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テーマ:洋楽(3395)
カテゴリ:80年代洋楽
享年32歳。死因は薬物(ドラッグではない)の多量摂取だった。 曲を書くわけでも歌えるわけでもなかったが、ドラマーとしても人間としても得がたい個性を持っていたキースは、The Whoにとってなくてはならない存在だった。 それを一番分かっていたのは、おそらくピート・タウンゼンド自身だろう。 だが、The Whoは解散しなかった。 キース・ムーンの後釜に元Small Faces/Facesのケニー・ジョーンズを迎えた彼らは、'79年に活動を再開する。 同時期(正確には少し後)、ジョン・ボーナムを失ったことにより解散を決めたLed Zeppelinとは対照的な選択だった。 「You Better You Bet」は、ケニー・ジョーンズ加入後初のシングルである。 '81年発表のアルバム『Face Dances』(上ジャケット)に収録。 プロデュースは、イーグルスなどで知られるビル・シムジクだ。 作詞、作曲はもちろんピート・タウンゼンド。 この前年に発表された自身のソロ・シングル「Let My Love Open The Door」(全米9位)の流れを汲む、テクノ風ポップ・ソングとなっている。 ケニー・ジョーンズ期のThe Whoを「らしくない」「The Whoとはいえない」という声は今でも多い。 自分も基本的にそう思う。 もちろん、誰もケニー・ジョーンズに恨みがあるわけではない。 だが、彼はそもそもキース・ムーンとはタイプの違うドラマーだった。 破天荒で独自のリズムを持ったムーンに対して、ジョーンズはオーソドックスなビートをあるがままに叩き出す人だった。 曲を聴くと、ドラムの感触がそれまでと違うという事は、素人耳にも一聴して分かる。ビート感はもちろん、スネアの音ひとつとってもだ。 なによりもクレイジーな要素が希薄なのが痛い。 だが、"それまでのThe Who"にこだわらなければ「You Better You Bet」は良質なポップ・ソングとして聴けると思う。 楽曲にピートらしさは充分出てるし、メロディはキャッチーで覚えやすい。 ロジャー・ダルトリーの歌声には張りがある。 ピートとジョン・エントウィッスルのコーラス・ワークはそれまで以上に洗練されており、耳に心地よく響いてくる。 そしてギター・サウンドが後退した分、ジョン・バンドリックの弾くキーボードが前面に出ており、すっきりとしたポップ・サウンドに仕上がっている。 この辺は"ハードなThe Who"を好む人には確かに喰い足りないしだろうし、バンド・マジックもここにはない。 だが、ポップ・ソングとしては充分水準を越しているし、何より聴いてて楽しいことは事実だ。 この曲はアメリカで18位、イギリスで9位と、チャート的にもまずまずの成功を収めた。 ピートの書いた曲は、やはりロジャーのヴォーカルで歌われてこそ輝きを増す。 キース・ムーンのいないThe Whoの曲ながら、「You Better You Bet」はバンドの代表曲として残り、ライヴ・レパートリーにも加えられることとなった。 バンドの解散からすでに四半世紀が経つ。 その間に何度も再結成し、そして今年(2008年)の11月にようやく初の単独来日公演が決まったThe Who。 この曲の楽しいテクノ・サウンドは、武道館や大阪城ホールでも聴けるのだろうか。 「You Better You Bet」を聴くにはここをクリック! ※ポム・スフレのメインHPでは、The Whoの名盤『Who's Next』について取り上げています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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