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テーマ:洋楽(3395)
カテゴリ:60年代洋楽
プロデューサーのジョージ・マーティンといったら、ビートルズを手掛けたことで有名な人物だ。 その貢献度の高さは"五人目のビートルズ"と呼ぶにふさわしい、というのは誰もが認めるところだろう。 だが、根っからの名裏方である彼の仕事はこれだけではない。 有名どころでは、ジェフ・ベック、アメリカ、チープ・トリック、ケニー・ロジャース、ウルトラヴォックス(←有名か?)などがあげられる。 エルトン・ジョンがダイアナ妃にささげたシングルである「Candle In the Wind」'97年ヴァージョンもマーティンによるプロデュースだ。 その一方で、有名になる前のゲイリー・グリッター(ポール・レイヴン名義)、70年代ブリティッシュ・ポップ・グループとしてマニアに高い人気をほこるスタックリッジなど、シブいアーティストとの仕事もこなしていたりする。 エドワーズ・ハンドもそのひとつだ。 ロッド・エドワーズとロジャー・ハンドからなる男性ポップ・デュオである。 学生時代に出会ったという彼らは、'67年に一度ピカデリー・ラインという名前でデビューしたこともあったが、翌年にはエドワーズ・ハンドと名前を変えて再出発している。 そのデビュー・アルバムを手掛けたのがジョージ・マーティンだった。 エドワーズ・ハンドの1stアルバム『Edwards Hand』(上ジャケット)は、'69年にリリースされている。 本盤が録音されたのは'68年の秋。 ちょうど同じ時期にはビートルズが『The Beatles』(ホワイト・アルバム)を制作していたのだが、ジョン、ポール、ジョージが別々のスタジオでそれぞれに作業を行うという状況下、マーティンは「休暇をとる」と置き手紙ひとつだけを残して、スタジオをしばらく離れてしまう。 その合間を利用して手掛けたのがエドワーズ・ハンドだった。 原盤ジャケットにあるライナー(英語)を見ると、マーティンは当初、この二人を紹介された時、プロデュースの話をことわったのだという。 だが、彼らの曲を聴いて感銘を受けたマーティンは、急遽引き受けることにしたのだとか。 出来上がったアルバムは、そんなウソかホントか知れないエピソードを裏付けるような佳作となった(当時はアメリカのみでの発売だったらしい)。 当時のジャケット帯には、「あのジョージ・マーティンがプロデュース」という宣伝文句がしっかり入っていたという。 また、このアルバムのエンジニアリングを手掛けたのは、これまたビートルズの裏方で知られるジェフ・エメリックである。 本盤は、全11曲中10曲がロッド・エドワーズとロジャー・ハンドの共作である。 ポール・マッカートニー的ポップ・センスにブリティッシュ・トラッドの要素をまぶしたようなメロディ。 それがマーティンのプロデュース・ワークとうまく融合して、良質なポップ・アルバムに仕上がっている。 どれもいい曲だが、中でも個人的にイチオシしたいのが五曲目にあたる「House Of Cards」だ。 木管楽器の可愛らしい音色とキャッチーで美しいメロディが強い印象を残す。 コンパクトにまとめられた曲作り、気品のある演奏もチャーミングに響く。サビに入る瞬間の展開がなんとも気持ちいい。 地味すぎず派手すぎないアレンジのバランス感覚は、マーティンの手腕か。 ソフトで広がりのあるハーモニーも素晴らしいこの曲は、中期ビートルズをよりメロディアスにしたような逸品で、そのテのファンにはおすすめだ。 このアルバムがCD化されるだいぶ前に、大枚はたいてアナログ盤を手にしたワタシですが、この曲だけでも「買ってよかった」と思ったものです。。。(しみじみ また、このアルバム、最後の曲などはプログレッシヴなテイストも感じられて興味深い。 …などと思っていると、次作『Stranded』(これもマーティンのプロデュース)のレコーディングにはあのジョン・ウェットン(※)が参加していたと聞いて「おおっ」と驚く。 ビートルズとプログレの接点はこんなトコロにあったのか~(笑 ともあれエドワーズ・ハンドのこのアルバム、埋もれさせておくには惜しいブリティッシュ・ポップの名品です。 つーコトで「House Of Cards」を聴くにはここをクリック! もうずいぶん昔のことですが、今でもエドワーズ・ハンドとのレコーディングはとてもいい思い出です。このアルバムが再発されて新しいオーディエンスの耳に触れることをとてもうれしく思っています。--------ジョージ・マーティン ※ キング・クリムゾン、U.K、エイジアなどのメンバーとして知られるヴォーカリスト兼ベーシスト お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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