●雑誌『星座・歌とことば』9月号
『書-こころのかたち』より『旅 愁』
金澤泰子(文)、金澤翔子(書)
「旅 愁」◇金澤泰子
中国の山奥、客家土楼(はっかどろう)に行った。
故宮にも万里の長城にも興味を示さなかった翔子が、
巨大な土楼の中の一匹の兎に釘付けになった。
「ミミ(家で飼っていた兎)がいた」
6年間可愛がっていたミミが家から姿を消して4年余、
杳として行方が分からずに居た。
ミミはお月様に行ってお餅をついている、
と翔子の方法で納得していて、よく月に向かって
「ミミ元気?」と話しかけていた。
それなのに何が符合したのか今回土楼の一角の兎が
ミミだと言い張る。
「ミミ寒くなかった?」等と涙ぐんで話しかけて動かない。
東京の家から月を経由してこの土楼にミミは暮らしている。
翔子のシュールな想い、それはそれでいいのだが、
二十歳を過ぎた我が娘の知的検証に欠ける、
このような考えに私はいつも少し哀しい。
旅先の里でのほろ苦き思い出の一つである。
(以上転載許可済みです)
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※上記エッセイが完成するまでの過程
金澤泰子様のお話では、最初に出版社側から翔子さんが
書かれる字を提示され、それを翔子さんが「書」にしたためた後、
泰子様がその「書」に関連するエッセイを300字以内で
執筆されることになっているそうです。
この度の原稿(文)はFAXでしたので、雑誌のコピーを
掲載する事が出来ませんでした。何分ご了承くださいませ。
★金澤泰子(文)・金澤翔子(書)『愛にはじまる』
(2006年7月出版)
★今までご紹介させていただいた金澤泰子様のエッセイは
下記リンク先の中に入っています。
http://plaza.rakuten.co.jp/pmdecorp/diary/?ctgy=47