー』のダンス・ナンバーに夢中になり、ジョージ・チャキリスの真似をして「ボーイ、ボーイ、クール・ボーイ」と歌いながら両腕を拡げ、脚を高くあげたものだった。そして、このダンス・シーンのスタイルに少なからず影響されて、私は、ダンス・シーンこそ無いけれども、『ある所で・・・』という芝居を演出し、各高校が競う高校演劇祭で上演した。　そんな私自身の思い出とともに、スティーブン・ソンドハイム氏の御逝去を追悼します。R.I.P.

Nov 27, 2021

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吟行ならぬ吟寝で三句

　吟行とは、名所旧跡や山野などを散策しながら俳句を詠むことだ。しかし、近頃の私は就寝のためベッドに入って句を詠んでいる。ものぐさからではない。どうやら寝付く前にその日一日を回想するからだろう。そんな経緯を考えたこともないまま、自発する句を枕元の筆記具をたぐりよせて走り書きする。吟行ではなく、吟寝である。　と言うわけで、昨夜の句を。　　のびたきや枯葉くわえて遊びける　青穹（山田維史）　　のびたきの暫しの宿り冬もみじ　　老葉のはらりと落ちて時雨かな　最後の句を走り書きしながら、ふと、新古今集の藤原清輔の歌を思い出した。　　　「永らへばまたこのごろや偲ばれむ　　　　　　　　　憂しと見し世ぞ今は恋しき」　解釈を書くのも野暮だが、・・・「このごろの世の中は憂えることばかりだが、長生きをすればそのうちに、憂いばかりと思っていた過去も懐かしく恋しく想うのだろうなぁ」。　この歌から私の想いは飛躍した。私の理想は、高村光太郎の詩の「智恵子は死んで元素に還った」ように、自分の肉体が元素に還ることだ。現在、人智が発見して確定している元素（原子）は118。存在が予想されているが未発見の元素を加えるとると173。少なくともこの173個の元素によって宇宙は成り立っている。人間の肉体をふくめ、あらゆる物質が173の元素からなりたっている。言い換えれば、死して元素に還るとは、宇宙の根源になるということだ。宇宙の核になるということだ。なんで憂き世を懐かしむことがあろう。「永世」などという観念に対して、私は、「元素に還ることこそ永世ですよ」と言おう。「霊魂」？　それを言うなら、生きているうちに魂を「物質化」することだ。自己の精神の物質化だ。　私は数多くの人智の断弦を聴いてきた。すぐれた「作品」を生み出した才能が、ぷつりと終り、二度と新たな作品が生み出されることがないことを思い知ってきた。ダンテ・アリギエーリ、ヤンファン・エイク、アンドレアス・ヴェサリウス、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ・ブオナローティ、ウィリアム・シェイクスピア、ヨハン・セバスチャン・バッハ、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ、ジョン・ミルトン・・・・・。　この人たちが地球上にいないという私の喪失感は何とも表現できない。つまり、他のいかなる時代にも人間が生み出せなかったもの、生み出せないでいるものを、この人たちは産み出し、そしてもはや生み出しはしないのだという恐ろしい虚無感を、私は表現できない。まさに断弦を感じるばかりだ。　だがしかし、この人たちは己が精神（魂）を物質化して逝った。肉体は元素に還った。しかし精神を新たに元素結合したのだ。物質化した彼の精神を、われら人間に遺した。「物を生む」とは、そう言うことだろう。　　　死なばよしいざ還りなむ　　　　　　吾はまた元素となりて宙（そら）に漂ふ　維史

Nov 27, 2021

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蜜柑と新米

　午後1時30分から3時30分まで民生委員・児童委員の月例地区会議。赤い羽根募金に醵金。　帰りに農業を営んでいられる民生委員同僚のTさんから新米を頂戴した。Tさんの田は、今年は豊作だそうだ。　精米は12℃に設定した保冷庫で保存すると、ほとんど味が変わらずに長期保存できるそうだ。この12℃という温度は、昔私が子どものころは米櫃に発生したコクゾウムシも、発生しないのだそうだ。いまの若い人たちは、コクゾウムシを知らないかもしれない。農業周辺技術の発達のひとつの成果であろう。私にとっても新知識である。　Tさんは、近くの小学校が所有する田で、長年、稲作の指導をなされている。刈入れがすむと、子どもたちからたくさんの質問状が届き、そのひとつひとつの質問に対してTさんは丁寧に答えていると言う。稲作を知らない都会っ子が、Tさんの1年間の農作業を実地に見ることで、また、自分たちも関わることで、子どもらしい質問とは言えポイントをついて来るのだそうだ。　そんな話を聞くと、私は嬉しくなる。本当の児童教育がTさんによって行われている、と。　私はTさんにお会いするたびに、農業の実際の話を聞くのが好きだ。第一次産業と称される自然相手の産業には、人間の浅知恵ではどうにもならないことがある。常にそれと対峙していると言っても過言ではあるまい。第一次産業に従事している人たちは、・・・言い得べくは、人間は、自然を観察することによって自然の恵みを享けてきたのである。　さて、私は会議に出かけるまで作品制作だった。　出かけるときに、玄関ドアを開けると、片隅にレジ袋が置いてあった。たくさんの蜜柑が入っていた。誰が置いて行ったのだろうと不審に思いながら、そのままにしておけないし急いでいたので、一応、中に取り込んだ。すると隣家の夫人が顔を出してこちらを見た。「あれは、奥様が？」と私が言うと、夫人は「ベルを押したのですけど、お返事がなかったものですから・・・少しばかりですが・・・」と、蜜柑狩りに行って来られたのだとおっしゃった。　家人は朝から横浜へ出かけていたし、私は制作に集中してい、ベルの音に気付かなかったのだ。　きょうは頂戴物をする日だった。ありがたいことである。　会議から帰宅すると、庭に小鳥が枯葉で遊んでいた。〈のびたき〉である。ちょんちょんと跳んで、それからナツグミの枝に舞い飛び、枯枝にとまって暫くの間、私の振舞を見ていた。 Monthly district meeting of civil welfare officers andmembers for child protection from 1:30 pm to 3:30 pm.Donate money to the red feathers project. On the way back, I was presented a new rice from Mr.T, a colleague of the civil welfare commitee who is en-gaged in agriculture. Mr. T's the new rice crop seems to be a good harvest this year. It seems that polished rice can be stored for a longtime with almost no change in taste when stored in acold storage set at 12℃. It is said that this temperature of 12 degrees Celsius does not cause the maize weevilthat occurred in the rice weevil when I was a child. Today's young people may not know the maize weevil.This is probably one of the achievements of the devel-opment of agricultural peripheral technology. It's newknowledge for me as well. Mr. T has been teaching rice cultivation for manyyears in a rice field owned by a nearby elementaryschool. After harvesting, many questions were receivedfrom the children, and Mr. T said that he answered each question politely. It is said that urban childrenwho do not know rice cultivation will come up withpoints, even if they are childish questions, by seeingMr. T's one-year farming work in the field and by being involved with them. When I heard such a story, I was happy. The realchild education is done by Mr. T. I like to hear the actual story of agriculture everytime I meet Mr. T. In the industry of nature, which is called the primary industry, there are times when human shallow wisdom cannot do anything about it.It is no exaggeration tosay that we are always con-fronting it. Those engaged in the primary industry ...In short, humans have enjoyed the blessing of natureby observing it. Well, I was working on the painting until I went tothe meeting. When I went out, I opened the front door and founda shopping bag in one corner. It contained a lot oftangerines. I was wondering who left it, but I couldn'tleave it as it was and I was in a hurry, so I took itinside. Then the wife of the neighbor's house cameout and looked at me. "This is, ...Did you give this me?"I said. "Yes, I pushed the door bell, but I didn't get areply. ... A little ..." and she said that she has gone hunting for tangerines. My family went to Yokohama in the morning, and Iwas concentrating on the production and didn't noticethe sound of the door bell. Today was the day to receive the gifts. Thanks. When I got home from the meeting, a small birdwas playing with a dead leaf in the front of the frontdoor.. It is Nobitaki. She jumped a little, then flewto a branch of Natsugumi (Elaeagnus multiflra), and stayed on the branch to watch my behavior for awhile.Tadami Yamada

