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ポムブログ~ポム・スフレの名曲大百科

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2008.08.02
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テーマ:洋楽(3394)
カテゴリ:60年代洋楽
オールド・ロック・ファンの間における有名度という点で、ブラインド・フェイスというグループはかなり上位にくるんじゃないかと思われる。
が、それは(おそらく)音楽的内容によるものではない。
ひとつは、PTAから苦情がきそうなアルバム・ジャケット(上写真)。
もうひとつは、「エリック・クラプトンとスティーヴ・ウィンウッドが一緒のグループにいた」という話題性だろう。

Creamを解散させたエリック・クラプトン(G)とジンジャー・ベイカー(Dr)、Familyのリック・グレッチ(B)、そして元スペンサー・ディヴィス・グループ~Trafficのメンバーであるスティーヴ・ウィンウッド(Kb,G)によってブラインド・フェイスは結成された。
クラプトンとスティーヴの顔合わせはこれが初めてでなく、'66年のセッション"パワーハウス"ですでに共演が実現している。
当時"天才少年"の名をほしいままにしていたスティーヴを、クラプトンは高く評価していたという。
クリームが解散コンサートを行って('68年11月26日)ほどなくしてから、プロジェクトは動きはじめた。

人々はこの四人組のことを"スーパーグループ"と呼んだ。
デビュー・ギグとなった'69年6月、ロンドン・ハイドパークでのコンサートには15万人が集まったという。
グループ唯一のアルバムである『Blind Faith』は全米チャートで1位を記録。
少女ヌードジャケがそのまま採用された日本盤(※)には、「宇津井健かよ!」というツッコミが飛んできそうな邦題(『スーパージャイアンツ』)もつけられていた。

しかし、メンバーの名前と作品の内容が必ずしも一致するとは限らない。
クリームのメンバーがふたりいたにも関わらず、「メンバーにスティーヴがいるのなら、リーダーは彼で僕は従うだけ」というクラプトンの言葉どおり、アルバムはかなりスティーヴ色が強い内容となっていた。
リード・ヴォーカルもすべてスティーヴ。楽器同士のインタープレイは前面に出さず、シブめの"歌もの路線"を基調としていた。
当時は「クリームの再来」を期待する風潮が強かっただけに、このアルバムを聴いて肩透かしを喰らったという声も多かったという。

が、後追い世代にしてクリーム信者でもなく、「ガイドブックに載っていた」という理由でアルバムを聴いた自分には「まあフツーにいいアルバムなんじゃない?犬というふうに思えた。
ものすごく、ではなく"まあフツーに"という所がポイントなのだが(笑
そしてその印象は今も変わらないまま、年に一、二回くらいアルバムを引っ張り出しては聴いている。

「Had To Cry Today」はアルバムの冒頭を飾る曲で、スティーヴの作品。
作風的にはトラフィックの延長線上にあると言える、ミディアム・テンポのナンバーだ。
曲は、シンプルでどこか奇妙なリフを軸としており、抑え気味な演奏にのせてスティーヴがソウルフルな歌唱を聴かせるというスタイルとなっている。
キャッチーとは言いがたいが、メロディはどことなく耳に残る。
スティーヴとクラプトン、ふたりによるギターの掛け合いも聴きどころか。クラプトンのギターは腹八分目といった感じ。スティーヴのギターもなかなかのものだ。

反面、雰囲気は淡々としており、冗長とおぼしき部分もある。スーパーグループのアルバムの一曲目としては「?」な所もあるかもしれない。
が、この"つかみどころのない感触"が何ともいいのだ。ジンジャー・ベイカーのドラムもまったりしててエエでんなぁ猫
終盤で一瞬、サイケデリックなアレンジが顔を出す所が60年代の残り香を感じさせますね。
地味ながら、深い味わいを持った一曲だと思うのですがどうでしょう?
この時21歳だったスティーヴのヴォーカルは、今聴いても魅力的だ。


混沌とする時代の中、皆の期待を一身に背負って世に出たブラインド・フェイス。
が、たった一枚のアルバムを残した直後に、バンドははっきりした解散表明もないまま空中分解してしまう。
公的な活動期間は半年足らず。クラプトンはそのままアメリカへ渡り、スティーヴ・ウィンウッドは、ジンジャー・ベイカーのバンド(エアフォース)に参加した後、またトラフィックの活動に戻っていった。

グループ崩壊の直接の原因は、クラプトンとジンジャー・ベイカーの仲たがいだったと言われている。
あるいは「一緒にやってみたはいいけど、な~んか違うね」というのが、メンバー達の心境だったのかもしれない。
音楽的焦点がややボヤけており、バンドとしての求心力もあまり感じられないこのアルバムは、スーパー・グループの作品というより、"軽くやってみたセッションの記録"という感じだ。
クオリティ的には"名盤"というより"佳作"といった方がしっくりくるだろう。
それでいいのだと思う。
スーパーグループなんてそんなものだ。
「結局なんだったの?」と言われたであろう歯切れの悪い終わり方も、混沌としていたこの時代らしくてイイんではないかと。

人々の期待には応えられなかったが、あとにはいくつかの忘れがたい曲が残った。
アルバム中唯一のクラプトン作品「Presence Of The Lord」は、のちの彼のライヴでも演奏されている。
「Can't Find My Way Home」は、スティーヴのライブでたびたび取り上げられた。
そして「Had To Cry Today」および上記の二曲は、'07年と'08年に実現したクラプトンとスティーヴの共演ステージで演奏されている。

このアルバムに大仰な誉め言葉は似合わない。
だが、「クラプトンとウィンウッドが一緒にやった作品」として、あるいはこの時代、このグループの微妙な空気をつめこんだ一枚として、聴いておいて損はないと思う。
ジャケットに映る少女の、うつろな表情もとても好きだ。


「Had To Cry Today」を聴くにはここをクリック!


※ アメリカではヌード・ジャケが問題となり、差し替えられている。





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Last updated  2008.08.02 17:07:05
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