「カメぱっぱ」海底人との闘い・最終章(541)
「情報を教えるから俺にその見返りをよこせ。それはな、アラスカで生産してしている宇宙ロケット2機の操縦スペースを大きくしてくれ。すなわち海底人サイズから俺の寸法に変えてほしい。これが俺の頼みだ」 背もたれの高いアンティークな椅子に座ったトマソンは、ブッチャ―を見上げます。不思議なことですが緊張感は消えて笑顔を浮かべていました。「工場内の管理、監視はボントスが送り込んだアンドロイドがやっているので宇宙船内のサイズを変更すれば、すぐに発覚しますよ」「バレても構わない。そうなったらボントスに俺の方から直接言う。俺が奴らと同じで宇宙を目指しているのは知っているからな。それでは、とっておきの情報を教えてやる。近日中にこのニューヨークを中心に全米でネット障害を含む電波障害が起こるだろう。その目的は人間社会に動揺を与え、不安な状態にすればお前のもとで一致団結してボントスへ対応できなくなる。トマソンの後ろには奇妙な動物たちやクリサーラのような超能力者までいるからな。それにボントスが人間を分断するのは、お前のように聡明で決断力がある指導者は邪魔なのだ」「お褒めにあずかり光栄です。それではこのニューヨークで起こすことはなんでしょうか」「俺がこの都市を占拠したとき、しばらく経ってから通信施設があるケーブルや設備が破壊され遮断された。同じ時期に通信衛星も兄貴たちに乗っ取られ、俺の情報はストップ、代わりにあんたら人間側の通信が復活したのだ。ボントスは知的生命体の命綱が情報のやり取りだというのを知っている。だから通信網を混乱させれば、社会不安を増やし海底王国の支配がやり易くなるからな。俺に抵抗したときは、レジスタンスのグループとクリサーラと日本から来た小動物たちが地元のネズミ族のボスと組んで通信ケーブルや設備を噛み切ってズタズタにしたのだ。今回、ボントスたちがどのような手を使うのかは、不明だが、すでに工作は手配済みのはずだ」「人間統治を従来通りの政治家や権力者を使って、自分は表面に出ないボントスがこの社会を混乱させるメリットはどこにあるのですか」「さっき言ったが、お前をトップに団結しクリサーラやエリーゼにマザーまでもがボントスと直接闘う状況は出来るだけ避けたいのだ。奴らの能力は桁違いに高いから、結束して反抗すれば、ボントスといえども安心していられない。そのために人間社会を混乱させ、対応に連中を引っ張りだせば、当分のあいだボントスの作戦は安泰するだろうからな。俺の時と違って、社会に動揺を与えるのが目的で電波を支配下に収める訳ではない」「何事も力ずくで抑え込むやり方があなたでしたが、ボントスはその上をいく方法で人類を統治しようとしていますね」「それは皮肉か、トマソン、これからはお互いの利益になるなら情報交換をしようぜ」「私は人間側の利益になるなら、あなたのような者とも取引しますよ」 15秒間、トマソンとブッチャーは互いに顔を見つめ合います。 つづく