ミケランジェロ(1475-1564)は、285篇のソネットを書いた。その中から1528年頃につくられたと思われる第46番の詩を翻訳してみた。原詩はもちろんイタリア語であるが、私はイタリア語は解らないので、イエール大学のJames M. Saslow氏による英語訳を用いた。ただしSaslow氏は4連のソネット形式ではなく一連の詩として記述している。Saslow氏はおそらくイタリア語のソネットを英語の韻を踏んだ厳格なソネット形式に翻訳不可能と考えたのかもしれない。私はむろん日本語で韻を踏めなかったが、日本式ソネットの4連に分けたことをお断りする。
Poem 46, ca. 1528
If my crude hammer shapes the hard stones
into one human appearance or another,
deriveing its motion from the master who guides it,
watches and holds it, it moves at another's pace.
But that divine one, which lodges and dwells in heaven,
beautifles self and others by its own action;
and if no hammer can be made without a hammer,
by that living one every other one is made.
And since a blow becomes more powerful
the higher it's raised up over the forge,
that one's flown up to heaven above my own.
So now my own will fail to be completed
unless the divine smithy, to help make it,
gives it that aid which was unique on earth.
(translated by James M. Saslow)
私のそまつな鎚が硬い石を
人間の姿やその他に形作るとき
親方の指導と監視とその手に握られて動くなら
その動きは別ものの動き
しかし天に居ませる聖なるお方は
御自らのおこないで御自身と他者を美しくする
そして鎚無くしては鎚をつくれないとしても
その生きているお方は別のものををつくられる
そして一撃はいっそう力強く
鍛冶場の上にもちあげられより高く
私自身のものより上に天を目指して舞い上がる
それで今や私の意思は完成しないのだ
制作をたすけてくれる神の鍛冶場なしでは
この地上で比類ないご助力を賜ることなしでは
(日本語訳;山田維史)