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オカンはぬか漬けの壷と古びた小さな茶箪笥、身の回りのものだけ持って東京にやってきた。
ボクはそれまで住んでいたアパートを出て、オカンと暮らす新居を決めた。 ボウリング場の上、電車も目の前を走っていてかなりうるさく、狭苦しい場所に建つビルの一角で、二人の生活が始まった。 オカンは相変わらず世話を焼く。ボクのジーンズの穴を縫ってしまったり、押しかけてきた友人にも毎回どっさり食事を作ったり。 イラストを描こうと思っても集中できない、オカンは勝手にボクのベッドを買ったり、出かけようと思えば「何処へ行くん?」「何時に帰るん?」と聞いてくる。 ボクはそんなオカンが疎ましく、一時の感傷でオカンを呼び寄せてしまったことを後悔し、不満が爆発する。 「ここはオレの家やき!!もう帰ればよかとに」 オカンには帰るところなど何処にもないのに。 「親はいつまでも死なないような気がする」 私も同じように思っていました。 自分が年を取るように、親も年老いていくということを見て見ぬふりをしてしまっていました。 父が末期ガンの宣告をされたときに、初めて自分の親が死ぬということが現実的になりました。 父が亡くなったとき泣きました。自分でも信じられないくらい泣きました。 きっとそれは、父に対して出来るだけのことをした、という気持ちが持てなかったからなのかもしれません。 一人っ子でわがままばかりだった私。結局何の親孝行も出来ないまま、後悔ばかりが残りました。 「オカンの全財産」の茶箪笥の中には、ボクの大学合格通知、卒業証書と一緒に、雑誌に載ったボクのイラストのスクラップが入っていました。 やっぱりオカンはボクの一番のファンなのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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