Nov 26, 2021

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温泉宿は荒れ果てて

　今朝の俳句。きのう掲載分からの洩れ句。　　湯宿荒れいま渓流は錦繍し　青穹（山田維史）　　急流にもみじは速し崩れ宿　　

Nov 26, 2021

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いよいよ年末が近づいて

　いよいよ年末が近づいているなー。ばたばたとボランティア仕事の依頼等でスケジュール表が埋まる。　それを見越したわけでもないが、描ける時間に描いておこうと、絵筆を走らせていた。19日に着手した小品を、今月中に完成してしまおうと思っている。11月は残り5日だ。　　寒灯や電話のベルのいくたびか　青穹（山田維史） The end of year is finally approaching. The scheduleis filled with fluttering and volunteer work requests. I did't anticipate that, but I was wielding a paintbrush to draw at a time when I could draw. I plans to com-plete the small piece that I started on 19th this month.November has 5 days left.【Haiku】 Kantō ya denwa no beru no ikutabi ka A light in the cold night The phone bell rings several timesTadami Yamada

Nov 25, 2021

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きょうの制作にとりかかる前に

　きょうの絵の制作にとりかかる前に、俳句を五句。　　木枯や霜おく髪の吹きかえし*　青穹（山田維史）　　寒日や汲み置きの水の温きこと　　客絶えて廃墟つらなる紅葉の湯　　冬もみじ宿は廃墟となりぬれど　　冬日落ちて霜おく髪の早寝かな【*註】霜おく髪：白髪　　

Nov 25, 2021

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昨夜遅くに、また，朝に・・・

　昨夜遅くに・・・　　今宵また雨とはなりぬ冬木立　青穹（山田維史）　　木枯らしや更けて深山（みやま）の音聞かん　　綿蒲団引きかぶりけり雨の音　　あら嬉し冬日ほどける雨後の朝　　冬薔薇や誰にともなき独りごと Late last night ...【Haiku】 Koyoi mata ame towa narinu fuyu-kodachi Winter grove that rained again tonight Kogarashi ya fukete miyama no oto kikan The cold wind As the night goes on, I hear the sound of the mountains Wata-futon hikikaburikeri ame no oto Cotton futon pulling over I hear the sound the chilly rain Ara ureshi fuyu-hi hodokeru ugo no asa Ah! I'm so happy The winter day melts in the morning after rain Fuyu-bara ya dare ni tomonaki hitorigoto Winter roses Soliloquy without telling anyoneTadami Yamada

