明け方近く、私はまだ眠りの中にいたが、耳には雨音が聞こえていた。夢とも現ともつかない頭に不意に歌がうかび、頭の中で歌っていた。
「フォージングダウン シソーシャライ
フォージングダウン シソーシギン
フォージングダウン シソーシャライ
フォージングダウン シソーシギン
ヘイシキズンバ ズンバ ズンバ
ヘイシキズンバ ズンバジ
ヘイシキズンバ ズンバ ズンバ
ヘイシキズンバ ズンバジ
ウイヤ ハッ! ウイヤ ハッ!
ウイヤ ウイヤ ウイヤ ハーッ!」
私は目を覚ました。そして我ながら驚いた。夢うつつに頭の中で歌っていたこの歌は、私が八総鉱山小学校6年生の夏、猪苗代湖畔の長浜旅館を宿舎にした湖畔学校で、夕食後の余興で歌ったことを思い出したのだ。男女数人ずつのグループに分かれ、私のグループは高橋先生にこの歌をおしえてもらった。どこかの小民族の雨乞いの歌。高橋先生はボーイスカウトだったとかで、ボーイスカウト愛唱歌らしかった。私たち4,5人はたった一度きりの練習で覚えてしまった。みんなが私を酋長に指名した。簡単に段取りを決め、寝床のシーツを体に巻きつけ、・・・ああ、セリフも思い出した。
酋長「ビントゥタンレー サッショウニカ!」
一同「ロンテニカー ロンテニカ」
酋長「ビントゥタンレー サッショウレイ!」
一同「ロンテニカー ロンテニカ」
そして上記の歌を歌い踊った。
思い出した歌詞が正しいかどうか心もとない。なにしろ67年前の予行演習なしのただ一度きりの余興だった。夢うつつに聞こえる雨音が、この67年前の「雨乞いの歌」を思い出させたのであろうか。雨乞いどころではない、もういいかげん梅雨が明けてもよさそうなものだが。