近頃どうしたことか夜中の3時頃に目が覚めてしまう。目が覚めると書いたが、実のところ目はつむっている。頭だけが冴えるのだ。そのまま転々と寝返りうっていると、いつのまにか再び寝入ることもあれば、まったく眠れないこともある。しかたがないので灯を点け、読みかけの本を開く。就寝前にも1時間半から2時間ほど読書するのを日課としているが、眠くなるとそのまま本を枕元に置いて寝てしまう。そんな読みかけの本を開くのである。
そうして読んでいると、ある一行の記述に私は驚いた。それは人物伝のなかの派生的な記述(記録)である。派生的な人物とは云え歴史上の重要人物なので研究論文の数はおそらく膨大であろう。私が驚いた記録というのは、記録され私家版として極少部数印刷されたが、ある事情からすべて破棄された。しかし、ただ一冊、記録者の知人の手にわたったものが奇跡的に秘匿されたという。それが今私が読んでいる本の著者に借覧を許された。つまり私が驚いた記述は、ここに初めて世に現れたのであった。
私が驚いたのはその記録と、私が数十年前に読んだアマチュア研究者の論文の記述、さらにまったく別な小説のテーマの陰にある事件(歴史的事実)の記述・・・それらが私の頭のなかで一繋がりになったからだ。アマチュア研究者の論文について私は、その依拠した資料のなかの或る字句の解釈に思い込みがあるのではないかと疑念を抱いていた。しかし私は数十年間その研究論文の趣旨を忘れてはいなかった。
発表年代もたいへん異なるこれら三つの文書を、一繋がりのこととして言及したものは嘗て無い。それはそうだ、個人に秘匿された(科学的専門的な)記録が世に出たのは、今私が読んでいる本が初めてなのだから。
・・・しかしながら、私の頭の中で繋がった事柄を、私は書くわけには行かないだろう。あまりにも微妙な問題だからだ。私の頭の中で繋がったとはいえ、それが事実であることを示すためにはさらに多くの資料がいる。その資料は事態をとりまく外部資料には無いであろう。内部資料。それよりももっと密なるものでなければならない。・・・ウ〜ン、このテーマは墓場まで持って行くしかないか・・・