Nov 23, 2021

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少しばかり絵具のことを

　三日前に新作の小品制作に着手した。　私のキャンヴァスの準備は、画材店で普通に売っているアブソルバンしたもの（膠かカゼインで白亜、酸化亜鉛をペースト状にして麻布に塗ってある。メイカーによっては鉛白をリンシードオイルでペースト状にして塗ったセリューズ・キャンヴァスもあるかもしれない）に、さらにマツダのキャンソールのホワイトを2度ほど塗って良く乾燥し、サンドペーパーで刷毛目を研ぎ、さらに作品の仕上がりの色調を想定した下色を塗る。それが完成したらいよいよ下絵を転写してから、描写に入る前の第一層の塗りが始まる。　ここで注意しておきたいのは、下色に使用する絵具についてである。その上に塗り重ねる絵具に化学的な影響が出ないものでなければならない。私はローシエナ、もしくはジョンブリアンを使用している。　ジョンブリアンは、メイカーによって「チント」と表示しているものがある。これは純正のジョンブリアンではない。いわゆる人工的に何か基体物質に表面的な色調に似せて染め付けた絵具である。チント絵具は多く、安価なこともあるが、経年変化試験の資料があるのか無いのか私は何とも言えないが、使用には注意する必要があろう。少なくとも最下層の下色には適さない。下色は、固着力を要し、次に塗る絵具をしっかり引きつける役目を負わせなければならないからだ。　ローシエナについて、まさかとは思うがアマチュアの人には老婆心で注意しておこう。ローシエナに良く似た絵具にイエローオーカーがある。どちらも「黄土色」と言われることがあるようだ。しかし、絵具の名称が違うだけではない。化学的な性質がまったく異なる。手っ取り早く述べると、イエローオーカーは、塗りの最上層、最後に使うべき絵具だ。その理由は、油分の吸収がはげしく、経年とともにその上に塗った絵具の油分を吸い取ってしまい、上に塗った絵具がかさかさになる、いわゆる白亜化（チョーキング；chalking）がおきるのである。尤も、ユトリロはその性質を逆に利用し、パリの路地裏の建物の窓枠にニュアンスをつくりだしている。彼は窓枠の陰にイエローオーカーを塗り、その上に黒色を塗っている。黒絵具は油分が抜けて、つまり艶がなくなり、深い独特のニュアンスが表現されているのである。これは、イエローオーカーの化学的な性質をじゅうぶん知ったうえでのユトリロの技法である (後註）。　さて、書かなくてもよいことを述べたが、私は準備したキャンバスに下絵を転写したのだが、その後、三日間、手をつけることなくただ眺めていた。考えあぐねていたのだ。何かが違う、何かが違うと、小さな画面を眺めて，一度転写した下絵の一部分を消し、あらたなイメージを線描して、ふたたび眺める。いや、まだ違うぞと思って消す。そんなことを繰り返して、ようやく、これで描けるだろうというイメージにたどりついた。そしてそこから一気に最初の粗描写をしながらの塗りに入った。そして全画面の第一層の塗りを終わった。明日から塗りを重ねながら描写してゆく。今年の作品制作をこの作品で終わらせたくないと思いながら。（後註）ユトリロのこの技法による微妙なニュアンスは、画面保護のためのニスを塗ると、消えてしまうおそれがある。 Three days ago, I started making a new small piece. My canvas pteparation is an absorban that is usuallysol ay art supply stores (chalk with glue or casein, zincoxide paste and spread on linen. Depending on themaker, lead white is pasted with linseed oil. There may be a celiuze canvas that has been painted withzinc oxide), then apply Mazuda's Cansole white twice,dry it well, sand down the brush stroke marks, andthen aaaapply the undercolor supposing the finishedcolor of the work. When it is ompleted, the sketch isfinally transferred, and then the painting pf the firstlayer before starting the depiction begins. What I want to pay attention to here is the paintused for the undercolor. The paint that is applied ontop of it must not have a chemical effect. I use RawSienna or Jaune Brillant. Jaune Brillant is sometimes labeled as "Tint" by themaker. This is not a genuine Jaune Brillant. It is aso-called artificially dyed paint that resembles a su-perficial color tone on a substrate material. There aremany tint paints and they can be cheap, but I can'tsay if there are any materials for aging tests, but youshould be careful when using them. At least notsuitable for the undercolor of the bottom layer. Thisis because the undercolor requires a fixing force andmust be responsible for attracting the paint to beapplied next. Regarding Raw Sienna. ... I don't think it's true, but let's be careful for amateur painters. Yellow ocher isa very similar to Raw Sienna. Both seem to be called "ōdoiro (ocher)". However , the chemical properties are completely different. To put it briefly, Yellowocher is the top layer of paint and the last paint touse. The reson is that the absorption of oil is so great that the oil of the paint applied on it is ab-sorbed over time, and the paint applied on it be-comes bulky, so-called chalking occurs. However, Utrilo taked advantage of that property to create nuances in the window frames of buildingsin the back alleys of Paris. He painted Yellow ocherbehind the window sill and black on it. Black paintis degreased, that is, dull, and expresses a deepand unique nuance. This is a Utrilo technique witha good understanding of the chemival properties ofYellow ocher (*). Well, I said that I don't have to write it, but Itransferred the sketch to the prepared canvas, butafter that, I just looked at it for three days withouttouching it. I was thinking about it. If something isa misunderstanding or something is the wrong ideato look at the small screen, erase a part of the sketch that was once transferred, draw anew image, and look at it again. No, I think it's still different and erase it. By repeating such thinfs, I finally came up with the image that I ould draw with this. Then, I started painting while making the first rough depiction at once. And I finished painting the first layer of the full screen. From tommorow, I will continue to paint while painting. I don't to end this year's production withthis work.【*Note】The subtle nuances of Utrilo's this techniquecan disappear when varnished to protect the screen.Tadami Yamada

Nov 22, 2021

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雨音と遠く足音を聴きながら

　昨夜、就寝後に雨音と遠く足音を聴きながら・・・　　山くだる人足早に冬の雨　青穹（山田維史）　　枯木立たたいて雨の寒々と　　冬構え地植えの蘭に衣着せ　　門灯に更けて音無く冬の雨 Last night, after going to bed, listttening to thesound of rain and the sound of footsteps in the distance ...【Haiku】 Yama kudaru hito ashi-haya ni fuyu no ame A person who goes down the mountain quickly in the winter rain Kare-kodachi tataite ame no samuzamu to The rain hitting the dead trees wintry Fuyugamae jiue no Ran ni koromo kise Prepare for winter by covering the orchids planted in the ground to remove snow Montō ni fukete oto naku fuyu no ame At the night went on, Winter rain without sound at the gate light Tadami Yamada

Nov 22, 2021

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今朝の一句

　今朝の一句。　60年後の蝕には会えぬので　忘りょう歟（か）ほどよき月の巡らねど*　青穹（山田維史）【註】『伊勢物語』に、「忘るなよほどは雲居になりぬとも空行く月のめぐり逢うまで」

Nov 21, 2021

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小鳥の今朝の置き土産

　今朝の小鳥のおきみやげ。体羽いちまい。「つぐみ」かな？　　我家の小庭のいまの木の実は、南天と千両、そして土佐文旦。文旦は酸っぱかろう。草木瓜の緑の子房がゴルフボール大でいくつも枝に付いているが、食べられたとしてもこれも酸っぱい（牧野富太郎博士に拠る）。毎朝訪れてくる鳥たちには、まことにお気の毒さま。　　以前、我家の門内に大量のヒマワリの種が蒔かれる日々がつづいた。私は不思議に思いながら掃き集めていた。のちに、我家にやってくる小鳥を見たくて、ヒマワリの種をわざわざ買って、門内に蒔いている人があると知った。私はそうとは知らず（まさか他人の家の庭に種蒔く人があろうとは想像できなかったので）、鳥たちが食べ残したのであろう大量の種を、掃き集めていたのだ。蒔いている人が名のり出て、その人の優しい気持がわからぬでもなかったが、毎日掃除に忙殺されていた私は、門内への種蒔きをやめてもらった。　我家にやってくる鳥たちにとっての御馳走は、何と言っても柿だ。その時季、毎朝毎朝、たらふく食べて山に帰ったのだろう。大きな羽音が聞こえるときは、カラスだとわかった。・・・しかし、先日，私は4メートルにも伸びたその樹高を切り詰めた。さて、来年の実の生りぐあいはどうだろう。いつもの太い枝がなくなって、カラスも驚いているかもしれない。　　柿落葉かぞえるほどになりにけり　青穹（山田維史）　　今こそと蕾ふくらむ冬椿　　風吹いて体羽さかだつ寒雀（小鳥の今朝の置き土産） A souvenir of a little bird this morning. One bodyfeather. Is it a feather of "dusky thrush"? The current nuts in our small garden are Nanten,Senryo, and Tosa pomelo. Pomelo will be sour. Thegreen ovary of Maule's quince is the size of a golfball and are growing in clusters, but even if it iseaten, it is also sour (according to Dr. TomitaroMakino). I'm really sorry for the birds that comeevery morning. Before, the days when a lrge amount of sun-flwer seeds were sown in the gate of our housecontinued. I was wondering and sweeping it up.Later, I found out that there was a person whobothered to buy sunflower seeds and sow themin the gate because he wanted to see the little birdscoming to our house. I didn't know that (because Icouldn't imagine anyone sowing in the garden ofsomeone else's house), and I was sweeping up alarge amount of seeds that the birds might haveleft behind. The patson who was sowing came out,and I could understand his kind feeling, but i wasso busy sweeping every day that I asked him tostoppe sowing seeds in the gate of my house. The treat for the birds coming to our house is, after all, persimmons. At that time, every morning,every morning, they probably ate a lot and wentback to the mountains. When I heard a loud hum-ming sound, I knew it was a crow. ... But the otherday, I cut down the height of the persimmon tree,which had grown to 4 meters. Now, what about thegrowth of the fruit next year? The crows may besurprised that the usual thick branches are gone.Tadami Yamada

