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テーマ:洋楽(3357)
カテゴリ:60年代洋楽
彼らは'69年に三枚のアルバムを発表しているが、そのどれもが名盤というのも凄い。 『Unhalfbricking』(上ジャケット)はそのうちのひとつだ。 サンディが加入してからの二枚目となるこのアルバムは、サイケ風味のフォーク・ロック・バンドとして出発したフェアポートがトラッドの世界に足を踏み入れようとする瞬間を記録した作品である。 総合的な完成度とテンションでは次作の『Liege & Lief』にゆずるものの、みずみずしさとスリルが程よく同居した本盤もすばらしい。 オリジナル盤の収録曲は全部で八つ。 メンバーのオリジナルが五つ、ボブ・ディランの作品が三つという構成となっている。 リチャード・トンプソンの作品「Genesis Hall」、ディランのカバー「Percy's Song」、トラッドをアレンジした大曲「A Sailor's Life」など、聴き所が随所にある本作だが、個人的に一番好きなのはサンディ・デニーのオリジナル曲である「Who Knows Where the Time Goes?」だ。 「時の流れを誰が知る」というタイトルのこの曲は、サンディがグループ加入前に作ったフォーク・ソングであり、彼女にとっての生涯の名曲である。 本盤での演奏は、ややロック的味付けをしたものとなっており、まさに"フェアポート流フォーク・ロック"と言える仕上がりになった。 落ち着きをたたえたイントロからして孤高の美しさを感じさせる。 トラッドを基調とする、気品と哀感を持ったメロディはいかにも英国的であり、サンディのソングライターとしての資質を証明するものだ。 彼女のヴォーカルもすでに完成されており、この時22歳とは思えないほどの貫禄ぶり。ジミー・ペイジが惚れたのも分かるなぁ(※)。 リチャード・トンプソンのギター・プレイは、抑えた中にもノコギリのような切れ味が感じられ、その非凡な個性を示している。 淡々としたドラムもいい感じだ。ここでの演奏を聴かせるマーティン・ランブルは、なんと本盤のレコーディング直後に交通事故死してしまう。 まさに「時の流れを誰が知る」だ。 サンディがソロになってからも歌い続けられたこの曲は、ジュディ・コリンズ、エヴァ・キャシディ、ニーナ・シモン、スザンナ・ホフス(ex:バングルズ)など多くの人にカバーされた。 フェアポートのヴァージョンは、'07年の英国で「オール・タイム・フェイバリット・フォーク」として選出されている。 静かなる情念と色褪せない美しさを持つこの曲は、英国フォークの奥深さを象徴する一曲と言えるだろう。 「Who Knows Where the Time Goes?」を聴くにはここをクリック! ※ サンディはLed Zeppelinの曲「The Battle of Evermore(限りなき戦い)」にヴォーカルとして参加。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.09.18 10:35:16
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