昨夜、1日の仕事を終えて、シネフィルWOWOWプラスが配信している「ガレージセール・ミステリー : アンティーク探偵ジェニファー〈仮面は語る〉」を観ていた。
始まって10分、貸し倉庫の代金未払い等で放置されている物品の売りたてに、アンティーク探偵ジェニファーと同僚が買い付けに来て、二つの石膏のデスマスクを見つける。その一つ、若い女性の顔。・・・ジェニファーはインターネットで検索する。そのデスマスクは、死亡時に笑顔で発見された身元不明の女性。場所はパリのセーヌ河岸。時代は1880年代。溺死か自殺か不明で、家族の引き合いもなく未解決のまま現在に至っている。・・・ジェニファーが倉庫で目にしたのはそのような因縁のデスマスクであった。
さて、私はここでこのテレヴィ・ドラマの解説をしようとしているのではない。
じつは私は昔、この女性のデスマスクを実際に見ている。このデスマスクは有名で、その複製がパリで一般に売られているのである。いや、私が所持していたのではない。長らくパリで暮らしていた人が日本に帰り、私は招かれてその人の家を訪れた。そしてそのデスマスクを見たのである。そしてそのデスマスクにまつわる知人の話は、アンティーク探偵ジェニファーが調べた事実に一致していた。・・・パリで土産物として売っているのだと、知人は言った。「死人の石膏マスクを土産物にねー」と私は内心に思った。
知人の家で若い女のデスマスクを見て3年ばかり経った1983年、私は一編のエッセイ風な「小話」を〈ちょっとミステリー〉と題してミステリマガジン誌(早川書房)に書いた。このブログの左の” Tadami Yamada's short story" の中に英訳で載せた”Death Mask” がそれである。その短編を書いて40年以上にもなる昨夜、たまたま観たTVドラマで、件の若い女のデスマスクに再会するとは思ってもいなかった。
このデスマスクについてウィキペディアに記事がある。
L'Inconnue de la Seine