Nov 20, 2021

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やあ、失敗失敗

　やあ、失敗失敗。今夜の皆既月食を見逃してしまった。すっかり失念していた。　午後7時、入浴をすませ、のんびり茶を飲みながら作品のことを考えていたとき、「あっ！」と思い出した。日本で全国的に観ることができる89年ぶりのほぼ皆既に近い部分月蝕が、午後6時17,8分ごろから始まる、と。気がついたのが、午後7時58分。あわてて2階のベランダに飛び出したが、時、すでに遅し。まんまるお月さんが、煌々と輝いていた。月蝕は午後7時47分4秒で終了してしまったのである。　次回は65年後の2086年11月21日だそうだ。私はその頃は月の人。「桂男」として、あちらから地球を眺めているかもしれぬ。　　蝕済みて丸き丸きや冬の月　　青穹（山田維史）　　　（別句）　　　蝕済みて丸き皃（かお）出す冬の月　　　　89年ぶりの皆既月食済みて　　　袖几帳払いて丸き冬の月*　　　相見ずよ吾永訣の冬の月　　　相見ずよ永の別れと冬の月　　　別れては人に非ずよ冬の月**　　　（別句）　　　我別れ人に非ずよ冬の月**　【*註】袖几帳（そできちょう）：着物の袖で顔を隠すこと。【**註】我別れ人に非ず：李白『古文前集』に「別に天地の人間に非ざる有り」 Ah, failure failure. I missed the total lunar eclipsetonight. I was ompletely forgotten. At 7:00 pm, when I took a bath and was thinkingabout my painting work while sipping tea, I remem-bered, "oh!". It is sai that the partial luna eclipse, which can be seen nationwide in Japan for the firsttime in 89 years, will start around 6:17,8 pm. I noticedit at 7:58 pm. I hurriedly jumped out to the balcony onthe second floor, but it was too late. The round moonwas shining brightly. The lunar eclipse ended at 7:47:04 pm. The next time will be November 21, 2086, 65 yearslater. I will be a moon person at that time. As "Katsura-otoko* (Man of Japanes Judas tree) ", I mayb looking at the earth from there, the moon.(*Note) According to the elegant legend from the Heian period, a man of Katsura tree lives on the moon. Katsura tree is called Judas tree in English, but it hasthe opposite meaning to Japanese.Tadami Yamada

Nov 19, 2021

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新作小品を完成した

　20時40分、新作小品を完成した。完成までずいぶん長い時間がかかった。最初の落書きのようなアイデア・スケッチをもとに、描きながらアイデアをふくらませてイメージを変えていったからでもある。　とにかく描きおわった。次ぎの作品へ気持を切り替える。アイデアの片鱗のようなものが、目の奧にチラつく。新しいキャンヴァスを横目に見やりながら、まだ形にも何にもならないぼんやりしたものを捉まえようとしている。

Nov 18, 2021

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枝束が6束と40リットルごみ袋が9袋

　ようやっと庭木の剪定と伐採を終了した。きょうの午前中に、椿と木瓜と卯木、そして楮を剪定し、それで完了。我が市のごみ収集ルールに則った大きさの枝束が6束。40リットルのごみ袋が9袋。大仕事だったが、年末の大掃除が楽になった。　昼食後、午後2時まで長い休憩をし、それから作品制作。この作品、小品なのに時間がかかっている。部分部分で異なる少し手の込んだことをやっているのと、そのいちいちの過程が絵具の乾燥を待ちながらなので、私の意欲だけではどうにもならない。しかし、もう数日、・・・たぶん今週中には完成するだろう。それを見越して次ぎの作品について考えはじめた。　　落葉焚き禁ずる町のあじけなさ　　青穹（山田維史）　　伐り残す枝にひと葉の枯れ葉かな　　木枯らしや剪定の疵われの罪

Nov 17, 2021

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新実徳英氏、新曲世界初演音楽会

　新実徳英夫妻から新曲世界初演の音楽会への招待があった。　現代室内楽で、もうすでに長い歴史を築いてきた『現代室内楽の夕べー四人組とその仲間たち』の2021年の会（全音楽譜出版社主催・制作）が、11月30日（火）、東京文化会館小ホールで開催される。　「四人組」とは、池辺晋一郎、新実徳英、西村朗、金子仁美の各氏。それに、今回はご友人の作曲者として鷹羽弘晃氏が加わる。いずれも新作の世界初演である。　私は、毎回、新実徳英さんの招待を受け、その新作を楽しんできた。新実さんがご自身の音楽をどのように先端的に方向付け、何を聴き取り、捉まえ、発展させているのかを、私は音楽を無心に楽しむと同時に私の耳をそばだててきた。この「四人組」の音楽会は、ことのほか刺激的である。日本の現代室内楽を牽引しているようなこの四人の優れた作曲家たちの、言いうべくは、「実験」の場、と私は感じて来た。作曲者にとっては、私の言い方は諾得ないかもしれないが・・・。　11月30日も、私を楽しませてくれるであろう。新実徳英さんの曲は、『ソムニウムークラリネットとピアノのために』。　(ちなみに「ソムニウム」は「夢」という意味であろう）　新実徳英さんからは、さらに、ご著書出版のしらせが。　『生きることが音楽！』音楽之友社刊　「音楽を生きる」ではなく、「生きることが音楽！」という表明が、新実さんらしい。生活と芸術が一体化している。創作家の精神とはまさにそういうものだ、ということだろう。自己の人生を作品に表明することは、すなわち、自己の存在が他者を励ますという内密の意志を含んでいるのだ。エクスクラメーションマークが、それを表わしていよう。　新実さん、すばらしい書名です！挿画：とつかりょうこ

Nov 16, 2021

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昨日11月13日は空也忌だった

　昨日11月13日は空也忌だった。　空也上人（903-972）、平安中期の浄土教念仏信仰の先駆者とされる。70歳で京の西光寺（現在の六波羅蜜寺）に没した。　忌日について、あるいは諸説あるのかもしれない。ウィキペディアにおいては旧暦（宣明歴）天禄3年9月11日、ユリウス暦972年10月20日となっている。　私が11月13日としたのは、戦前の書物に記されている忌日を採った。この日、京都蛸薬師空也堂において念仏踊がおこなわれ、また11月13日から大晦日までの48日間、空也堂の僧が洛中洛外を念仏和讃を唱えながら巡る。腰に瓢箪をつけ、鉦を叩きながら歩くのだが、米や金銭の喜捨した人には瓢箪の形をした菓子を与える、と記されている。　この行事についてウィキペディアに記述はない。現在も浄土宗（小乗仏教）の伝統行事として空也堂の僧がおこなっているのかどうか，私は知らない。現在の六波羅蜜寺は真言宗（大乗仏教）である。しかし私は古い書物に書かれた、空也堂の僧にとっての11月13日の重要行事を、空也上人の忌日についての傍証とした。　仏教美術では六波羅蜜寺所蔵の重要文化財指定「空也上人立像」は、ことに有名である。私が中学生だったころは教科書にも写真が掲載されていた。鎌倉仏教の解説に付されていた。　私がこの彫像の実物を観たのは、1964年10月1日および11日の2度。東京オリンピックを記念して東京国立博物館で開催された『日本古美術展』においてであった。初回から10日おいて2度観に行ったのは、この「空也上人立像」と、もう一体、奈良法輪寺所蔵の「虚空蔵菩薩立像（一名、酒買い観音）」とを、じっくり目に焼き付けるためだった。それだから、57年後の現在でも、その2体の彫像がどのように展示されていたかを、姿とともに記憶の映写幕に映し出せる。　「空也上人立像」の作者は、運慶の四男の康勝。作者が明確なのは、この彫像の胎内に康勝の名と花押が墨書されているからである。空也上人の御目が涙をためたような一種異様な、異様と言って悪ければ「悲愴な執念」の輝きを宿しているのは、水晶で造られているからである。口から出ているのは阿弥陀仏の小像で、念仏唱名「南無阿弥陀仏」を表現している。　父運慶の作になる彫像の特徴が解剖学的な誇張にあるとすれば、息子康勝の空也上人立像は近代彫刻を先取りしたような写実である。私はその点に注目する。日本彫刻史では特異に抜きん出ている。　日本彫刻史の肖像写実彫刻には、運慶の父である康慶の作である奈良興福寺所蔵の国宝「伝玄賓坐像（でん・げんぴんざぞう）」などの法相六祖（ほっそろくそ）がある。しかし私は、孫の康勝の「空也上人立像」に一層の写実性を見る。その写実の近代性は明治時代の新海竹太郎までまたなければならないほどの先取りだと，私は思う。　この彫刻史における両者の空間に、私は「現実を直視する」という、見ることの文化的意識の問題を発見するのだ。　　　空也忌や涙を湛う像のまえ　青穹（山田維史）（上）空也上人立像　京都・六波羅蜜寺　　　　　（下）1964年　東京国立博物館「日本古美術展」カタログ

Nov 14, 2021

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美空ひばりさんの「はひふへほ」再び

　朝のうちに少しばかり作品制作をし、11時から午後2時まで昨日やり残した剪定木の片付け。土佐文旦も樹高を切り詰めた。実がたくさん生っている。ほんとうは柑橘類の剪定を今の時季にやるのは適当でない。5月か6月頃が良いとされる。私もそれを分っていた。しかしその頃はちょうど二つの展覧会のための作品制作に集中しながら忙しく、庭木の剪定にまで手がまわらなかった。　さて、きょうの片付けもまだ完全に終わったわけではない。が、午後2時で止めたのは、あした、柿の木の樹高を伐り詰めようと思っている。柿の木の剪定は枯葉が落ち尽くした今がやり時だ。私ひとりではとてもできない。なにしろ樹高4メートルほどある。柿の木は折れ易い。そして高い脚立を使うので、弟に手伝ってもらおうと思う。それで弟のための安全ヘルメットを買いに出かけたのである。それと、幹の切り口に塗布する融合剤も買った。水分蒸散や病原菌感染を防ぐためである。毎年たくさんの柿の実を生らせ、その朱色の美しさと、自家産を食す楽しみ、いわば口福を味わわせてくれた。高さを切り詰めるのは、なんだか可哀想な気もするが、私の手の届く高さで来年もたわわに稔ってほしい。柿農家ではそのように樹高を低くしているのだと聞く。　閑話休題　このブログ日記に昨日アクセスしてくださった中に、15年前に「完成しない美空ひばり論」（2006年6月17日）と題して書いた小文が含まれていた。4人の方がアクセスしていられた。じつは、この小文には15年間にちょいちょいアクセスがあり、現在まで2414人が読んでくださっている。ありがたいことだと思う一方で、ほんとうに完成しないなーと私の非力に忸怩たるものはある。　その15年前の日記の小文で、私は次ぎのように書いた。昭和40年、ひばりさんが『柔』でレコード大賞を授賞した。そのTVインタビューでのこと。　〈「ハヒフヘホが難しいのね」と彼女は言った。そして「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」と発音してみせた。『柔』の歌詞の2番に、「行くも止まるも、坐るも臥すも」とある。その「臥（フ）す」が、明瞭な言葉と音にならないのだと言う。（後略）〉　私が美空ひばりさんの歌唱法に関心をいだく切っ掛けになったインタビューだった。私は19歳の若さだったが、自分の歌唱についてこのように公言した歌手を知らなかった。そして美空ひばりという不世出の歌手について、その芸能論（とまでも行かないゴシップ的な論考を含めて）はたくさんある。TV等における親しい方々による話も数限りなく見聞きする。しかし、私の浅い知識で断言すると語弊があるかもしれないが、音楽論としての美空ひばり論は無いのではあるまいか。　たとえばファルセットで歌い切る『哀愁波止場』（石本美由紀作詞、船村徹作曲）を聴いてみよう。この曲の船村徹氏の作曲術はじつにみごとである。メロディーと強弱とが相俟って波止場の岩壁に寄せては引く波のようにうねりをくりかえす。そして美空ひばりさんの歌唱は、その寄せては引く波のうねりを実現する。長音のスロ―テンポで、歌詞の一節一節にクレッシェンドーデクレッシェンドでうねりをつくっている。そして最後、そのうねりの余波のように、桟橋に繫留された小舟がゆっくり上下するように余韻を残して音が解放される。もちろん船村氏のメローディ・ラインが、その小さなゆるやかなうねりを造形しているのであるが。　『哀愁波止場』と似た曲名なので私はしばしば取り違えるが、菅野小穂子作詞・遠藤実作曲『哀愁出船』では、美空ひばりはファルセットをただ一カ所に抑える。「遠く別れて」と低音で入って主人公の女心を歌い、一転していわゆるサビの「後ろ髪ひく　哀愁出船」となる。ここで彼女は独特の技法を使う。すなわち「後ろ髪ひく」を、ほとんど破調のような、あやうく蓮っ葉になりそうな発声をする。私が言う破調とは、楽譜上の調性のことではない。あくまでも美空ひばりの歌唱法である。じつはあやうく蓮っ葉になりそうな歌唱には、私の見方では2番の歌詞とのつながりで、そうなるべき理由があるのだ。詳しくは歌詞を見ていただくことにする。さて、その破調のあとにファルセットで、せつなく「哀愁出船」と歌い上げ、最後の「涙噛み締め　行く潮路」の「噛み締め」の「め」に、堪えに堪えたような非常に短いバイブレーションをかけ、「行く潮路」で音を解放に向かわせる。　私は本当に驚く。この「芸」の張りつめた音楽つくりに。　ところで、きょう私は工具店への行き帰りに、「完成しない美空ひばり論」にアクセスしてくださっている方々がいられることを思い、美空ひばりさんがかつて「ハヒフヘホが難しいのね」と言ったことに対する私の考えを、あらためてメモとして書いておこうと思った。　それは美空ひばりの歌唱における呼吸法に関係する。　彼女は息づかいが非常に優れている。ひと呼吸による息の溜めがおどろくほど長いのだ。ひとつの歌のなかで、譜面に記されたブレス（息継ぎ箇所）以外で、彼女がどこで息継ぎをしているかほとんど判らない。その呼吸法はベルカント唱法におけるそれと同じか、似た方法ではないかと私は推測する。すなわち、胸式呼吸とも腹式呼吸ともすこし異なる、言うならば鳩尾（みぞおち）のあたりに空気を溜めて頭蓋骨後部に送り込んで眉間に解放する方法である。　これは美空ひばりのファルセットとも関連してくるはずだ。そして、そのときに問題になるのが「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」の発声である。ファルセット、あるいはベルカントでこのハ行の音を発声するとなると、なかなか明瞭な音にならい。試しにやってみれば判る。つまり、ハ行の発声は息を出すことで音になる。息を溜めて発声すると、明瞭な音にも言葉にもならいのだ。　美空ひばりさんが昔TVインタビューで言っていたことは、発声と呼吸法との関係で、上記のような問題だったのではないか。　これが、美空ひばりさんの「ハヒフヘホ」について、私が気付いたことだ。（蛇足だが、フランス語にはハヒフヘホの音がない。ha,hi,hu,he,ho は、アイウエオという音に近くなる。文化的な問題として、表現の「明瞭志向」がキーワードになるのではないか、と私は考えている。フランス語成立に関わる長い歴史の問題なので、私の考えを検証しがたいのであるが。　さらにもうひとつ蛇足。私は「天才」という言葉を使わない。その言葉は口当たりが良く、また大衆的な耳にも心地よい。しかし、論考においては、思考の停止、乃至、論評の放棄以外ではないからだ。）

Nov 13, 2021

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ナツグミは庭木に適さない

　午前10時半から午後1時まで庭木の剪定。剪定というより伐採と言った方がよい。　今日だけで片付かず・・・（私が疲れてしまったからだが）・・・後日にやり残してしまった。　植えた憶えはないのだが、ナツグミは庭に植えるべきでない。たしかに妖精たちの祭提灯のような真っ赤な実がたわわに生るのは楽しい。ほろ酸っぱい味も、なかなか捨て難い。だがしかし、である。非常に成長が早い木で、枝芽は1年のうちに2メートル余にも伸びる。それを長年のあいだ放置しておくと、一本の主幹は直径15センチメートルにもなり、枝は直径5センチメートルになって樹高4メートル、鬱蒼と繁りに繁る。しかも憎々しいほどゴツイ棘がある。妖精たちの祭提灯などというロマンチックな枝ではない。まあ、庭木には適さない。　昼食後、作品制作を開始。　午後5時、市から調査依頼。スケジュールの打ち合わせ。 Pruning of my garden trees from 10:30 am to 1:00 pm. It's better to say logging than pruning. I couldn't get rid of it just today ... (because I was tired) ... I lefr it behind at a later date. I don't remember planting it, but Natsugumi (Elaeagnus multiflora Thunb.) shouldn't be planted in a home garden. Certainly, it is fun to see the bright red fruits like thr fairy lanterns. The slightly sour taste is also hard to throw away. But, however. It is a veryfast growing tree, with branch buds growing over 2 meters in a year. If left unattended for many years,one main trunk will grow to a diameter of 15 centi-meters, and the branches will grow to a diameter of5 centimeters, a tree height of 4meters and growdensely. Moreover, there are hatefully rugged thrns. It is nota romantic branch such as a festival lantern forfairies. Well, I think that Natsugumi is not suitable forhome garden trees. After lunch, started producing the work. At 5 pm, the city requested a some survey. Sched-ule adjustment.Tadami Yamada

Nov 12, 2021

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作品3点

Tadami Yamada "Berween the Sun and the Moon" 2021Oil, gold leaf, silver leaf on canva mounted on panel.山田維史《日と月との間に》2021年Tadami Yamada "Flowering" 2021Oil, gold leaf and on canva mounted on panel.山田維史《花盛り》2021年Tadami Yamada "Spiral" 2021Oil, gold on canva mounted on panel.山田維史《らせん》2021年

Nov 11, 2021

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BGMはワンオク（ONE OK ROCK）

　私にとって珍しいことだが寝坊してしまった。何か約束の予定があったのではない。が、「あッ！」と目覚めて時計を見ると、ちょうど8時だった。寝坊なんて、何年ぶり、いや、何十年ぶりだ。私は目覚まし時計を使ったことがない。持っていないのだ。たとえ早朝の大事な予定があっても、ほとんどぴたりと目が覚める。　そんなことがあったから、気をたてなおしての作品制作では、BGMはワンオク（ONE OK ROCK）のTAKAHIRO氏の元気な歌のメドレー。若い歌手に活を入れられる感じで・・・　制作を終いにし、一転して頭にうかんだ一句。2021年の341句目。　明日は松尾芭蕉の命日（但し旧暦で）である。弟は俳句同人と共に、某レストランの恒例のシェフ主催「シェフ・ド・パーティ」だそうだ。　芭蕉忌の明日をまたずに時雨かな　青穹（山田維史）【Haiku】 Tomorrow is the anniversary of Matsuo Basho's death(but in the luna calendar).　Matsuo Basho (1644-1694). Basho-ki no asu wo matazu ni shigure kana Don't wait for tomorrow, which is the anniversary of Basho's death, today's rainTadami Yamada

Nov 10, 2021

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NY国際アートフェア終了

　午前中に私の作品のエイジェントである画廊の社長から電話あり。ニューヨークで開催された国際アート・フェアが終了した報せ。そしてビジネスに関する話など30分ばかり。　私の作品に精神性を感じて、そのことをめぐって観客からの問い合わせが寄せられているとのこと。しかも顕著に白人からのコメントが多く、否定的なコメントが一件もないのだという。　作者として私は、それをどう解釈すべきか？　それらのコメントは、私の今後の進み行きを暗に示唆しているようでもあり、しかし、私自身は変わりようがない。つまり、変わりようが無いと言うのは、精神性の問題として私は自己確信的に生きているからだ。作品については、「枯淡」の境地に「堕しない」ことと、自らを強く戒めなければなるまい。「枯淡」など，私にまったくそぐわない。　私は「大人に」なって愈々、この人間世界で、この社会で、意志的に闘わなければならない腐敗した臭いを嗅ぐようになった。それは日本的伝統とも言うべき「大人になる」と言う意味とは、真逆の決意である。　　商売のことは社長におまかせしてある（と私は思っている）。商売の上で、社長が私をどのように転ばすか、あるいは墓穴に蹴落とすか、私は考えないことにする。その点だけは恬淡としていようと思う。社長には社長自身のビジネスの方針がおありだろう。　さて、話しを逸らそう。　あたらしいカメラを買った。いままでのはスケッチ用に使っていた小型デジタル・カメラ。ポケットに入れられる手軽さを重宝していた。私は日常的な営みをスナップ・ショットする興味はまったくと言ってよいほど無い。トコトン仕事のためだけに使う。　その仕事の上で、もうすこし精度の良いカメラが必要になった。それほど高級なものでなくて良い。カメラについて詳しくないが、Canon EOS Kiss X10 Digital を買った。どうなのだろう？ In the morning, I got a call from the president of thegallery, the agent of my work. News that the Inter-national Art Fair in New York has ended. And about 30minutes to talk about business. It seems that the audience felt spirituality in mywork, and they inquired about it. Moreover, there areremarkably many comments from white people, andthere are no negative comments. As an artist, howshould I interpret it? Those comments seem to implymy future progress, but I myself can't hange. In otherwords, I can't hange because I live in self-confidenceas a matter of spirituality. As for the work, I have tostrongly warn myself that I will not fall into the stateof "withering, or simple but refined". "Withered" doesnot suite me at all. As an "adult", I began to smell the rotten smell ofhaving to fight voluntarily in this human world andin this society. It is a determination that is exact opposite of the meaning of "becoming an adult,"whih should be called a Japanese tradition. The business is left to the president (I think). Inbusiness, I don't think about how the president willroll me down or kick me into the grave. Only thatpoint will be disrespectful. The president may havehis own business policy. Well, ler's divert the story. I bought a new camera. Until now, I used to use asmall digital camera for sketching. I found it usefulto be able to put in my poket. I have almost no interest in snapshotting everyday activities. Thor-oughly I used only for work. For that work, I needed a camera with a littlehigher accuracy. It doesn't have to be that expen-sive. I'm not familiar with cameras, but I bought aCanon EOS Kiss X10 Digital. How is it?Tadami Yamada

Nov 9, 2021

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20年前のエネルギーはどこへ消え失せた？

　昨日は家回りの除草、3時間半の大仕事。そのためだろう、いささか疲れて、いつもより早めにベッドに入った。当たり前なことだが、つくづく歳をとったと実感した。20年前のあの疲れしらずのエネルギーはどこへ消え失せたのだろうと思った。　・・・20年前、家の内装を工務店に施工を依頼した。完成までの短期間、私たち家族は一旦別の家に住んだ。しかし、完成して家に入ってみると、「何じゃこれは！」という無様な出来。とても専門職人がやったと思えぬいい加減さだった。私は、専門家面して仕事ができない奴が心底嫌いだ。私は怒り心頭に来て、工務店に、金は一切支払わない旨を告知し、承知させた。そして、そこからおよそ半年にわたる私のDIY, いや、Do it by myself が始まったのだ。　住宅建築構造に関する本を読んで頭にたたきこみ、内装の技術や浴室等のタイル貼り施工技術書とも首っ引きで。建材店に通って材料を吟味し、大量に買い込んだ。ついでにとばかり、居間の床板をすべて新調すべく、根太に樹脂を染込ませて腐朽を予防し，同様に新らしい床板も樹脂加工をした。　ちょいと自慢をするが、後日、畳屋が入り、内装を私がやったと言うと、全部見せてくれと言った。浴室のタイル貼りなどを見てから、「驚きました。ご主人は、こういう仕事をされていたのですか？」と訊くので、まったくの素人でしかも初めてやったのだと応えた。「かなわないなー、我々のしごとが上がったりです。うちの会社に入ってもらいたいですよ」と。まあ、お世辞だとは承知していたが、職人にそう言われるのは満更でもなかった。　話しが横道に逸れ過ぎた。まあ、そんなエネルギーがあったのだと思いながらベッドに横たわったのである。　しかし就寝前のルーティンである読書はしておこうと、読みかけの本を開いた。十分もしないうちに半睡状態。文字を追っていても、ぽつりぽつりと途切れて、著者の論が頭に入ってこない。こりゃだめだと、灯りを消した。　ところが夜中に眼は覚めた。灯りを点けて時計を見ると、午前2時だった。一眠りしたせいで頭がクリアだ。眠れそうもない。再び先ほどの本を読み始めた。こんどはどんどん頭に入って来た。アメリカ合衆国における18世紀から19世紀および20世紀初期にかけての、ヨーロッパ文学との対比をまじえての、アメリカ文学精神史である。なかなか難物の本だったが、結局、午前4時半過ぎまでかかって読了した。1年後くらいに再読しようと思うが、とりあえず、今夜からは新しい英語の原書を読み始めよう。これも難物。しかし、今朝、6時に目覚、枕元のその本の序章を少しばかり読み、難物難物と思いながら3ページばかり進んだところで、急に叙述がすらすらと頭に入り始めた。「しめた！」と思い、本を閉じて起床した。 Yesterday weeding around the house, a big job ofthree and half hours. Probably becaus of that, I was alittle tired and went to bed earlier than usual. Obviously, I realized I was getting older. I won-dered where that my own tireless energy 20 years ago had disappeared. Twenty years ago, I asked a contractor to builed theinterior of my house. For a short period of time to com-pletion, our family once lived in another house. However, when it was completed and entered thehouse, it was awkward, saying "What's this!". It was sloppy thing that I couldn't believe was done by a pro-fessional craftsman. I really hate those who can't workas professionals. Igot angry and told the contractorthat I wouldn't pay any money and made him aware.And the my DIY, no, Do it myself, which lasted abouthalf year, started. Read a book about the structure of a house and hitit in my head, and also read the interior technologyand the tiling construction technology book for bath-room, etc. Iwent to a building materials store to ex-amine the materials and bought them in large quan-tities, and also bought various kind of the tool. By the way, in order to renew all the floorboardsin the living room, the joists were impregnated withresin to prevent decay, and the new floorboards werealso resin-processed. I'm proud of it a little, but at a later date, a tatamimat craftsman came in and when I said that I did theinterior, he asked me to show them all. After seeingthe tiling in the bathroom, he asked, "I was surprised.Were you a raftsman of this kind once ago?", So Ianswered that I was a complete amateur and did it for the first time. "I can't do it, our business is ruined.I want you to join our ompany." Well, I knew it wasflattering, but it was not altogether bad for me for the raftsman to say so. The story went toofar in the side street. Well, I laydown on the bed thinking that there was such energy. However, I opened the book I was reading to keepreading, which is my routine before going to bed.Half asleep before enough. Even if I follow the letters, the author's theory does not come to mymind because it is interrupted. If this didn't work, Iturned off the light. However, I woke up in the middle of night. WhenI turned on the light and looked at the clock, it was2:00 am. My head is clear because I slept. I can'tsleep. I started reading the book again. It cames into my head more and more. The book is the spiritual history of American literature in the UnitedStates from the 18th century to the 19th and early20th centuries, in contrast to European literature.It was difficult book, but in the end, it took me untilafter 4:30 am to read it. I'll read it again in about a year, but for now, let'sstart reading the new English original from tonight.This is also a difficult thing. However, this morning,I woke up at 6 o'clock, read the introductory partof the book at the bedside a little, and when I pro-ceeded about 3 pages thinking that it was a diffi-cult thing, suddenly the description began to come to my mind. I closed the book and got up, thinking"I've done it!"Tadani Yamada

Nov 8, 2021

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草取り3時間半

　私の時間に余裕ができたので、ほぼ2,3年ものあいだ不精をきめこんで放置していた家回りの草取りをした。　草取りなどと言う可愛らしものではない。草に家が侵食されそうと言うのは大げさすぎるが、蔦が壁を侵しはじめていた。「草の戸」あるいは「草の宿」とは、俳文などで小さな自宅を謙遜した表現だが、我家は謙遜も何もない、見たまま。青々とした草に埋もれていた。秋深く、暦の上では立冬となって、さしもの草も枯れた。ここが潮時とばかり大仕事にのりだした。3時間半を要した。　我家は山の上にある。鴉やそのほかの小鳥たちがやってくる。たぶん彼らの糞のなかに種が入っているのだろう、植えたはずのない木々がやたらと生えている。隣家の夫人が、「お宅は実の生る木が多いですね」と言う。まさにそのとおりなのだが、家主である我等には植えたおぼえがないのである。　しかし、つくづく山の家だと思った。草取りの最中に「やまのいも」を掘りだしたのだ。いわゆる「じねんじょう」とも言うアレである。植物学では、〈やまのいも科　やまのいも（じねんじょう）Dioscorea Japonica Thunb.〉。下にその画像を掲載しておこう。　なんでもおもしろがる私は、そんな芋をみつけておもしろがっていた。 I had some spare time, so I weeded the house, whichhad been left unattended for almost a couple of years. It is not a cute thing such as weeding. it's too exag-garated to say that the grass is about to erode thehouse, but the ivy is beginning to invade the wall. "Kusa no To (The door of grass)" or "Kusa no Yado(The house of grass)" is a humble expression of a small home in Haiku, but I have no humility, just asyou see it. It was buried in the lush grass. Deep inautumn, it was winter on the calendar, and such grass died. This is where I started to do big work just at anchance. It took three and a half hours. My house is on the mountain. Crows and other small birds are coming. Perhaps there are seeds in their dung, and there are a lot of trees that shouldn't have been planted. The wife of the neighbor says, "Your house has many fruit-bearing trees." That's right, but my family, of course me too, hadn't planted them. However, I strongly felt this was a mountain house.During the weeding, I dug up "Yama no imo". It is socalled "Jinnjo". In botany, 〈Yamanoimo family, Yama-noimo (Jinnjo) Discorea Japonica Thunb. 〉. I'll post thephoto below. I was amused by finding such taro.Tadami Yamada

Nov 7, 2021

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某社々員が来年のカレンダーをもってきた

　　　立冬やそうそうに暦を贈らるる　　青穹（山田維史）　　　おでん鍋湯気たちのぼり冬に入る　　　　蜘蛛の巣に十一月の薄陽かな　　　　達磨忌や若仲画集ひらき見ん　　　達磨忌や国境の壁つづきけり

Nov 4, 2021

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文化の日川柳

　　　文化の日ザンギリ頭叩こうか　　声臼（山田維史）　　　文化の日ハハ暢気だねからっけつ　　　文化とはそもさん応えて文化の日　　　旗あげて旗さげないで文化の日

Nov 3, 2021

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11月（神無月）を詠む

　　　陰膳を供える辻や神無月　　青穹（山田維史）　　　廃村の祠（ほこら）かたぶく神無月　　　神職が改憲あおる神の留守　　　茶の花の五つ六つ咲く草の宿　　　茶の花に寄り添うような破れ垣

Nov 2, 2021

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